映画「心と体と」 ハンガリー映画 監督:イルディコー・エニェディ

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静かなファンタジー映画です。
かたくなに、独り身を貫き、孤独を嫌わないふたり、エンドレとマーリアの物語。ハッピーエンドです。

エンドレは、食肉工場(屠畜場)の財務部長。
離婚してからのち、生涯独身と決めた男。50歳代か。
マーリアは、同じ工場に勤める、牛肉の格付けをする品質検査官。
自閉症で臆病だが、飛びぬけた記憶力を隠し持つ無口な女性。サヴァン症候群の傾向があるのか。
中2

そんな二人が、恋心を持つに至る過程に、映画はふたりの間に夢を置く。
なんとふたりは、同じ夢を見続けるのだ、それも同じ夜に。
その夢は、決まって、冬の森の中の、2頭の鹿の夢。
中1

この不思議の設定は、とてもあり得ない奇抜な設定だが、これをそう思わせない、しっかりした語り口がこの映画にある。これが本作の魅力だ。
中7さらには、この夢と現実世界との、なんらかの架け橋が無いと、話は分離にして話にならない。
これを担うのが、マーリア役の女優アレクサンドラ・ボルベーイだ。ここが見どころ。
あわせて各シーンの空間を、光で柔らかく包み込むようにする、撮影時の間接照明の妙も味わいたい。
さて早速、本作の雰囲気を静かに味わってみてください。

予告編です。
予告編 決め
https://www.youtube.com/watch?v=0JnAQvRsTLo

マーリアに寄り添うバージョンの予告編。
予告編 決め
https://www.youtube.com/watch?v=6gZw6GVf2eY

日本版予告編です。
これは上を観たあとに、観るほうがいい
予告編 決め
https://www.youtube.com/watch?v=AsDpqKcDwGw

そして、もうひとつ言っておきたいこと。
中8同じ夢を見る事や、自閉症のマーリアのギコチナイ奇異な様子に注視し過ぎて、観客の心が不思議な奇妙さに偏り過ぎないようにか‥、映画は幾つか、エッジの効いたエピソードを添えます。
それは、食肉処理場の牛の屠殺現場シーン、新入りの現場職員の男のワルな振る舞い、交尾のための牛用の性的興奮剤の盗難事件、犯人捜しのため職員全員に対して行う精神分析面談シーン、バスルームでのマーリアのリストカットのシーンなど。

ちなみにマーリアのそのシーンのさなかに、エンドレから愛の電話が入るのです。
ついでに言うと、タネあかしですが、職員全員に行う精神分析面談で、エンドレとマーリアがまったく同じ夢を見たことが分かるのです。(下が、同じ夢を見たことを知ったあと、偶然に駅のホームで出会ったふたり。通勤帰りのシーン)
中5


下

サヴァン症候群
知的障害や自閉症などの発達障害等のある人が、その障害とは対照的に優れた能力・偉才を示す。ある特定の分野の記憶力、芸術、計算などに、高い能力を有する人を示す。
マーリアは、例えばエンドレの一言一言を文章として頭に整理し記憶している。また自身に起こった諸々の事の年月日を正確に覚えている。また、エンドレにルールを教えてもらって初めてやったトランプゲームで勝つのは、カードをすべて記憶し把握しているから。

原題:Teströl és lélekröl|On Body and Soul|
監督・脚本:イルディコー・エニェディ|ハンガリー|2017年|116分|
撮影:マーテー・ヘルバイ
出演:エンドレ(ゲーザ・モルチャーニ)|マーリア(アレクサンドラ・ボルベーイ)|精神分析家クラーラ(レーカ・テンキ)|新入りの男性職員シャーンドル(エルヴィン・ナジ)|ほか



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やまなか
Posted byやまなか