映画「晩菊」 監督:成瀬巳喜男

上

時は昭和29年ごろ。(製作年当時)
後半の人生を歩む元芸者たちの悲哀を、愛情を持って描きます。
この群像劇の奥底で、わずかだが見え隠れするユーモアを感じ取れれば、話に厚みが増すでしょう。

彼女たちにとって、戦前、戦中はそれなりに華やかだった。その残滓(ざんし)が今を生きる彼女たちの心の支えになっているのだろうか。

まずは、おきん (倉橋きん) のこと。‥‥杉村春子
0-3_20210416054220d39.jpg登場人物の中で一番いい生活をしている女。金貸しをしている。独り身、子供もいない。ろう者の女中を雇っている。
女一人、世知辛い世を生きるには金しか無い、が心情。不動産屋の板谷(加東大介)が持ち込む投資話でも稼いでいる。
芸者仲間にも金を貸しているが、温情なく返済を催促するので嫌われ者。
こんな、一人我が道を行く女だが、過去に若さゆえの古傷があり、また今になってもなお振り返って想う男がいる。
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次に、おとみ (鈴木とみ) のこと。‥‥望月優子
0-1_20210416054540ebd.jpg古いアパートのお掃除おばさんをしている。パチンコが巧く景品は生活の足し。ただし負けが込めば浪費と言われてる。
おとみは、おきんの次に口達者な女。おきんとの言い合いは見もの。
0-7.jpg娘の幸子(有馬稲子)と二人暮らし。現代っ子の幸子は麻雀荘で働いている。年上の彼氏がいるらしい。
おとみは娘に金を借りるくらいに、いつも金欠。ただし、嫌いなおきんからの借金は、利子さえ払う気はない様子。
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そして、たまえ (小池たまえ)‥‥細川ちか子
0-2_20210416054938439.png当時、芸者仲間で一番、奥さんの風情があるといわれた女。旅館で客室清掃係をしている。
一人息子の清(小泉博)は無職。子離れ親離れしてない母子の2人暮らし。
おとみ母娘と一緒に共同で家を借りて住んでいる。
おとみと違って、たまえの方は、おきんから借りた金は、滞ることはあれ、なんとか完済する女。
そんなある日、清は彼女が出来たという。明日は彼女のところに泊まるという。どうも、誰かのお妾さんらしい。小遣いも貰っている。たまえは驚き嘆く。
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最後に、おのぶ (中田のぶ)‥‥沢村貞子
0-5_202104160552148e2.jpgおのぶは、夫(沢村宗之助)を尻に敷きながら、居酒屋を営んでいる。
ここはサブストーリー・シーンの舞台。
この店に通って来る男に関(見明凡太郎)というのがいる。その昔、若い頃、おきんと心中を図った男。結果、傷害事件として関は刑務所に入った。今はぶらぶらしている。おきんに会いたいと、おのぶに訴えるが、おのぶは関与しない。
だが、関を煽ったのが、この店に偶然いて泥酔中のおとみ。それで、関はおきんの家を訪ねるが‥。
もうひとつのシーン。たまえの息子の清が、彼女と呑んでる。清より年上っぽい、色っぽいお姉さん。
中9

さて、ここら辺から、おきん、おとみ、たまえの身の上に事件が起きる。
まず、おとみの娘、幸子が、母の留守に家を出て、彼の元へ行く。風呂敷包みを二つ抱えての身軽さ、気軽さ。元気良さ。
たまたま、居合わせた、たまえ、おきん。幸子は「行って来ます。じゃあねえ~」
中10

ある日、おきんに手紙が来た。田部(上原謙)からだ。熱い恋をした間柄だった。その後も数年に一度くらいは会っていた。
会う日が待ちどうしかったおきんは、その日、銭湯から帰ってきたら、田部がもう来ていて女中が出した茶を飲んでいた。
慌てて着替えて化粧するおきん。(彼女も女であった)
夕方から呑み始め楽しい会話が弾む。そのうち田部が泥酔し始める。金の話になった。目当ては金を工面してほしい相談であった。それと察したおきんは一気に興ざめ。それでも三味線を出して場を繕うことにした。昔はいい男だったから‥。そのうち、電車が無くなる時間、泊めてくれと言いだす。泊めてやる。おきんは女中と一緒に寝た。
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たまえの息子、清の話。彼が、おのぶの店で女と呑んでいたのは、別れの盃だった。
清に、やっと職が見つかり、勤務先は北海道。女と別れて旅立つのだ。(そう清は母に言う)
たまえは、おとみを連れて、ここ、上野駅の喫茶店に、清といる。たまえは言う「ホームで見送らないからね」
意外にも、たまえは涙しない。だけど心中、苦しそう。息子の晴れの一人立ちであった。
中12

たまえ、おとみは、線路を見下ろす陸橋から、清が乗った列車を見送る。
おとみは、たまえに、大声で笑ってやった。
「あんたも私も、これでいいじゃないか!」と。

下



監督:成瀬巳喜男|1954年|101分|
脚色:田中澄江、井手俊郎|原作:林芙美子|撮影:玉井正夫|
出演:おきん (倉橋きん) ‥杉村春子|おとみ (鈴木とみ) ‥望月優子|たまえ (小池たまえ) ‥細川ちか子|おのぶ (中田のぶ)‥沢村貞子|不動産屋の板谷(加東大介)|おとみの娘の幸子(有馬稲子)|たまえの息子の清(小泉博)|おのぶの夫(沢村宗之助)|おきんと無理心中を図った関(見明凡太郎)|おきんの昔の彼氏の田部(上原謙)|ほか

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やまなか
Posted byやまなか