映画「帰らざる日々」(1978)  監督:藤田敏八

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長野県の高校生の、すなおじゃない友情と、6年後の再会の話。そして未熟な恋物語。

中4

主人公となる野崎(永島敏行)というのが、父の葬儀のため、新宿から故郷の飯田へと向かう車中で思い出す、6年前の回想を描きます。
それほどの映画ではないのですが、敏八(びんぱち)と一緒に、1970年代の空気を吸いたい方へ。

1972年の夏、当時野崎は高校3年、母と二人暮らし。父親は若い女性に想いを寄せ、すでに家を出ていました。
野崎は、行きつけの喫茶店で働く真紀子(浅野真弓)に興味ありで、年上の真紀子もまんざらでもない様子。
中1

ところが高校同学年の黒岩(江藤潤)が、陰でなにやら真紀子と親しげ。
この黒岩という男、知り合いでもない野崎に何故か近頃、言い寄って来る。実は黒岩と真紀子はいとこ関係で、野崎が真紀子に気がある事を察してのことだった。

一方、野崎は中学の同窓生の由美(竹田かほり)に偶然出会う。
それから日を置かず再度出会ったのは、これまた偶然だったが、街のやくざのボス、戸川佐吉(中村敦夫)が野崎を連れて入った飲み屋でした。由美は母がやっているこの店を手伝っていたのです。
中3

野崎は何故、やくざに連れられていたのか。それは、戸川は、野崎の母がやっているスナックの常連客で、そこで戸川は野崎に出会い、野崎の男振りが気に入ったらしい。それで野崎を無理やり誘っての、はしご2軒目の事でした。

さて、黒岩のこと。
彼は実は競輪選手になることが夢。一途な男。だから周りの高校生が幼く見えるし、誰とも付き合いたくもない一匹オオカミ風。
そんな黒岩が野崎に近づいてきたきっかけは、従姉の真紀子を野崎とくっ付けてやれという企みだった。
結局、野崎は黒岩の策略に乗って、真紀子と夜の公園デート。
そのうち、黒岩は野崎の個性に魅力を感じたんだろう、それは野崎も同じで、二人は友達となった。(のちに野崎は東京に出て作家志望の今現在となる)
しかし、不運にも黒岩はバイトの最中の事故で足が不自由になり、競輪選手の夢は消えた。

ついで野崎の恋物語。
積極的な由美は、初心な野崎を休業中の自分の店に誘って‥。
なぜその日は休みかと言えば、母親はやくざの戸川とご旅行。つまり、戸川と由美の母、野崎の母は三角関係のようだ。しかし、由美のその後は、店をたたみ、母と共にどこかへ引っ越していった。
かたや、真紀子のその後は、妻ある男と交際していて身ごもるのでした。

そして、話は6年後の現在に戻って、野崎の父親の葬儀。父親の死因は交通事故だという、その加害者とは‥。
あとは観てのお楽しみに。
ただし、挿入歌を歌うアリスに私は寄り添えませんし、映画が挿入音楽にどっぷりつかる様子はいただけませんが‥。

最後に、東京で野崎と同棲している螢子を演じる、根岸とし江(現:根岸季衣)
彼女は飯田に帰る野崎について行って彼の母親に「私が妻の螢子です」と言いたい。
しかし、野崎に断固断られて新宿駅ホームで彼を見送るのですが、実は列車にこっそり乗っていて、結局、母親に会い、台所で葬式の手伝いをするのでした。
ともあれ、劇団つかこうへい事務所の舞台演劇『ストリッパー物語』(1975)の主役で大ヒットした後の、当時の彼女は溌溂としてますね。← これが言いたかった。

当時、つかの舞台をリアルタイムで観てました。ステージ上で根岸は輝いていました。
そして、それまで観ていた、黒、紅の素晴らしいテント芝居とは違う流れの、劇団「暫」や、つかの芝居、夢の遊民社の魅力にも魅せられた1970年代でした。

原題:Bittersweet
監督:藤田敏八|1978年|99分|
原作:中岡京平|脚本:藤田敏八、中岡京平|撮影:前田米造|音楽:石川鷹彦、アリス|
出演:野崎(永島敏行)|黒岩(江藤潤)|真紀子(浅野真弓)|由美(竹田かほり)|野崎の母(朝丘雪路)|野崎と東京で同棲中の螢子(根岸とし江)|やくざの戸川佐吉(中村敦夫)|由美の母(吉行和子 )|真紀子の彼氏(中尾彬)|ほか

「ATGだけじゃない、1970年代日本映画の心意気」
という特集をこちらでやってます。
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やまなか
Posted byやまなか