映画「仮面 ペルソナ」(1966) スウェーデン映画 監督:イングマール・ベルイマン

上

患者と看護師、女ふたりの物語です。
有名な舞台女優エリザベート(上の右側)は、公演中の舞台で、突然セリフが出なくなった。いや、声がまったく出なくなったのでした。(ストレスから来る失声症の症状と理解した
中5それで、精神科系の静かな療養所に入所します。
ここで、エリザベートを担当したのが若い看護師のアルマでした。(上の左側)
アルマは、有名スターを担当することになって緊張気味、その上、エリザベートの鋭い目つきに恐れを抱きます。たぶん、エリザベートも突然の事に驚いていたのでしょう。しかし、徐々にふたりは和んでいきます。
でもエリザベートは相変わらず無言です。アルマはいつも一方的に話し掛けるだけなのでした。
中1

さて、エリザベートが入所してそんなに日が経たないある日、医師でもある所長から、転地療養の効果を狙って「私の別荘を一時提供するから、ふたりで行きなさい」ということになった。
そこは陽射し穏やかな海辺でありました。
中2

いい気候、開放的なその地で、エリザベートは精神的にだいぶ良くなった様子ですが、まだ一言も話せません。
話せませんがしかし、その表情、態度で、アルマはエリザベートの意思、喜怒哀楽を理解できるようになりました。
とは言っても、親しい親友では無い。アルマの優しさは、あくまで患者に対する職務上の優しさ。そしてアルマにとってエリザベートは傍にいても遠い世界の人。自分の日常世界とは、まったく関係ない人という感覚。
中4


中6だからでしょうか。
アルマは、周囲に誰もいないことをいいことに、エリザベートに対し感情をストレートに、あからさまに出すようになっていきます。
療養所を離れ、ありあまる時間と、周囲に社会的雑念がない、この特殊な環境が、アルマに職務を忘れさせ、看護業務の範疇を徐々に逸脱しはじめるのです。

無言の人への、一方通行の対話は、アルマの勝手な思い込みを生み出し、そこから立ち上がる妄想によって、今まで知らなかった自分が、心の表層に液状化現象の様にしみ出し始めたのです。自身の内にあった多層性との遭遇です。
この時点でアルマから見ると、無言のエリザベートは、まるで人形。そしてそれに「もうひとりのアルマ」が乗り移っていこうとするかのようですが、しかしエリザベートにも意思と、引きずる重い苦しみがあるのです。ここに来て、二人の思いが異次元の世界でそれぞれに交錯しだす‥といった方向に、映画は映像で促します。

ペルソナとは人間の外的側面のことだそうです、周囲、世間、業務に適応するために被る仮面です。アルマのペルソナが剥がれだしたのです。そして幻想が交錯します。その中でアルマは自由奔放に翼を広げます。しかし‥。

中5ここで映画を振り返ると、ラストシーンは、冒頭と同じ療養所の中です。
思えば、所長の別荘で転地療養なんておかしいと思えば、この話全部が療養所内でのアルマの幻想か。
とにかく、なんにしろ、1960年代当時の時代背景、世相を考慮して観るべきかな。


失声症
精神疾患の一つの症状。精神的ストレスや心的外傷がきっかけに、声を出す器官に異常が無いのに、突然まったく声が出なくなる症状。声が出てもしゃがれたり かすれる。脳の言語を司る部位に異常は無いため、聞いた言葉は理解できる。
失声症以外に声が出せなくなる病気に失語症があるが、これは脳出血や脳梗塞などで大脳の中枢機能に障害が出ることで起こる。
エリザベートは頑なに妊娠や育児を嫌っていたが、結果そうなってしまい、愛せない子供や夫との関係が悪化し続けていたのが影響したのでしょうか。
一方、アルマはステレオタイプな結婚観、家庭観を自分に言い聞かせる、結婚が遠くない女性です。


この映画は、伝えたいこと表現したいことを抽象化して台詞に盛り込み、一方、映像はその内容から一定の距離を置き、端正な構図で美しく描いています。
ただし、誰もが分かるように作られた映画を、安楽椅子に座って受け身で楽しむ、という映画じゃない。映画を読みに行く作品。
ですが、観客は‥というと、こうです。
たとえ話ですが、現代美術展へ行くにあたって、事前に予習した上で、その絵画の前でナルホドと納得するか、はたまた、予習などせず飛び込みで入ってチンプンカンプンで終わるか、であります。
しかし、納得でもチンプンカンプンどちらにしろ、もし何かを感じ取れて、それを起点に、映画館を出たあと、ゆるりと反芻し始めたら‥、これこそ、作り手の思うツボ。といった作品です。
ただし映画評論家は、ピカソの絵を語る学芸員みたいな方なので、偉大な名作を残した巨匠だと言って、ありったけのことを、アレヤコレヤ語って祭り上げ、一方的に「賞賛の解説」をするので要注意。惑わされます。
チョットでも、自分が感じたことを大事にして見終えたい映画です。正解は無いのです。

予告編です
いやいや、おどろおどろしい予告編にしてますが、本編はこんなじゃない。
予告編 決め
https://www.youtube.com/watch?v=amxvetvKfho

始めに出てくる少年はあまり関係ありませんし、念のために言うと、あの女性は吸血鬼ではありませんし、同性愛の話じゃありません。
仮面をかぶっているのは、この予告編ですね。

別バージョンの予告編です
予告編 決め
https://www.youtube.com/watch?v=8ZO01M8k1mg

ベトナムの仏僧が当時の政権に対して行った抗議の焼身自殺は1963年でした。あの時代を思い出させます。


原題:Persona
監督・脚本:イングマール・ベルイマン|スウェーデン|1966年|82分|
撮影:スベン・ニクビスト
出演:看護師アルマ(ビビ・アンデショーン(ビビ・アンデルソン)|女優エリザベート(リヴ・ウルマン)|その夫(グンナール・ビョルンストランド)|女性医師(マルガレータ・クローク)|

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やまなか
Posted byやまなか