映画「ノマドランド」(2020) 監督:クロエ・ジャオ

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映画の中を清々しい風が吹き抜けるのを感じます。
一人で生きようとする主人公ファーンの強い意志、でも肩ひじ張らない生き方が輝きます。

夫に先立たれ、夫と過ごした家をあとにして、ファーンは車に荷物を詰め込んで旅立ちます。
いや、旅ではない。漂流し始めます。自身の意思で、ただ、漂い始めるのです。ファーンはそういう生き方を選んだのです。
中1-2

アメリカ西部の広大な砂漠に、石膏(せっこう)を掘り出す鉱山会社があった。夫はその鉱山に勤め、ファーンは教員をしていたが、ファーンは未亡人となり、鉱山は不況倒産、よって砂漠にポツンと孤立してあった鉱山の町は消え失せ、郵便番号すら残らなかった。

けれども金を稼がなきゃ生きていけぬ。
ファーンは、Amazonの物流センターで働き、そのあとも行く先々で清掃の仕事や厨房の下働きを進んでします。
そんな風にして一人で生きようとするファーンですが、しかし誰かに頼らないわけにはいかないこともある。
車が故障することもあれば、女一人が荒野で一夜を明かすのはいささか心細い。
そんな状況を救うのが、ノマドたち現代の漂流民。彼らはみな、様々な改造バン(キャンピングカー)に乗ってアメリカを単独で漂流しているのです。
そんな彼らが集い、一夜の仲間として夜を明かす拠点が、ところどころ荒野の中にある。そこでは互いに久々の再会を喜び、不用品の物々交換やら働き口の情報交換やら互助気遣いの精神が生きている。また彼らの生き方に共鳴し支援や教示する組織が憩いの場の集会を催します。(宗教じゃなく)

中3
中2

ファーンは、ノマドたちとのたくさんの出会いの中で、これからノマドとして生きていく自分を見つめ自身の心を確かめていきます。
また、ファーンを好きになった紳士的なノマドの男からや、ファーンの実姉からの、一緒に住まないかの誘い、つまり定住しないかの誘いをファーンは丁寧に断ります。
さあ、あとは観てのお楽しみ。

予告編です。
予告編 決め
https://www.youtube.com/watch?v=ISSeVZ2_gy4

中4

この映画は、観る人がファーンに寄り添い、彼女の気持ちの推移を見つめようよと促す作品です。
下記にCNNがクロエ・ジャオ監督、キャスト、クルーにインタビューした記事があります。
https://honyakudiary.tumblr.com/post/647513581569654784/210404
この記事を読んで、映画に出てくるノマドたちは、実際のノマドだと知りました。
凡庸さを避けるため普通の人(そこに住む村人たち)を起用した、というある映画の言葉を思い出しました。
そして、インタビュー記事の最後にある次の発言が印象に残ります。
リンダ・メイ:「気が滅入る映画ね」と言う人がいるのは知っています。でも、私はそうは思わない。喜びが伝わればいいと思っています。と‥。


原題:Nomadland
監督・脚本:クロエ・ジャオ|アメリカ|2020年|108分|
原作:ジェシカ・ブルーダー著ノンフィクション『ノマド: 漂流する高齢労働者たち』|撮影:ジョシュア・ジェームズ・リチャーズ|
出演:ファーン(フランシス・マクドーマンド)|デイブ(デヴィッド・ストラザーン)|リンダ(リンダ・メイ)|スワンキー(シャーリーン・スワンキー)|ボブ(ボブ・ウェルズ)|ピーター(ピーター・スピアーズ)|ほか
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やまなか
Posted byやまなか