映画「牯嶺街少年殺人事件」(クーリンチェ少年殺人事件) 監督:エドワード・ヤン

殺人事件と言うタイトルですが、アクションもの・刑事ものではありません。
他で映画評されるほど、殺人事件だけに焦点をあてた映画でもありません。殺人事件は主たるテーマじゃないと思います。もう少し広い視野で観たほうが、映画の魅力に迫れるかも。
なにしろ4時間映画ですから、物語るその量はとても多いです。
スー少年とミンに年頃の愛が芽生えます。(右写真→)
部分的にはラブストーリー青春映画ですし、殺人事件も映画全体の一部分です。時は1950年代末~60年代前半くらいでしょうか、台湾国内がまだ落ち着かない少々荒々しい時代の、老若男女、様々な人生模様が描かれている映画です。いくつもの話を含んだ映画と思ったほうが自然です。
映画の中では時間がゆったりと、とうとうと流れています。この流れに身をゆだねてみましょう。


夜間中学の生徒たちは、若さと悪さの発露を求めて教師に世間に反抗します。
舞台の台北のこの街には2組のやくざグループがいて、中学校内の2つの悪さ派閥を繰っている。その片方のやくざグループのボスはハニーという、ちょい異端で知的好奇心がある青年、少年スーの尊敬する人物。しかし実はミンの元彼はハニーであり、ずっと年上の町医者からも好意を持たれている、なかなかの少女。
そして、この街には映画撮影所があり、ミンは偶然にではあるが女優としてスカウトされる。


コンサート開始前に、全員起立姿勢で国歌が流れる。客席で聴くだけ、ダンスはないコンサート。
まだまだ闇がある台北の街、コンサート会場からもれる明かりは街の闇を感じさせる。停電もよくある。
スーの家は日本式家屋、ふすまがあり押入れがベッド。スーの友人モーは金持ちの子・軍司令官の子息、彼の家も日本式家屋、日本軍将校の家だったと言っている豪邸。天井裏から日本刀が出てくる。スーの家からは、女持ちの短刀が出てくる。中学生悪さグループ間の抗争がエスカレートした際に、日本刀が使われ人が死ぬ。
スーの家族もミンの家族も上海からの移民。スーの父はインテリで、中国共産党党員の嫌疑で秘密警察に呼び出され、上海からの人間関係を洗いざらい記述することを強いられる。
混乱を乗り越えて、新しい時代を築こうとする当時の台湾の人々の苦悩が描かれている映画だと思います。

原題:A Brighter Summer Day|
出演:チャン・チェン(Xiao Sir)|リサ・ヤン(Ming)|チャン・クオチュー(Father)|エイレン・チン(Mother)|ワン・ジュエン(Eldest Sister)ほか
※「少年殺人事件」は少年が死んじゃう事件じゃないです。そういうことで「少女殺人事件」が本当でしょう。
同監督の「ヤンヤン 夏の想い出」(2000年)はですね、マイ・フェイバリットな映画です。
今まで何回も観てます。昨年大晦日に書いたブログ「旧友に会うように、馴染みの映画を観る」のリストに入れようと思って入れ忘れた映画。



1895年■清国から日本に割譲(させられる)以後、日本は台湾を領有
1945年■第2次世界大戦終結 台湾領有権を放棄し、日本人たちは台湾から引き上げる。連合国側に属した蒋介石が率いる国民党政府が、当時の中国の実効政権として台湾を接收
1949年■中国共産党との内戦に敗れ、中国を追われた蒋介石・国民党政府幹部や軍関係者、その家族は台湾に逃れ来る。国民党政府とともに、共産主義を嫌い、安定した生活を求めて中国から台湾に逃れ定住した人々は「外省人」と呼ばれた。その数は200万人とも言われる。従来在住の住民である「本省人」(当時600万人)と区別され、社会的権利は著しく制限された
ジャ・ジャンクー監督の「海上伝奇」には、上海から台湾に渡った人の話が出てくる。

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