「霊」が見える女たちの映画。「ルームロンダリング」・「コンセント」
2022年03月15日 公開
今回は、霊が見える女たちの物語、2本立て。
「ルームロンダリング」は、明るいコメディです。ただし、チョット怖い。
タイトルの意味は、前に住んでいた人がその部屋で死亡し、事故物件となったアパートマンションの部屋を、きれいにして再度、売り出すこと。(資金洗浄マネーロンダリングの、もじり)
そのためには、物理的な洗浄・復旧作業の他に、業界慣行として、その後の入居実績が必要となる。
そうなれば、事故物件であったことは、すっかり消えて、住み良い正常な物件になるという事らしい。需要も結構ある。
それで、あちこちにある事故物件の履歴を消すのため、アリバイ作りで短期入居を繰り返すのが、主人公の八雲御子(池田エライザ)の仕事なのです。
ただし、その部屋には、まだ、死んだ人の霊が、いるのです‥‥。
「コンセント」は、兄がアパートで自死しているのを、日が経って大家に発見された事件で始まります。
これをきっかけに、妹の朝倉ユキ(市川実和子)は、兄の霊が見え始め、がん発症によって人が発する微かな臭いが気になりだし、果ては、他人の霊が見え始めます。怖い!
では、「ルームロンダリング」から、どうぞ。
ルームロンダリング
この映画は喜劇です。
まずは、いきなり予告編をどうぞ。
冒頭で、ヤクザがルームロンダリングの意味と意図を解き明かしています。
https://www.youtube.com/watch?v=piAUDKoTBEE
八雲御子(池田エライザ)は18歳。
幼くして両親を失い、その後、祖母と二人で生活していたが、祖母が他界する。
その葬儀に、母親の弟で、御子にとって唯一の身寄り、叔父の雷土悟郎(オダギリジョー)が現れる。
憐れんだ叔父は、姪の御子に仕事と住む部屋を紹介した。しかし、それは叔父の稼業に好都合だったからでもあった。
実は叔父は、超・零細な不動産業者で、以前から街のヤクザと手を組んで、裏商売として住人に嫌がらせをする立ち退き屋もやっている。
そんな叔父は、御子が独りで生きて行くことになった事情と、彼女が引きこもりなのを利用して、事故物件に入居させる。(事故物件の正常化のアリバイ作りは近隣に知られたくないので、御子の引きこもりは最適なのです)
こうして叔父は、またもやヤクザと手を組んでルームロンダリング事業を始めたのです。
だが、当の御子は思いのほか、冷静。霊が見えても、怖くない。あげくには、霊と話す。
そして、ルームロンダリングの需要は案外あるのです。
よって、御子の短期入居は各所で行われ、その都度、引っ越しします。映画は、そんな御子と様々な霊との出会いとスッタモンダを可笑しく描いて行きます。
ここに出て来る子供の霊は、実は御子と同じ歳。小学校時代の御子の幼友達です。彼は幼くして下校時に死んだのですが、今もこうして公園で付き合っています。御子にとって唯一、気心の知れた友。
https://eiga.com/movie/88288/
さあ、あとは観てのお楽しみ。
下記の配役で、物語をご想像ください。
監督:片桐健滋|2018年|109分|
脚本:片桐健滋、梅本竜矢|撮影:江崎朋生|
出演:八雲御子(池田エライザ)|八雲御子の叔父の雷土悟郎(オダギリジョー)|八雲御子の祖母(渡辺えり)|八雲御子の母(つみきみほ)|自室のバスルームで自殺したパンク野郎の春日公比古(渋川清彦)|警官に背中を刺され自室で死んだ千夏本悠希(光宗薫)|その隣室の住人で八雲御子といい仲になる、なっちゃいけない虹川亜樹人(伊藤健太郎)|千夏本悠希を刺した警官(木下隆行)|西前(田口トモロヲ)|ほか
コンセント
朝倉ユキ(市川実和子)の一家は悲惨だった。
ユキの幼い頃から、父親は母親や兄に対して家庭内暴力が激しく、ある時、母親は兄妹を連れて親子心中を図ろうとしたことがあった。
そののち兄の成長に伴い、父親と兄は殺し殺される激しい沙汰が繰り返され、兄は兄で仕事を転々とした。そんななか、ユキは一人住まいしていた部屋に兄を引き取った。
だが、ある時、兄は失踪し長らく行方不明となっていた。そしてある日、兄は腐乱死体となって大家に発見される。
激しい死臭の中、兄の死体を見たユキは、この時、ある物を見つめて、ある啓示を受けた。
見入ったものは、壁の「コンセント」につながれたままの真新しい掃除機の「電源プラグ」。この状態はきっと兄が残したなんらかのメッセージだろうと、ユキは直感する。
それを脇で示唆したのは事故物件の後処理をしている特殊清掃員の男だった。加えて、ユキは、昔、兄と一緒に観た映画の、コンセントにつながった少年のシーンを思い出す。
それ以来、ユキは時々、思わぬところで兄の霊を見るようになった。
そんなことで、コンセントとプラグというキーワードがユキに、現実と異世界を行き来することを連想させて、ユキの胸中を駆け巡る。そしてユキの人生は歪んでゆく。
映画は、謎の特殊清掃員のほかに次の登場人物を用意し、混乱しながらも能力に覚醒し出すユキの不可思議なストーリーを織り成し始めます。
◆国貞教授‥‥大学時代の心理学ゼミの先生でユキと関係を持っていた教授。(兄の死後、ユキは国貞の元に通い精神カウンセリングを受けているが‥)
◆本田律子‥‥当時ユキと同学年だったゼミ生でその後、社会人学生となってシャーマニズムの研究をしている。(ユキの兄の死後、ユキと偶然出会い、かつて以上にユキに興味を抱く、なぜ?)
◆ゼミ先輩の山岸‥‥本田律子の夫で精神科医。ユキに示唆を与える。大学時代からユキが好き。
◆バーのママ‥‥本田律子がユキに紹介した人物。ユキは「人は何かしら信号を出しているもの」と言ったママの発言が忘れられない。
総じて、原作の世界観をなんとか取り込もうとする努力は伝わらなくは無いが、木に竹を接いだ感じが否めない。
監督:中原俊|2001年|113分|
原作:田口ランディ|脚色:奥寺佐渡子|サイコドラマ演出:田村孝裕|撮影:上野彰吾|
出演:朝倉ユキ(市川実和子)|その兄の朝倉貴之(木下ほうか)|特殊清掃員(斎藤歩)|ユキと付き合うフリーカメラマンで癌が発覚する木村(本村淳)|国貞教授(芥正彦)|本田律子(つみきみほ)←上記の「ルームロンダリング」でも出演|その夫の山岸(小市慢太郎)|バーのママ(りりィ)|ほか
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