映画「おとなの事情、こどもの事情」 監督:ロブ・マイヤー

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ていねいに穏やかに描かれる物語。いい映画。
ニューヨークのど真ん中から、西海岸のローカルな町に越して来た、一家三人それぞれの人柄とそれぞれのゴタゴタを、周囲の住民を交えてコミカルに語ります。
また家族、住民、相互のカルチャーショックもソフトに描きます。ハッピーエンドです。

夫マック・バーンズは作家、妻ジーナ・マクナルティは写真家、そしてニューヨーク生まれの一人息子クラーク・バーンズは小学6年生。
名前で分かるように選択的夫婦別姓、この夫婦は進歩派のようだ。

マックは作家だけど、いつか、次作を発表するまでの間は、料理記事を雑誌に連載して稼いでいる。ネットでもできる稼業。
ジーナは写真家だけど、若い才能がどんどん台頭するニューヨークのアートシーンで、30歳半ばの立ち位置は、そろそろ しんどくなっていた。
中2そんな折、西海岸の最北部、カナダに接するワシントン州にあるローマという名の小さな町で(ローカルな大学だが)正規の助教職(任期付きじゃない終身雇用)の職を得た。写真芸術論の先生になる。
そんなことで、夫は妻の意思を尊重し、一家はニューヨークを離れた。

中3映画のメインテーマは家族愛。
本作はそんな ありふれた地味なテーマを選んだ。そして‥‥
NYの作家やアーティスを描く映画は多いが、大概、尖がってるか落ちぶれてるかだ。
だが、この映画は、その中間の人を選んで、かつ、華やかで人種のるつぼで、文化の発信地で貧富の差が激しいNYとは正反対の土地、地方の小さな町に、この家族を置いてみたら、どうなる?‥という設定。

とはいえ、その視点はNYからの視点。転居先の住民はそれなりに普通に生活している。(ここもUnited States)
家族が住む周囲は白人ばかりの住宅地で大きな家が並んでいる。都市部のシアトルからは遠い。
おそらく共和党穏健派に近い支持層の地域か、少なくともトランプ派じゃない、そんなふうに見える。
とにかく、この映画は、この家族と周囲の人の反応を仔細にウォッチングする。いや、ウォッチングするよう促す映画なのです。

下のシーンは、地域住民とのファーストコンタクト場面。
隣家のおばさんが引っ越し祝いにと、ちょっとしたものを携えてやって来た。対応したのはジーナだった。
夫婦の職業を知ったおばさんは驚き、そんな人はこんな田舎じゃなくてニューヨークでしょ、と言う。そこへ夫のマックが現れて、口には言わねども、あ、黒人!と驚いた表情をする。そして息子のクラークがやって来た、その時のクラーク目線の画像がコレ。
中1

ちなみにマックは黒人なので、人種差別という「単語」が、(おそらく)そうはしないという意を込めてだが、周囲の人々の口から何度か出て来る。また、ジーナはフェミニズムの視点を強く持つ人で、持論の写真芸術論も、息子へのしつけについても、フェミニズムからものを言う。しかし人種差別、フェミニズムというキーワードを意識しすぎると本作を読み違えてしまうので要注意。

さて、ここからは家族三人について注目しましょう。
ついでながらいうと、映画はこの三人が犯す過ちをひとつずつ用意します。

1_202103110847295b4.jpg妻ジーナはアーティストから助教になれた。
ニューヨークでは得られない、安定した家族の今後を求めていたのでしょう。
そして、やはりニューヨークでは得られない広い戸建てに住みたかった。(NYではアパートでした)だから、助教の職が決まって、単身この地に来た時、いま住むこの中古物件をひとりで決めてしまったが(ジーナの過ち)、壁紙の下や地下室の壁ウラにカビが‥のちに夫の指摘で発覚。
勤務先の話では、大学は職員へのマネジメントが至って保守的で、これに異を唱える同僚と仲良くなる。ある夜ジーナははその仲間と深酒して‥。

3_2021031109171552f.jpg小学6年生のクラークは、転居後も平静を装いながら無口だった。
91038092097559215344_thumb -3引っ越しで一番影響を受けるのは子供だし、同時に、転居先から影響を受けやすいのも、この年頃。
そんなクラークだが、やがて近所の姉妹と親しくなった。大~きなプール広い庭がある、この辺でも裕福な家の子だ。
この姉妹マセている。ヒップホップ(黒人系ダンスミュージック)に乗ってセクシーなダンスを、親が留守の時間に練習している。
女の子だし‥と、初めクラークに付き合う気は無かったが、ヒップホップはクラークも好きだし、姉妹の方はこの辺じゃ見ない黒人の男の子が近所に現れて、興味津々、大感激。
中4

クラークは彼女たちがお手本とするダンサーのセクシーな写真を部屋に貼った。それを見たジーナは怒った。こんなフェミニズムに反した写真は息子の教育に良くないと。これをおさめたのが夫のマック。
中6

そんなうちに、姉妹の妹がクラークに熱烈にアタックし始める。ある日、妹がクラークを自室に引き入れて戯れていた‥、その時、姉妹の母親が突然に乗り込んで来て現場を押さえられた。クラークが一方的に性的な悪者にされた。
これも事件だが、クラークも事件を起こす。
夜中に姉妹の家へ石を投げ窓ガラスを割るが親に言わなかった(クラークの過ち)。姉妹の母親が被害者としてクレームを言いに来た。この時は、マックが興奮しいろいろ言い放ったが、ジーナがその場をおさめた。
姉妹の母親が去り際に言った「私だって大学卒なのよ」と。NYの知識人夫婦に見下されてると感じたのだ。
中5


2_2021031109302531d.jpgさて、夫のマック。
彼は転居に不安を感じていた。新居に初めて入った時、ジーナはそうではなかったが、マックは微かにカビの臭いを感じた。それはこれから先の暗雲を予感させた。
何日たってもNY発の荷物が届かない。状況確認を業者に何度もするがまったく埒が明かずイライラ急上昇。よって広い家の中はベッドもなくガラ~ンとしている。料理の連載記事を書く時、自分もレシピに沿って料理するがガスコンロも食器も無い。
仕方なく、エアーベッドや簡易椅子テーブル、卓上コンロ、紙コップ紙皿、スーパーで買う調理済みの食事。

中7地域に住む男(町内会会長?)がマックに近寄って来て、数日後、酒を持って訪問してきた。悪い男じゃないが、NYの友人たちとは別世界の男。マックは社会人マナーとして付き合い、二人で家呑みが進むが、疲れる‥。男が帰ってからも、マックは飲み続けて泥酔し‥、酔って噴き出す激情で、カビが広がった壁紙を剝がし引きちぎる(マックの過ち)
そこへ、大学の仲間と深酒したジーナが帰って来てジーナは怒りあきれる。

以下のシーンについて。後ろの壁に注目を。
昨夜を反省するマックと、クラークも立場が悪いし、ジーナも‥。
中8

あれやこれや、何もかも私が悪いとジーナは落ち込み、引っ越ししなきゃ良かったと結論。そして車でひとりNYへ帰ろうとする。それを止めようとマックもクラークも急いで同乗。
そこへカビ処理業者がやって来て、とりあえず作業を始めてもらうことに。

そして三人はNYへハイウェイを走る。泣き出すジーナ。なだめるマック。そしてこの時、クラークは「僕が窓ガラスを割った」と告白した。それをまたケアするマック。マックは忙しい。
Uターンして帰ってくると、引っ越し荷物のすべてが前庭に置かれている。
引っ越し業者の大型トレーラーが去り際に「タチの悪い荷主に当たったもんだ!」の捨て台詞を、家族は浴びた。
中10

とりあえず家に入ろうとしたら、カビ処理の男が、「あっ!まだ入らないでください」
中9
だから、荷物が外に置きっぱなんだ。

予告編です。
NYの友人たちとのシーンから始まります。
予告編 決め
https://www.youtube.com/watch?v=TaV_dbXdV_Y


原題:Little Boxes
監督:ロブ・マイヤー|アメリカ|2016年|89分|
脚本:アニー・J・ハウエル|撮影:トム・リッチモンド|
出演:ジーナ・マクナルティ(メラニー・リンスキー-バーンズ)|マック・バーンズ(ネルサン・エリス)|クラーク・バーンズ(アルマーニ・ジャクソン)|ほか
中11
街を歩くマック。本屋に入ったが、品ぞろえが乏しく、欲しい本はなかった。
彼の音楽センスはGoodだと思う。フリージャズのブッチモリスとかアフリカン・ジャズとか。
クラークの聴く音楽は父の影響もろ受け。だから、おマセな姉妹が聴き踊る部類のヒップホップとは、同じヒップホップでもだいぶ違うのですがね、本当は‥。

【 一夜一話の歩き方 】
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やまなか
Posted byやまなか