映画「アカシアの通る道」 (アルゼンチン2011) 監督:パブロ・ジョルジェッリ
2022年07月26日 公開
静かな、すなおなロードムービー。いい映画です。
台詞が極限まで削られた脚本。
シーンの多くは、古いトラックの運転席と車窓のながめ。
そうなんだけど、実に細やかに心情を物語る、その魔術!
とは言っても、映像表現に頼った様子は無い。
また、俳優が美形なわけじゃない、ごく普通の感じなのですが‥。
大型トラックのベテラン・ドライバーのルベン。
彼は、伐採した原木を目一杯積んで、パラグアイから国境を越え、アルゼンチンのブエノスアイレスへ向かおうとしていた。
そしてルベンは、ひとりの女を待っていた。
雇い主から、女をブエノスアイレスまで同乗させてくれとの指示だった。
そこへ来たのが、乳児を抱えた女。一人じゃないんだ‥と、ルベンは厄介な気分。
寡黙なルベンは、独り身になってから時が経つようだ。
映画は彼の過去をほぼ説明しない。
ルベンが、女の名を尋ねたのは、乗車してからだいぶ経った頃。
名はハシンタ。親戚の家へ行くらしい。
ブエノスアイレスへの道中、彼女は電話ボックスから電話し、なにやら涙を流している。
しかし映画はハシンタのことを、それ以上語らない。
そして、ロードムービーに定番であるようなドラマも無く、トラックは無事ブエノスアイレスの市内に入り、ハシンタの親戚の家の前に着く。
あとは予告編をご覧ください。(と、素気無く言う)
ですが、いい映画ですよ。
以上たったこれだけを描いて、この映画はルベンとハシンタの心の動きを、実に雄弁に語るのです、驚異です!
予告編をどうぞ
https://www.youtube.com/watch?v=H7v2pQ-uWLc
一点、気になること。
タイトル「アカシアの通る道」。アカシアは樹木だ、歩けない。
アカシアの花言葉は、秘密の恋らしい。
だから、アカシア=秘密の恋が、トラックに乗ってブエノスアイレスへ行く道を通る、とタイトルは言いたいのだろう。
原題:Las Acacias
監督:パブロ・ジョルジェッリ|アルゼンチン・スペイン|2011年|87分|
脚本:パブロ・ジョルジェッリ、サルバドール・ロセッリ|撮影:ディエゴ・ポレリ|
出演:ルベン(ヘルマン・デ・シルバ)|ハシンタ(ヘーベ・ドゥアルテ)|ほか
パブロ・ジョルジェッリ監督の映画
【 一夜一話の歩き方 】
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