街の大人の勝手な思いに、子供はこんな話を紡ぎ出す。映画「ピザ!」「ヴァンパイアvsザ・ブロンクス」

無題

街の大人の勝手な思いに、子供はこんな話を紡ぎ出す。
「ピザ!」 は、インドの南にある大都市の、スラム街に住む兄弟の話。
「ヴァンパイア vs ザ・ブロンクス」 は、ニューヨーク市ブロンクス区に住む、アフリカ系、ラティーノ系の子たちの話です。
どちらも楽しいよ。


ピザ!Kaakkaa Muttai|The Crow's egg
上

これは、良く出来たエンターテインメント作品です。
話の場所はインドのある大都市、その周辺の河岸に、貧困層が住む集落が広がっている。
元気のいい兄弟は母親と祖母と、生活維持最低限の狭い部屋に住んでいる。父親は刑務所だ。よってこの家の収入はほぼ無くなっている。
中6

だから兄弟は学校に行かず、毎日近くを走る線路を歩き、石炭貨物列車からこぼれ落ちた石炭を拾い集め、換金して稼いでいる。(都市部の幹線だから列車本数は多い)
ほかの子は、満員の通勤電車がゆっくり来るのを線路際で待ち構え、電車の乗降口に、外へ向かって腰を下ろして座る乗客が手にするスマホを、棒で叩き落す。落ちたスマホは換金するんだろう。(インドでは電車にドア扉は無いのです)
それは石炭拾いより割りのいい収入になるけれど、兄弟の兄はこれを良しとしない。

兄弟の楽しみは、空き地の大きな樹に登り、巣からカラスの卵を盗んでその生卵を飲むこと。美味しい。優しい祖母は兄弟の卵盗みの常習を母親には言わない、が母親は何故か知っていて、兄弟は都度しかられている。さらには、スラムの人々は兄弟の事を、「大きなカラスの卵」と「小さなカラスの卵」と呼んで可愛がっている。
中1


そんなある日、こんな兄弟に衝撃なことが起こった。
それは、ピザ!
兄弟は、ピザ屋の美味しそうなポスターを見つめている
見たこと無い、食べたことの無い、この美味しそうなモノは何? 食べたい! その目はらんらん。
兄弟の住むスラムからほど近い大通り、これに面してピザの店がオープンしたのだ。(この都市ではピザ屋は珍しいらしい)
中4


一方、このピザ屋側の話。それは大人の世界、利権の話。
この店、一見、チェーン店風だが、そうじゃない個人の開業店舗。
その場所は、それまで空き地で、子たちの遊び場、兄弟がカラスから卵をもらっていた巣がある樹があった場所。
開業にあたっては、オーナーの思惑に、このあたりの顔役や不動産屋が絡み、加えて開業後は地場のヤクザ風や、いざと言う時の政治家、そして政治家経由の警察が用意される。

さて、騒動の発端は、ピザを食べてみたいと思う兄弟の一心な気持ち、ただそれだけのことだった。
しかし兄弟にとってピザ一枚の値は300ルピー、高嶺の花。
中2

とは言え、兄弟たちにもいい取り巻きがいる。口うるさい母親と、味方してくれる祖母。そして兄弟にとって知恵袋のブルジョアの男の子と、線路際に住む保線作業員の優しい男だ、世間を渡る知恵を教えてくれる。
このうちのブルジョアの子と保線のおじさんのおかげで、兄弟の石炭売り上げが大幅アップ、兄弟は300ルピーを達成できた。(貯めたお金は家に内緒)

それで兄弟は、意気揚々とピザ屋に向かった。しかし店の入口の警備員に入店を阻止される。理由はスラムの子だから、身なりが汚いから。
でも兄弟はめげない、ピザのため。
それじゃ、きれいな服を買おうと、兄弟はバイトし始める。(石炭の盗みはバレてもうできない)
そして日が過ぎ、お金が貯まり、やっと繁華街のショップに出かけたが、神のご加護か、うまい具合に、貯めた金額以上の服を手に入れた。
そして新調の服を着て、また意気揚々と、ピザ屋に来たが、やはり警備員に追い返され、そのうえ兄は店のオーナーに殴られその場にぶっ倒れた。
だが、これも神のご加護か、その様子をスラムの子がスマホで撮っていた。(例の手口で得た電車乗客のものだろう)
中5

さあ、ここから、スマホ撮影動画、つまりピザ屋オーナーに対する強請(ゆすり)のタネを手に入れたスラム街のボスが加わり、次いでその手下がボスを出し抜き、その動画をテレビ局に売り、ニュースで全国放映となって行く。テレビで動画を見た兄弟も母親も祖母も驚く。(届いたばかりのテレビは低所得者への支給品)
中3

当然、マスコミ各社が店に押し寄せる。野次馬も大勢来る。
これに対しピザ屋のオーナーは、地元政治家に問題解決を頼み、政治家はこれ幸いに、両手に、濡れた手で粟(あわ)を狙う。騒ぎを抑えに警察も出動する。
さあ、あとは観てのお楽しみ。ハッピーエンドですが‥。

予告編です
予告編 決め
https://www.youtube.com/watch?v=bm6RCZgptkU


ちなみに、小津安二郎監督の大人の見る繪本 生れてはみたけれど※に出て来る少年は、すずめの卵を飲むのです。(※映画紹介記事にリンクしてます)

原題:Kaakkaa Muttai|The Crow's egg|
監督・脚本・撮影:M・マニカンダン|インド|2014年|90分|
出演:兄弟の弟(ラメーシュ)|兄弟の兄(J・ヴィグネーシュ)|母親(アイシュワリヤー・ラージェーシュ)|祖母(シャーンティ・マニ)|スラム街のボスの手下(ヨーギ・バーブ)|ラメシュ・トヒラック|ほか


ヴァンパイアvsザ・ブロンクス
VAMPIRES VS. THE BRONX
上

街の大人の勝手な思いに、子供はこんな話を紡ぎ出す。
コチラの舞台はニューヨーク市ブロンクス区のどこか、今は夏、真っ盛り。
ここら辺は黒人とラティーノ(ここではカリブ海地域の人々)が多い地区。
だから映画の出だしは、サルサのゴキゲンなサウンドで始まる。

物語は、タイトルの通り、吸血鬼の一団と対決し、街を守ろうとするブロンクス生まれの少年たちの冒険談。
だけど、この映画をヴァンパイア好きの専用席から観ると、ありきたりなストーリーだろう。
見どころは、ヴァンパイアもののアクションじゃない。そしてこの映画は少年たちの冒険談に収まらない。
中1


ミゲルという地元少年が、最近、寂しくなる地元を元気にしたいと、自転車に乗ってパーティ開催のチラシを張って回っている。
なぜなら街のあちこちで馴染みの店が、家賃の値上げに耐えられず次々に閉店になっているのだ。ミゲルに賛同し応援してくれる人も多いようだ。

実は、地元の店を閉店に追いやって、新たな出店を富裕層の出資者に誘っているのは、不動産屋だ。
かつて、ニューヨーク市ブルックリン区の貧困地区に、不動産屋が入って街並みが再開発されてしまったのと同じ状況が、ここブロンクス区でも始まっているらしい。
要するにこの映画は地元住民の視線で、この状況を「白人」ヴァンパイアの侵出に例えて描いている。

中3

映画冒頭、夜、ネイルサロンに不動産屋の白人男が来て「今夜で閉店だね」と、意味ありげに店主の黒人女性に話しかけている、と‥‥突然、女性の背後から白人系ヴァンパイアが彼女の首筋に噛みついた。(これだから、最近、この街に行方不明の人たちが増えているのだ)
そう、この不動産屋の男は、ヴァンパイアの一団の手下で人間。不動産屋の表向きの社長で、つまり太陽がある時間帯担当の男。

とにかく、こうして、ヴァンパイアはこのブロンクス区のこの一帯をを我が街にしたい。ブロンクス区住人にとって再開発の魔の手は、白人ヴァンパイアなのです。
ミゲルはこれに気付き、仲間と一緒にヴァンパイアに立ち向かうのです。
ちなみにヴァンパイアの一団のボスは女のヴァンパイアで、これをあの可憐な女優サラ・ガドンが演じているのが、小柄で細くて弱そうで可笑しい。

予告編です
予告編 決め
https://www.youtube.com/watch?v=k2yfp6oj2hw


中4
この食品雑貨屋のおやじは少年たちの見方だったが‥。

スパイク・リー監督のドゥ・ザ・ライト・シング(1989)※のブルックリンでは、サルサは劣勢で、ソウルミュージックで街は満たされていました。(※映画紹介記事にリンクしてます)
01_202112120625107df.jpg


原題:VAMPIRES VS. THE BRONX
監督:オズ・ロドリゲス|アメリカ |2020年|86分|
脚本:オズ・ロドリゲス、ブレイズ・ヘミングウェイ|撮影:ブレイク・マクルーア|
出演:ジェイデン・マイケル|ジェラルド・W・ジョーンズ三世|グレゴリー・ディアス四世|サラ・ガドン|ほか

【 一夜一話の歩き方 】
下記、タップしてお読みください。

写真
写真
写真
写真
写真
関連記事
やまなか
Posted byやまなか