映画「プライズ 秘密と嘘がくれたもの」 アルゼンチンの少女の物語 監督:パウラ・マルコビッチ

上2

いい映画です。
7歳の少女セシリアの物語。
話の舞台は1970年代のアルゼンチン、砂浜広がる僻地の海岸。
政治情勢が大きく揺れ動く当時、将軍による軍事政権が成立し、政権は対立する勢力に対し、大弾圧を強行するなど権威主義体制を築き上げていた。
中1

さて、その砂浜広がる僻地の海岸に、放置され荒れ果てた小さな家が一軒、ぽつんと建っていて、強い海風に吹かれている。
その家に、セシリアとその母ルシアと黒犬ジムが住んでいる。いや、隠れ住んでいる。
父親はいない。映画はこの父親について多くを語らないが、母ルシアがセシリアに話して聞かす内容から察するに、父親は軍によって殺されたようだ。娘にはそのことを隠している。父親は軍が弾圧する抵抗左派勢力の活動家だったんだろう。
中10

一家は首都ブエノスアイレスかの都市に住んでいたが、そんなことがあってのち、母娘はここへ逃げて来た。自分たちの存在を軍に知られたくないようだ。
その何故かは、ルシアは娘セシリアに幾度も話しているが、7歳が理解するには難しい。
ルシアも夫と同じく軍に対抗する左派の一員なんだろう。ルシアは持っている本をポリ袋に包み砂浜に穴を掘って埋め隠した。
こんな事情を背景に物語は進む。

セシリアは本が好きで利発な子。近くの学校へ行きたいセシリアの願いを、母親はやっと受け入れた。
シルビアという友達もできた。砂浜でよく遊ぶ。セシリアは学校に行けるようになったのが嬉しい。やがてロシータ先生はセシリアの頭の良さを知る。
中2

ある日、軍人が学校に来て、今から作文コンクールをすると言う。作文のテーマは軍についてであったが、先生は軍を賛美する内容を求めた。
セシリアは考えた末に、軍によって、いとこが殺されたことも書き連ねた。それは、何故セシリアがここへ越して来たかを、母がセシリアに話し聞かせた理由の一つであった。(ただし話し聞かせる時、誰にも言っちゃいけないと必ず言い添えていたが‥)
中3


中6その日帰宅後、セシリアは母に作文のことを言った。それを聞くや、母は急ぎ荷物をまとめセシリアを連れ、あわてて家を出た。
思案の末、母はセシリアとともに先生の自宅を訪ねた。そして母はそこで作文を書き替えさせた。先生もセシリアの作文を読んで事の次第を理解したのでした。

その後日が経ち、学校に軍からの通知が来た。なんとセシリアの作文が最優秀賞という知らせ。
先生は授賞式に備えて自分の娘の靴をセシリアに貸してやった。
中4

しかし、セシリアは式を前にして嬉しくない。
嘘の作文であることの自責の念、式への出席を強く引き留める母親との葛藤。そして、はっきりとはしないが、軍への抵抗感。そしてその軍人が目に前に。
中7

授賞式のあと、母はセシリアを寄せ付けない。セシリアは母にすがりたい。自分だって苦しい。
セシリアはひとり広い砂浜に出た。その日はいつになく砂嵐がひどかった。
母娘二人しかいないのに、今、お互いに頼る者を見失っている。
中8

「秘密と嘘がくれたもの」、それはとても重い。
パウラ・マルコビッチ監督の実体験をもとにした映画とのこと。
中9とにかく、セシリア役の子役パウラ・ガリネッリ・エルツォクの魅力が作品全体を牽引しています。
また、彼女と母親役ラウラ・アゴレカとの母娘演技が実に自然体、まるで本当の親子の様。そして黒犬ジムもよく懐いている。おそらく、この二人と一匹は、撮影の前に一緒の時間を十分に用意されたのだろう。これが功を奏したように思う。

予告編です
予告編 決め
https://www.youtube.com/watch?v=I7-s_dbtpII/

もっと知りたい方へ
予告編 決め
https://www.youtube.com/watch?v=6Q_hYRwHo3o/


原題:EL PREMIO(THE PRIZE)‥表彰
監督・脚本:パウラ・マルコビッチ(Paula Markovitch)|メキシコ・フランス・ポーランド・ドイツ|2011年|109分|
撮影:ボイチェフ・スタロン
出演:セシリア(パウラ・ガリネッリ・エルツォクPaula Galinelli Hertzog)|母親のルシア(ラウラ・アゴレカLaura Agorreca)|先生のロシータRosita(Viviana Suraneti)|セシリアと親しいシルビア(シャロン・エレーラSharon Herrera)|ほか

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Posted byやまなか