美術展「川端龍子VS.高橋龍太郎コレクション」会田誠, 鴻池朋子, 天明屋尚, 山口晃 ~大田区立龍子記念館
2021年11月02日 公開
久々に美術展へ行ってきた。大田区立 龍子記念館。
展示室入口で、いきなり出くわす、この絵は川端龍子の「香炉峰」1939年作 左右幅7メートルの大迫力(245×727㎝)。龍子記念館蔵
香炉峰は中国江西省北端にある廬山の一峰。海軍嘱託画家として日中戦争に従軍した川端龍子の作品。
圧倒する大画面ながら、透視される戦闘機は、消えゆくはかなさを語っているようだ。
これは「水雷神」1945年作 これも大きくて左右幅5メートル。(243×482㎝)龍子記念館蔵
爆弾三勇士(1932年上海事変)の水雷版か。しなやかなフォルムの3人。
あるいは古来からの三神。そして、あくまで水平を維持し突き進むメカニックな水雷。神々の「動」と、水雷の、なぜか「静」、の対比。
しかし、南洋のきれいな熱帯魚の一群は逆方向へ。パラレルな世界。
「草の実」1931年作(各177×382が6組) 龍子記念館蔵
屏風仕立てで六曲一双。折り曲げずに広げると左右幅23メートルなる大作だが、描かれる世界は静寂、初秋。
ススキだけじゃなく、ほかの見慣れた雑草も、金色になると、こんなに美しい!
さて、この企画展は、こんな川端龍子にコラボさせるのが、会田誠, 鴻池朋子, 天明屋尚, 山口晃という現代アートの諸氏の作品、という企画。
これは会田誠の屏風仕立て「紐育空爆之図」1996年 左右4メートルほど(174×382㎝)高橋龍太郎コレクション(現代アートコレクターの人)
ニューヨークのビル群を背景に、銀色の戦闘機が、見る角度によって、反射光の加減であらゆる色に変化する。
8の字のくびれの当たりが、旧Pan Amのビル(現メットライフ・ビルディング、1963年完成)。
そのほか仔細に見るとSONYの看板も見える。
展示台の下はビールの箱(プラ製コンテナケース)で作品を上げてある。これも作品の一部らしい。
展示室では、上の川端龍子「香炉峰」の対面にある。「川端龍子VS.高橋龍太郎コレクション」のVS.だ。
山口晃の「五武人図」2003年作(5点組 各170×60㎝) 高橋龍太郎コレクション
好きだな、こういうの。じっと見た。
中央、正面を向いている武人の顔、特に目の座り具合、これ、漫画家大友克洋を感じた。
同じく山口晃の「今様遊楽圖」2000年作(71×342㎝) 高橋龍太郎コレクション
これも大きい。描かれている世界は、巨大な屋形船に乗って優雅に物見遊山する人々(中央)、スーパー銭湯を楽しむ人々(右端)、あるいは高楼から、遊楽する人々を高み見物をしながら宴会する人々(左端)などなど。そして上空にかかる金雲。
遠目には、江戸時代の風景に見えるが、現代の様子も、ところどころに交じる。
人々の服装や様子は、チョンマゲもいれば現代人もいて、時代劇映画の撮影風景では?とも思うがそうじゃない。江戸人の方がずっと多い。
ですが誰もが互いに違和感なく、そぞろ歩きしている。英国の絵本「ウォーリーをさがせ!」じゃないが、現代人を見つけるのも面白い。
作品の隅では金雲に隠れて、駐車場に自動車がならんでいたりする。
一部分の拡大
なにしろ、精密に描かれているのに驚く。
京都の市中・郊外を精緻に描きながらも金雲たなびく、洛中洛外図屏風(戦国時代~江戸時代に制作)の類の現代版。楽しい!
これと同じ技法で描かれる「當卋おばか合戦」も素晴らしい。上の「五武人図」と「今様遊楽圖」のかけ合わせ的な作品。
そのほか、鴻池朋子, 天明屋尚の展示もありました。
ちなみに展示室の最後は、これ。
川端龍子が親の代から引き継いで邸宅に安置し信仰していた菩薩。
右手が長いんですが、下から仰ぎ見るように見上げると、菩薩の柔らかい手のひらが目前にあって‥なるほど、そういう意図なのだと納得。
十一面観音菩薩立像 像高183㎝ 奈良時代(8世紀)
東京国立博物館
東京国立博物館
しかし、こういうのを見るたびに思うのですが、一体どこの寺にあった菩薩なのか知りたい、加えてどうして個人蔵になってしまうのか。
廃仏毀釈ですよね、寺はよくも手放したものだと思うんですよ。住職もいない荒れ寺じゃないでしょう、こんな菩薩があるなら。
もちろん、破壊や海外流出を防いだとも言えますが‥とにかく今もってなにやら金雲ただよう。
【 一夜一話の歩き方 】
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