映画「ちょっと思い出しただけ」(2022) 監督:松居大悟
2022年07月06日 公開
いい映画です。
照生と葉(よう)の物語。
照生28歳は、ダンスチームのダンサー。演劇的なダンス作品の上演で踊っている。(池松壮亮)
葉(よう)は、都内を走るタクシー運転手。深夜勤務。(伊藤沙莉)
二人はいい関係。時々、葉は照生の部屋に泊まる。
照生は、水族館の夜間清掃のアルバイトをしている。だから、やっちゃいけないけれど、二人は深夜、水族館を二人占め。
そして、今日、2021年7月26日、照生は34歳の誕生日を迎えた。二人にとって6度目の、照生の誕生日。
しかし、葉は何の予定も無く、平常通りタクシーに乗っている。
実はこの映画、照生34歳の現在、ここから始まる。
ですが先に言ってしまうと、二人の関係は特別、ドラマチックなラブストーリーじゃない。
けれど、映画に仕立てるほどでもない話を、魅力あるものにしている仕掛けは、こうだ。
6年間に6回あった照生の誕生日、その当日だけにスポットを当てて、映画は6年間の二人の様子の推移を語る。かつ、語る順番は時系列でない。ここが肝心。
なぜなら、愛の行方がミステリアスな風味を醸しだす。
そして作品名「ちょっと思い出しただけ」の意味が、ラストを迎えて、ここで、ああ、なるほどね!と合点し、すっと観客の腑に落ちる。粋だね。
つまり、二人にとって当時は深刻なことが、時を経ればこうなると、未練含みで言えば、思いっきり野暮なわけ。そんなドツボにはまらない、シャレた脚本です。
総じて、演出、演技が、実にしなやか、実にふくよか、自然体。
監督が脚本執筆時に頭に描いただろう表情、仕草、その背景が、そのまま、撮影現場の演出時に直結している様が窺い知れる。
そして、それをまさしく実現してくれる葉を演じる伊藤沙莉、彼女が映画をさらに魅力的にしている。
いい映画です。
予告編をどうぞ
https://choiomo.com/
映画に出て来る「ナイト・オン・ザ・プラネット」
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監督・脚本:松居大悟|2022年|115分|
撮影:塩谷大樹
出演:元ダンサー照生(池松壮亮)|葉(よう)(伊藤沙莉)|葉の親友さつき(大関れいか)|照生がダンサーを諦め劇場照明係になった時の先輩( 市川実和子)|二人が行きつけのバーのマスター( 國村隼)|近所の公園で妻を待ち続ける不可思議な男(永瀬正敏)|照生の劇場でライブするミュージシャン(尾崎世界観)|二人に粋な計らいをするタクシー運転手(ムーンライダースの 鈴木慶一)|タクシー乗車の客(渋川清彦、松浦祐也、山崎将平、安斉かれん、郭智博、高岡早紀、細井鼓太)|ほか多数
「気に入ってる、最近の映画」《まとめ》
そうなんです!本当にいい映画ってなかなか無いんです。
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