映画「ドゥ・ザ・ライト・シング」 監督:スパイク・リー

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ニューヨーク市ブルックリンの真夏、話の舞台はここ、多くの黒人たちが住むこの地域。
映画は、うだる平穏な日常から、ある日突然、ピザ屋が襲撃されるまでを描きます。

主人公のムーキー(スパイク・リー)は、イタリア系アメリカ人のサルの店、ピザ屋で、ピザの宅配係。
ムーキーは、一件の配達の行って来いに時間がかかる。路上で知り合いと長話、妹の家でシャワーを浴びたり、好き勝手。
だけど、雇い主のサルはムーキーをクビにしない。
中1

サルのピザ屋には、サルの息子兄弟も働いている。
左が弟のヴィト、右が兄のピノ(ジョン・タトゥーロ)
ムーキーは弟のヴィトと仲がいい。兄のピノは街の黒人が好きになれないが、店の客は黒人ばかり。
ほかの街に住むピノの友人は、ピノに街を出ろと勧めているらしい。だからピノは父親に、店を売ってこの街出ようと言う。
そんなピノに父親は言う。「この界隈の黒人たちはみな俺が焼くピザで育った」と。父親はこの街と人々を愛しているのだ。
中2

バギン・アウトは、毎日欠かさずこの店で一切れのピザを買う男。
だが、今日は違った。バギン・アウトはサルに食って掛かる。サルはあることに気付いたのだ。
店の壁にある写真は、みんなイタリア白人の写真ばかりだ!ナンセンスだ!
「この街でこの先、商売を続けるなら、黒人のスターや政治活動家の写真を壁に掲げろ!」と。
中3


さて、ここで、ピザ屋のサルが愛するこの街をのぞいてみよう。
パラソル下の、ブルースが似合う年配者は、日がな一日、下らん話をして笑っている。
そして、ソウルミュージックを聴く街の若いもんは、年寄りをバカにしている。
中4-2
黒人間のもめごとがあると警察が出て来るが、白人警官は穏やかに事をまとめる。かと言って彼らに寄り添うでもない、距離感を保つ。

ラジオ・ラヒームはいつも巨大なラジカセでソウルミュージックをガンガン鳴らして歩く男。(単一電池20個)
中5
かたや、街角で たむろっていたプエルトリコ系住人もラジカセで「サルサ※下記を流していたが、音量負けして悔しがる。(オレンジ横縞の男)
アフリカ系、プエルトリコ系の中で、ピザ屋のイタリア系白人親子は異色だが、街に受け入れられている、しかし(右写真)この白人は、街の黒人に取り囲まれた。本人曰く、この街生まれのこの街育ちだというが、その場にいる皆は信用しない。

主人公のムーキーの奥さんティナは、プエルトリコ系だ。
ティアは、糸の切れた凧のような、アホで甲斐性なしのムーキーに、いつも苛立っているが‥。
中6
ピザ屋の真向いには、韓国人夫婦が営む八百屋・よろず屋がある。上の、パラソル下のオッサンの一人は、韓国人が気に入らない。この街に勝手に来て店を構え、なにやら稼いでいる、と。


さてさて、こんな、ややこいい街で、ある日突然、ピザ屋が襲撃されたのだ。
その導火線は、「黒人のスターや政治活動家の写真を壁に掲げろ!」と言ったバギン・アウトと、巨大な音量のラジカセで店に入って来るラジオ・ラヒーム。
この二人が、ピザ屋に来て店主サルに抗議する。サルはラジカセの大音量を、ジャングル音楽だと言った。
それに続いて、店にいた若い黒人客たち、サルの息子たちが加わっての言い合いが、組んず解れつの大騒ぎに、そして店外に転がり出る。これに店内の騒ぎを見物していた人々が加わり、さらには物音を聞きつけた人々が数ブロック先から、はせ参じた。
そして導火線に火をつけたのは、ムーキーだった。彼はゴミ箱缶をピザ屋の窓ガラスに投げつけた。
中9

誰かが店内に火を放った。そのあと人々はレジの金を取り、店内のものを手当たり次第に盗んだ。そしてパトカーと消防車が。
中10

燃える店を眺めるムーキーと妹。その後ろでは韓国人夫妻が、自分の店も狙われると恐れている。
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翌朝、向き合うムーキーとサル。ムーキーは給料を払えと訴える‥‥
中15


この映画の宣伝文句は、パワフルな衝撃作。だが、そうとは思えない。
人種間、世代間のあれやこれやを、手際よく整理し映画にして観せる、スパイク・リーの頭の良さが印象的な映画です。
だから、ショーケースに収まったジオラマを見る思いがする。あるいは、ドキュメンタリー映画監督の フレデリック・ワイズマン作「ニューヨーク、ジャクソン・ハイツへようこそ」(2015年)の冷静さに近い。

原題:Do the Right Thing
監督・脚本:スパイク・リー|アメリカ|1989年|120分|
撮影:アーネスト・ディッカーソン
出演:ムーキー(スパイク・リー)|サル(ダニー・アイエロ)|サルの長男ピノ(ジョン・タトゥーロ)|サルの次男ヴィト(リチャード・エドソン)|バギン・アウト(ジャンカルロ・エスポジート)|ラジオ・ラヒーム(ビル・ナン)|ムーキーの妻ティナ(ロージー・ペレス)|ほか多数
ムーキー(スパイク・リー監督)
中12

ラジオ・ラヒームの両手に光る「LOVE」「HATE」
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ムーキーは、黒人についての本を読んだというピノ(サルの長男)と話し合っていた。
「黒人が嫌いなんだろ? でもお前の好きなスポーツ選手やミュージシャンは、黒人が多いだろ?違うかい?」「‥‥」
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マザー・シスター(ルビー・ディー)は、ダー・メイヤー(オジー・デイヴィス)を嫌っていたが‥
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こんな街を一番、客観的に見ていたのは、ミニFM局のディスクジョッキーだった。
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そして、何よりも、暑い夏だった。消火栓から水を出し、集まる子たち、大人たち。
中18



サルサって、どういう音楽?
ラテン音楽の1ジャンル。
ニューヨークのプエルトリコ人やキューバ人のコミュニティ内で、ラテン音楽にジャズ、ソウル、ロックを取り入れたもの、ニューヨークで確立された。
これはファニア・オールスターズの「Live at Cheetah」という名盤。ニューヨークのクラブ「チーター」でのライブ録音。
タップして聴いてみて。
ラジオ・ラヒームの巨大なラジカセに負けないサウンドです。
Live at the Cheetah

【 一夜一話の歩き方 】
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やまなか
Posted byやまなか