映画「おらおらでひとりいぐも」(2020)　主演：田中裕子　監督：沖田修一

2022年08月04日更新

2021年06月21日公開

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田中裕子が主演だから成り立った映画です。

75歳になる桃子（田中裕子）は、一人住まい。
家族4人が暮らした一戸建住宅は今やガランとしている。
夫に先立たれ、息子は音信不通、娘（田畑智子）は時折都合のいい時だけ現れる。孫娘はカワイイ。

桃子の日々は、図書館通いとクリニック通い。親しい人は、そういない。
だけども桃子は寂しくない！
なぜなら、認知症による幻視で現れる、陽気な三人（濱田岳、青木崇高、宮藤官九郎）がいる。桃子の心の内の声かもしれない。
彼らは桃子の周りに来ていろいろ話してくれるし、憂いた時はファンキーなジャズを奏でてくれて、桃子は思わず、体がスイングするのです。（田中裕子、巧い！）

それから、クリニックの紹介で来た病院にも付き添ってくれるし、金を借りたいと言う娘からの相談話も聞いていてくれてる。（以前、桃子がオレオレ詐欺に引っかかって250万円盗られたことを娘はちょっと蒸し返す）

ただし、桃子を元気にしてくれる幻視の三人のほかに、実はもう一人いる。桃子を元気にしてくれない男（六角精児）。
そいつは、桃子が目覚める頃に、寝ている傍で何やらささやくのです。死神ではないが‥。

さてさて、それから
桃子は、東京に出てきたころの事を、時折そっと思い出す。（20歳の桃子：蒼井優）

1964年岩手。桃子は嫌な縁談が進む中、実家を捨て、後先考えず上京した。戦後の新しい女性像に憧れていた。親や世間が期待する因習的な女にはなりたくなかった。
最初に蕎麦屋で働きだして、居酒屋そして、和洋中華なんでもありの大衆食堂で働いた。
そこで大声で東北弁を話す周造（東出昌大）に出会う。頼まれもしないのにご飯大盛り、胃袋を握ったか。

桃子は若いころの周造と話す。桃子は若き日の自分に話しかけるのです。

桃子は思う。夫が死んで、一人の今が一番自由かもしれないと‥。
あとは観てのお楽しみ。

予告編です

https://oraora-movie.asmik-ace.co.jp//

でも今、桃子は寂しくない。幻視で現れる陽気な三人が一緒にいてくれるから。
おらおらでひとりいぐも！

監督・脚本：沖田修一｜2020年｜137分｜
原作：若竹千佐子｜撮影：近藤龍
出演：現在の桃子（田中裕子）｜若い頃の桃子（蒼井優）｜桃子の夫・周造（東出昌大）｜幻視の三人、寂しさ1（濱田岳）、寂しさ2（青木崇高）｜寂しさ3（宮藤官九郎）｜桃子の幻視「どうせ」（六角精児）｜桃子の娘（田畑智子）｜桃子の知り合い庭木の枝を切ってくれた警官（黒田大輔）桃子の息子の元友人｜クリニック医師（山中崇）｜HONDAの営業マン（岡山天音）｜図書館の司書（鷲尾真知子）｜桃子の同僚（三浦透子）｜桃子のばっちゃ（大方斐紗子）｜

桃子が若いころの時代を追体験できる映画。
桃子が上京した1964年公開の「風と樹と空と」。主演が吉永小百合、地方の高校を出て集団就職で上京の女性を描く。
1963年公開「下町の太陽」は倍賞千恵子が主演、桃子よりちょっと年上の、東京の下町の若き女性を描く。
同じく1963年の「見上げてごらん　夜の星を」は、夜間の定時制高校に通う学生たちの青春映画。