映画「声優夫婦の甘くない生活」 (イスラエル2019) 監督:エフゲニー・ルーマン
2022年09月25日 公開
ソ連(ロシア)で、ながらく声優をしていたヴィクトルとラヤ、このユダヤ人夫婦の話。
イスラエル製作の、憂いあるコメディ作品です。
ソ連(共産国)でも、ハリウッドはじめ欧米映画が、これまで数多く上映されて来て、特に、主役スター俳優の、魅力ある吹替えが必要でした。
この需要に応えてきたのが、この夫婦でした。英語タイトル:Golden Voices
ところがソ連崩壊がはじまるを機に、二人は1990年、イスラエルに移民しました。
当時、ソ連からイスラエルへ移民するユダヤ人はとても多かったのです。※下記参照
話は、ここから始まります。
しかし、移民して分かった事、それは、ロシア語吹替えの映画の仕事がない。
なぜなら、みな、移民後の生活立ち上げでアクセクしていて、映画を観るどころじゃなかったのです。
結局、最初に仕事にありついたのは、妻のラヤでした。
その仕事とは、テレフォンセックスの、声だけのアルバイト。
雇った女社長は、ラヤが声優とは知らず、でもラヤのGolden Voicesを聞き逃さなかったのです。
はじめ、相当、躊躇していたラヤも、徐々にベテラン声優のキャリアを活かしていきます。働き甲斐が芽吹く。
稼ぎは良く、夫婦でレストランで食事をするほどの余裕。
しかしラヤは、このアルバイトの仕事内容を夫に秘密にしています。
一方、夫のヴィクトル。
仕事を探せど、結局、街頭の張り紙貼りの仕事しかなく、男の甲斐性が‥‥辛い日々。
ですが偶然、ヴィクトルも仕事を見つけます。
そこはビデオレンタルショップ。えっ?
その仕事は、やっちゃいけない、映画館での盗撮映像に吹替えをつける裏の仕事。最新作は売り上げが大いに望めるのです。
妻のラヤは、夫を制しますが、結局二人でやることに。
女社長は、夫婦がベテラン声優と知って大喜び。なぜなら、今までは自分たちがやっていたのですから。
ただし、ソ連でやっていたような吹替え前の仕込みや準備期間が全くない、ぶっつけ本番。そのうえ、台本は素人が書いたものという乱暴な仕事。
隣の席で真剣なヴィクトル。(下記画像)
なにしろ吹替え前に、事前にその映画を観れるのは、この時だけ、なのです。
しかし、ついに盗撮する映画館の館主にバレます。
そりゃそうでしょう、ロシア語吹替えの新作の上映売り上げが、がた落ちなのですから。
さあ、ここに来て、夫婦を救ったのは、その映画館館主でしたが‥‥。(その話は観てのお楽しみ)
一方、テレフォンセックスのアルバイトを続けていたラヤに、固定客がつきます。
そして、ラヤに会いたいと願うその男と、その男を陰からそっと見てみたいラヤは、さて、どうしたか‥‥
そして、ついに夫にアルバイトがバレる。
さあて、そのあとは、如何に!
予告編をどうぞ
移民を対象にしたヘブライ語講座シーンから始まります
移民を対象にしたヘブライ語講座シーンから始まります
https://www.youtube.com/watch?v=5Qe4BOk2aNc
5つの重要シーンをどうぞ
https://longride.jp/seiyu-fufu/
本作は、サタジット・レイ監督の「ビッグ・シティ」(インド1963)や、アキ・カウリスマキ監督の「浮き雲」 (フィンランド1996)をヒントにしているように思う。
ちなみに、やっちゃいけない映画作品コピーは、中国を舞台にした「キング・オブ・ペキン ~父と子の物語」(米2017)が面白い。
※この映画の背景
ソ連崩壊時期にイスラエルへ移民する、ソ連のユダヤ人について。
◆崩壊前後のソ連からイスラエルにユダヤ人が大移動 (日本記者クラブの記事から)
https://www.jnpc.or.jp/journal/interviews/33074
◆イスラエルにおけるロシア語 (ウィキペディアから)
ロシア語は、イスラエルの様々な場面で目にすることができる。
ロシア語はイスラエルの非公用語としては群を抜いて用いられており、政府や企業はロシア語表記を併用し、ロシア語圏からの移民が多い一部地域では準公用語として扱われている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E3%83%AD%E3%82%B7%E3%82%A2%E8%AA%9E
原題:קולות רקע Golden Voices
監督:エフゲニー・ルーマン|イスラエル|2019年|88分|
脚本:ジブ・ベルコビッチ、エフゲニー・ルーマン|撮影:ジブ・ベルコビッチ|
出演:夫 ヴィクトル・フレンケル(ヴラディミール・フリードマン)|その妻 ラヤ・フレンケル(マリア・ベルキン)|テレフォンセックス屋の女あるじ デヴォラ(エヴェリン・ハゴエル)|テレフォンセックス屋でラヤの声に魅せられた客ゲラ(アレクサンデル・センデロヴィッチ)|声優夫婦を救う映画館主シャウル(ウリ・クラズナー)|ほか
【 一夜一話の歩き方 】
下記、タップしてお読みください。
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