映画「国境は燃えている」(イタリア1965)  監督:バレリオ・ズルリーニ

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第二次世界大戦下、枢軸国のイタリアは、その東方、アドリア海沿いのアルバニアを併合し、さらに東に進み、ギリシャへ侵攻していた。激しい戦争でありました。
そんな状況下、話は、イタリア軍がアテネで招集した12名のギリシャ人従軍慰安婦をトラックに乗せ、割り当てた人数を各地に点在する駐屯地へ送り届けるロードムービーです。幾多の出来事が語られ、パルチザンの襲撃によって死者も出ます。

この任務を指揮するのは、若きマルティーノ中尉(トーマス・ミリアン)。ですが部下は、軍用トラックを運転するカスタニョーリ軍曹一人だけ。
さて、さまざまな出身の慰安婦を乗せて、マルティーノ中尉とカスタニョーリ軍曹の一行はアテネを出発。これは、なかなか興味を引く設定ですが‥。
中1

けれども、この話は戦争アクションではない。また、駐屯地のイタリア軍兵士の喜びに満ちた激しい欲望は描くが、性的場面を描くものでもない。
監督は、正義感あるマルティーノ中尉の存在を借りて、イタリア軍の性政策のいかんを問うている。
だから中尉の役柄に、戦争やイタリアファシストに対する批判精神と、慰安婦に対する優しい気遣い、そんな役目を振り当てています。
また、映画冒頭シーンでも、戦線の悲惨さ、アテネ市民の飢餓を映し出す際のナレーション、これがマルティーノ中尉自身の回顧として語られていてます。
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かたや映画は、アテネに住むギリシャ人のエフティキア(マリー・ラフォレ)に注目する。
彼女は飢餓ゆえの苦しみから自殺を試みもした。そして食事にありつける唯一の方法として慰安婦にならざるを得なかったことで、彼女は、われとわが身をさいなみ続けているのです。
そして映画は、このようなエフティキアの心を“癒そうとする”のか?、マルティーノ中尉に彼女に恋する“役回り”を与えている。
だが、無口な彼女は中尉に対し、頑なに態度を示さない。彼女の心境を思えば、そりゃそうだろう。態度を示すのは話が進んだずっと先、映画の最後になる。

その間に、話は群像劇となって進む。
トラックはある駐屯地で、ファシスト党の国防義勇軍(黒シャツ隊)のアレッシ少佐を終着地まで乗せることになる。マルティーノ中尉より上位の位の軍人だ。
この大佐が、荒野の一本道で一行が休憩中に、こともあろうに、慰安婦のトゥーラ(レア・マッセリ)を連れ出し、離れた草陰でセックスした。
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これを知ったマルティーノ中尉は、黒シャツのアレッシ少佐を荷台へ移ってもらい、トゥーラを運転席に乗せた。慰安婦を無事に送り届けることが彼の任務。
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ついで運転手のカスタニョーリ軍曹は、「私はイタリア人だ」と言う慰安婦のエベ(ヴァレリア・モリコーニ)と相思相愛になり抱き合った。互いに子がいることを打ち明け、戦後のことも話し合った。色っぽいお姉さんたちとの旅だ、こんなになる。
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さらには、慰安婦のエレニッツァ(アンナ・カリーナ)がマルティーノ中尉に言い寄るのだ。慰安婦の私たちを守ってくれる優しい男だと惚れたらしい。
中尉は心にエフティキア、目の前にエレニッツァの状態。結果、彼は戸惑いながらも彼女の好意に応え、その夜、彼女とセックスしてしまう。
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しかし、このエピソードは、座りが悪い。
相手が美人女優アンナ・カリーナだから仕方ないじゃない、ということでもなく、エフティキアを想うマルティーノ中尉の浮気話でしたということでもない。

問題は、作品コンセプト上、マルティーノ中尉は、従軍慰安婦を必要とする「戦争の罪を問う役柄」を担うだけに、黒シャツ少佐や軍曹と同列とはいかない。中尉が、映画企画の重要な役柄だということを、まるで忘れたかのようだ。
つまり、なんだマルティーノ中尉は、ファシストの黒シャツ少佐と同類ではないか、という事になる。これでは映画の軸、視座が根底から揺らいでしまうのです。

さあ、それはさておき、それからの話は、まだまだ展開しますが、あとは観てのお楽しみ。予告編もどうぞ。
ラストシーンは下の写真のように。

中8


予告編です
予告編 決め
https://trailers.moviecampaign.com/detail/24409



原題:Le Soldatesse|The Camp Followers|
監督:バレリオ・ズルリーニ|イタリア|1965年|120分|
原作:ウーゴ・ピロ|脚本:レオナルド・ベンベヌーティ、 ピエロ・デ・ベルナルディ|撮影:トニーノ・デリ・コリ|音楽:マリオ・ナシンベーネ|
出演:マルティーノ中尉(トーマス・ミリアン)|カスタニョーリ軍曹(マリオ・アドルフ)|エフティキア(マリー・ラフォレ)|エレニッツァ(アンナ・カリーナ)|トゥーラ(レア・マッセリ)|エベ(ヴァレリア・モリコーニ)|アレッシ少佐(アッカ・ガヴリック)|ほか多数

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Posted byやまなか