映画「ある女優の不在」(イラン2018) 監督:ジャファル・パナヒ

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この映画は、ゆったりした語り口で語る僻地の村の物語ですが、その奥底では、主題となるイランが抱える問題の是非を問うています。

物語の冒頭、どうしても女優になりたいのに、周囲の強烈な反対に苦しむ僻村の女の子が登場します。サスペンス的に始まります。
追いつめられるこの子、マルズィエは、人気女優ベーナズ・ジャファリ宛に動画を送りました。それは自撮り映像で、ジャファリに助けを求める悲痛な言葉と、そのあとには、これから首を吊るからという様子と、その直後にスマホが地面に落ちる際の一瞬の映像でした。

これを受けた女優ジャファリは、突然の事で動転しました。自分に対する悲痛な懇願、自殺、そして虚言かもしれぬという疑い、悪質な嫌がらせ、これらが入り交じってジャファリの心を揺さぶります。
居ても立っても居られないジャファリは、真実を確かめたくて、過密な撮影スケジュールを打ち捨てて、友人の映画監督パナヒと共に、イランの首都テヘランからマルズィエが住むという村を目指します。
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しかし、その村は僻地で、たどり着くのに苦労し、着いた先で、やっとマルズィエという女の子の実在は確認できたものの、生死は不明。(イスラム社会では自殺は禁じられ、残された家族や村はその死を恥として隠さざるを得ない)
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その後、マルズィエの実家で母親と面会し生存が分かったのですが、今度は本人になかなか会えないのです。(マルズィエの実家の前のジャファリ、パナヒ)
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その村はテヘランから車で一昼夜ほどのところで、ペルシャ語よりもトルコ語が話される地域、イラン北辺で隣国トルクメニスタンに近い州にあるらしい。(たぶん)
映画は、首都テヘランと、映画の舞台となる僻地との文化、風潮、時代的なズレをを描き出します。それは、半世紀以上も前の、まるでイラン革命以前の帝政時代であるかのようです。
しかし映画は村々の人の暮らしの古風さに憧れる様子はない。それよりも、村々に対しての行政の支援体制の不備や経済の遅れを描きながら、因襲的・閉鎖的な村から、なんとか脱したい女の子マルズィエの姿を追います。
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マルズィエは、テヘランにある芸術大学の難関試験に受かったのですが、父親や村人たちは彼女が女優を目指し村を出ることを、がんとして認めない。それは女性の自立を良く思わない風潮にある。
さらに直接的なわけは、革命前に一世を風靡した女優が近年、村に住み始めたことに起因している。その女優は村の風潮に馴染まず、村を無視し村はずれに小屋程度の家を建て住んでいる。その姿が、落ちぶれた姿と見なされ、女優になれば、あんな風になって村の除け者になるとマルズィエは言われる。
そんなことで、マルズィエの家族は村八分になる瀬戸際に立たされている。場合によっては老女優の家が焼かれるやもしれない。

そんなマルズィエの不幸や老女優への差別的な扱い、それなのに、日々テレビに出ている人気女優ジャファリに対しては村人は寛容だ。自分たちより上位の人だとして、村外者に対するおもてなしを受ける。また、行政の不備を視察しに来てくれたと村人に勘違いもされる。(原題:3 Faces)
しかし村人は、ジャファリに付き合って同行した映画監督パナヒに対しては、それほどではない。

さて、ジャファリ、パナヒは家出し姿を隠していたマルズィエに会えます。しかし会えたことで、ジャファリはマルズィエに激しい怒りをぶつけます。そして、彼女を強制的に実家へ送り届けました。
ジャファリ、パナヒはは、いささか後ろ髪をひかれる思いでテヘランへ帰りますが‥。あとは観てください。
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ちなみに、老女優は孤独ですが、実は風景画を描いたりの、悠々自適な生活を楽しんでいるのでした。

予告編です
予告編 決め
https://eiga.com/movie/89046/


原題:Se rokh|3 Faces|
監督・脚本:ジャファル・パナヒ|イラン|2018年|100分|
撮影:アミン・ジャファリ
出演:ベーナズ・ジャファリ(本人)|友人の映画監督ジャファル・パナヒ(本人)|女優志望の女の子マルズィエ(マルズィエ・レザエイ)|ほか多数
公式サイト:http://3faces.jp/

ジャファル・パナヒ監督の映画
「人生タクシー」と、「ある女優の不在」
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やまなか
Posted byやまなか