映画「パブリック 図書館の奇跡」(2018) 監督:エミリオ・エステベス

上2

図書館を舞台にしたコメディです。
「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」みたいな、図書館ドキュメンタリー映画じゃありません。

アメリカ中西部の北、オハイオ州シンシナティの、この公共図書館は、利用者に対し柔軟でオープンなポリシーがあります。
そうはいっても、利用者の中には、癖のあり過ぎる人達がいる、迷惑者もいる。だから、利用者間の問題には気を遣う。

利用者の中に、年中いつも利用している一定数のホームレス達がいて、図書館の人達とは親しい間柄。ここはホームレス達を追い出さない図書館。
しかしながら、ホームレスのあの人が悪臭を放っているとクレームがあれば、そいつを館から追い出す。

中3そんな中で、主人公の図書館司書スチュアート・グッドソンは、まじめな働きぶりで、上司部下の司書からも、ホームレスからも信頼が厚い。

ところが、そのホームレスを追い出したことに対し、当局に意見が寄せられ、地方検事ジョシュ・デイビスが動き出し、図書館の主任司書アンダーソンを相手取り、大上段に「これは重大問題!」だと詰め寄ります。「司書スチュアート・グッドソンを首にしろ」と。
なぜこんなことが、解雇するほどの大ごとになるのか?
それは、地方検事が市長選に立候補しようとしていて、選挙活動の一環として、自分を市民にアピールできる材料を探していたところ。ホームレス追い出しのこの件は、誰にも分かりやすい案件であり、検事にとってとてもグッドだった。それに、検事はグッドソンの過去を調べ、その犯罪歴を知り、首にしやすいと考えていました。

さて、冬のシンシナティは連日、大寒波の真っ只中にありました。
市の施設、ホームレス緊急一時宿泊施設(シェルター)は、もう満杯で、街中には行き場がないホームレス達がいるのです。

事件のきっかけは、夜間、図書館利用者のホームレス1人が図書館玄関先で凍死し、これが翌朝、発見されたことでした。(ここから話の山場が始まります)
その夜、図書館利用常連組のホームレス達が、シェルターにあぶれた人たちを連れて閉館間際の図書館ホールに集まり、一晩泊めてくれと要求しました。
驚いたのは、その場にいたグッドソンと司書マイラと、セキュリティ責任者エルネストだけではありませんでした。
図書館幹部の主任司書アンダーソンは、警察に連絡し、多数の警官を引き連れて、危機交渉人のビル・ラムステッド刑事と地方検事がやってきました。

この状況に対してホームレス達は、入口を封鎖し図書室を占拠し始めます。この時突如、グッドソンはホームレス達の側に付き、市に対する抗議を表明し、彼らと一緒に図書室に立てこもりました! さあ、そこにいた誰もが一様に驚きます。
果たして、グッドソンはホームレスを扇動する過激派に豹変したのでしょうか?!

屋外は寒い。緊急一時宿泊シェルターは満員なので図書室に一晩居させてほしい、その交渉が騒動に、騒動が事件に発展し、いつの間にかグッドソンは犯人と見なされ、事はどんどんエスカレートしていきます。さらに、これを大事件として煽るのが、TV中継車で図書館前に乗り込んできたテレビ局でした。
中2

以上までの様子は、この予告編をご覧ください。
予告編をどうぞ
予告編 決め
https://longride.jp/public/

主な登場人物はこの通りです。

中1

さあ、あとは、観てのお楽しみ!

この映画を喜劇的にしている一番の要因は、監督自ら演ずる主人公スチュアート・グッドソンの表情です。
それは、一見 無表情な演技ですが、実は内気そうな目でソッとものを語る。それがいい味、ほのかに可笑しい。

またこの物語は、勧善懲悪。分かりやすい。
つまり、人生に失敗した経験を持つ無口で優しい男スチュアート・グッドソンV.S.権力を握る人、野心家だが器が小っちゃい地方検事ジョシュ・デイビスとの対決です。

中4ひとつ残念なのは‥、
警察当局の一方的な行動や、グッドソンの過去の事情は分かるが、グッドソンが図書館職員の職務責務を離れ、ホームレス側に付こうとする、その心の変化、この時ここにもう一工夫の描写表現が欲しかった。同様に、グッドソンの上司主任司書アンダーソンについてもです。

ちなみに映画は、TV中継車で来たレポーターの言動を通して、マスコミ報道の見識の狭さ 浅さ 視聴率一辺倒を批判しています。注目を。
また、グッドソンの隣人でアル中気味のアンジェラとグッドソンのラブロマンスは、図書館占拠事件や安易なTVレポーターに影響を与えます。
中5


原題:The Public
監督:エミリオ・エステベス|アメリカ|2018年|119分|
脚本:エミリオ・エステベス|撮影:フアン・ミゲル・アスピロス|
出演:図書館司書スチュアート・グッドソン(エミリオ・エステベス)|ビル・ラムステッド刑事(アレック・ボールドウィン)|地方検事ジョシュ・デイビス(クリスチャン・スレーター)|図書館の主任司書アンダーソン(ジェフリー・ライト)|図書館司書マイラ(イエナ・マローン)|スチュアートの隣人アンジェラ(テイラー・シリング)|ホームレス達のリーダー役ジャクソン(マイケル・ケネス・ウィリアムズ)|図書館のセキュリティ責任者エルネスト(ジェイコブ・バルガス)|地元の記者レベッカ・パークス(ガブリエル・ユニオン)|ホームレスの大男ビッグジョージ(Che Rhymefest Smith)|

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やまなか
Posted byやまなか