映画「國士無双」(1932)  監督:伊丹万作

上
片岡千恵蔵 27歳、山田五十鈴 14歳

昭和の一桁ごろの映画といえば、チャンバラ劇。
忠臣蔵、鞍馬天狗、忍術なんていう時代劇が一世風靡の時代。
当時は、不況や戦争といった風すさぶ世だけど、映画館の中は楽しい。チャンバラは気分がスカッとする。
剣術達人の主人公に、自分を重ね合わせ、たちまち勢いづいて街を闊歩し、気が晴れる。

そんななか、ゆる~い喜劇映画の「國士無双」。
どれも同じようなストーリーの映画はそろそろ見飽きた。
映画を撮るなら(当時の)現代感覚でリアルにドライに、あるいは、行き詰まった世相がそうさせるのか、斜に構え、ちょいと悪戯っぽく何か逆らってみたい。

「國士無双」に、真面な真剣勝負シーンはない(と勝手に思う)
伊勢守という天下の剣術達人は、実は弱い。一見弱そうな無頼な素浪人(片岡千恵蔵)がなんと素手で勝つ。剣術達人の(深窓の)娘(山田五十鈴)と素浪人、普通じゃ出会えない二人の純な愛。

伊丹監督の、悪戯っぽい くすぐり喜劇の本領が観れるシーンはこんなです。
ただ酒呑みたい末の悪だくみする浪人たちと、それに乗せられ伊勢守に扮することとなった素浪人の三人が、我は天下の伊勢守だと大嘘を言い、高級料亭大座敷で、芸者を招いての豪遊シーン。(ツケでしょう)
時代劇の核心、肝心の伊勢守と素浪人との対決シーンも、おおいに くすぐり喜劇。

「國士無双」は尺84分の作品だったらしい。けれど、現存のフィルムは24分
こりゃまるで、1/4しか無いジグソーバズルのピースから全体の絵を想像する感じ。
ネットフリックスで観れる映画は24分。新たに見つかった映像を追加し制作された長尺版 らしい。(NFC復元版は21分) 

中1

「國士無双」のストーリーは?
(ウィキペディアでどうぞ、飛んだ先のページの下の方です)
https://ja.wikipedia.org/wiki/國士無双

中2

「國士無双」は、もちろんサイレント映画。ネットフリックス版では、弁士は品が無くうるさい。仙人(伴淳三郎)のシーンでは、伴淳三郎の声色で語る。

ちなみに、伊丹万作監督の戦国奇譚 気まぐれ冠者(1935年)は絶品。
【宣伝】いつかそのうち、1930年代の邦画特集をやります。
一夜一話には「戦国奇譚 気まぐれ冠者」含め、1930年代邦画の掲載が既に28本ありましたので。(溝口健二、小津安二郎、成瀬巳喜男、清水宏などなど)

監督:伊丹万作|1932年(昭和7年)|24分|
原作・脚本:伊勢野重任|撮影:石本秀雄|
出演:伊勢守のにせ者・浪人(片岡千恵蔵 27歳)|伊勢守の娘お八重(山田五十鈴 14歳)|伊勢伊勢守(高勢実乗)|浪人甲(瀬川路三郎)|浪人乙(渥美秀一郎)|お七(白川小夜子)|仙人(伴淳三郎)|など

伊丹万作 監督の映画
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戦国奇譚 気まぐれ冠者
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國士無双



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