映画「当りや大将」  監督:中平康  なんとかここで精いっぱい、生きるしかない人々。“三丁目の夕日” じゃない昭和。 

中上

あの“三丁目の夕日” だけが昭和じゃない。これも昭和30年代。
監督は中平康、脚本は新藤兼人。

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舞台は、大阪の通天閣近く、釜ヶ崎。
大将(長門裕之)と呼ばれ、釜ヶ崎じゃ名の通った男の本業は、当たり屋。

当たり屋というのは、走りくる自動車に向かって故意に接触して ころんで、大げさに痛みを叫んで交通事故のケガを演技して、相手に治療費や慰謝料、示談金やら損害賠償を請求しようとする者。身体を張った商売だ。
チームプレーがいる仕事だが、稼ぎはいい。だから、周りの衆から大将と呼ばれる。

こんな大将の住まいは、釜ヶ崎のど真ん中、ホルモン鍋屋の向かいにある。それは掘っ立て小屋とも言えないくらいに小さい。足を延ばしてなんとか寝れる狭さの、自作の箱。だが独り者にはちょうどいい。

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左:ホルモン鍋屋のおばはん、右:大将、小屋の板戸を引き上げたところ。

当たり屋で稼いだ金は、その日すぐ、チームの皆で飲んでは歌いの、どんちゃん騒ぎをして、ハイ、たちまちのからっけつ。
だから大将は、いつもスカンピン。でも大将は、釜ヶ崎で常設の博打が好き。元手の小銭がいる。
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で、大将の副業は、ガラスを数枚背負って売り歩く、ガラス屋。
ホルモン鍋屋のおばはんの息子、チビ勝と手を組んで、人通りの無いところを選んで、まず、チビ勝が他人んちの窓ガラスに石を投げて割る。
そこへたまたま通りかかった素振りで大将が「ガラス屋、えーガラス屋」と、、、あま、段取りのよすぎる小銭稼ぎ。
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そんな大将の話に、映画は、これも釜ヶ崎で名をはせるベンテンのお初(中原早苗)、ホルモン鍋屋のおばはん(轟夕起子)、それと山内刑事(浜村純)を登場させて、話はこんがらがって行きます。
下

ラストは、通天閣のネオンサインを向こうに見ながら、暗闇の釜ヶ崎の夜がしんみりと更けていきます。

大将と、ホルモン鍋屋のおばはんとの話が、観終わったあとに、どうも喉に刺さった小骨の印象で、もう一工夫の筋書きが欲しいところ。
ちなみに、シーンの後ろを、しきりに走り抜ける国電(環状線)、蒸気機関車が走る当時非電化の大和路線、路面電車の阪堺線、そして南海電車もお見逃しなく。
それから、本作と同じく「当たり屋」を稼業としている家族の話がある。
大島渚監督の「少年」がそうです。こちらから記事をご覧ください。


監督:中平康|1962年|87分|
脚本:新藤兼人|撮影:姫田真佐久|
出演:大将(長門裕之)|ホルモン鍋屋のおばはん(轟夕起子)|おばはんの一人息子のチビ勝(頭師佳孝)|どぶのキリストの愛称の山内刑事(浜村純)|ベンテンのお初(中原早苗)|王様(山茶花究)|ほか多数

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Posted byやまなか