映画「大人の見る繪本 生れてはみたけれど」(1932)  監督:小津安二郎

上


昭和6年ごろ、東京の麻布から、当時は郊外だった大田区へ越して来た吉井家一家の、ちょっとした騒動が「大人の見る繪本」に至る、そんな物語。(サイレント映画です)
ほんわかした雰囲気の中で、 一家で一番偉い父親(家父長制)の、サラリーマン勤めの悲哀を、一家四人の立場を通してゆっくり描きます。

転校生となった吉井家の小学生兄弟は、初登校の前から近隣の子供集団のボスから虐められます。それは俺がボスだという意思表示であり、兄弟はそれが気に入らないが、彼は背が高く強い。
中1

だから、兄弟は登校初日から、学校へ行くふりして、原っぱで下校時間まで、サボりの時間つぶし。
中3

それに、その子供集団の中に父親が勤務する会社専務の一人息子がいることで、これから、大人の生きる世界と子供の世界が、吉井家の中で対峙することになります。

父親は中小企業に勤務しているんだろう、役員と社員の距離が近い会社。そのなかで彼はそう出来のいい社員じゃなさそうだ。
彼の引っ越しを、この会社の社員たちが「専務が住む近所に引っ越ししたなんて‥‥」と、暗に彼の引っ越しは、おべっかだねと言われている。
父親は引っ越しその日に、さっそく専務の豪邸へ挨拶へ行った。庭にはテニスコートがあって専務とその友人たちがテニスを楽しんでいる最中でした。(日曜日なんでしょう)

吉井家の朝は、父親と兄弟は一緒に家を出ます。電車の踏切前で、子たちは線路に沿う道を学校へ、父は踏切を渡って駅へ行きます。
中4

時折、踏切前で専務の送迎車に出会うと、父親はこの車に乗せてもらいます。同時に同乗していた専務の息子が下りてくることもあります。父親は専務にそしてその息子にペコペコ頭を下げます。そんな光景を兄弟が見つめるのです。

一方、兄弟は子供集団に虐められつつも、その仲間に入りたい。そこで、家に御用聞きに来る酒屋の小僧(中学生)を利用して、ボスをとっちめて、兄弟は仲間に入った。兄弟の兄がボスとなる。
中5

よって専務の息子は兄弟の手下となった。つまり、吉井家父子と専務親子との関係にねじれが生まれる。

そして、吉井家親子がはらむ問題が露呈したのが、専務宅で開かれた、専務が趣味とする8ミリ撮影の映像お披露目会。
そこには父親を含む社員と兄弟も呼ばれた。しかし映像には父親が社内でお道化るシーンが幾つもあって、兄弟は耐えられない。
中6

その後、吉井家では父子の関係が‥。
あとは観てのお楽しみ。
中7


映画に頻繁に出て来る電車は、今の東急池上線だそうです。よって吉井家の家は、JR山手線・五反田駅(品川区)~JR京浜東北線・蒲田駅(大田区)を結ぶ池上線の沿線のうち、大田区内の何処かとみた。
中8


監督:小津安二郎|1932年(昭和7)|90分|
原案:ゼェームス・槇|脚本:伏見晁|撮影:茂原英朗|
出演:父親吉井健之介(斎藤達雄)|長男良一(菅原秀雄)|次男啓二(突貫小僧)|母親英子(吉川満子)|専務の岩崎壮平(阪本武)|その息子太郎(加藤清一)|映写機を回す部下(笠智衆)|ほか


こちらで小津安二郎監督の作品をまとめています。
サム3



20220827200242ce7_202211120809472d2.png


【 一夜一話の歩き方 】
下記、タップしてお読みください。

写真
写真
写真
写真
写真
関連記事
やまなか
Posted byやまなか