映画「潤の街」 (ユンの街) 監督:金佑宣
2022年09月15日 公開
潤子と雄司のラブストーリー。
舞台は大阪の鶴橋あたり。
高校生の潤子16歳は、在日コリアン三世。
潤子は、母の利代(李麗仙)が鶴橋で営む、お好み焼屋を手伝っている、看板娘。
雄司は大きな家の長男。進学するでもなく、浪人状態で工事現場のアルバイトをしている。
そんな様子を雄司の母親は心配している。横浜から叔父が来て、苦言の末に、横浜に来ないかと言われた。(父親は他界したらしい)
そして叔父はもう一つ雄司に言った。外国人と付き合ってるらしいが、やめておけと。
一方、潤子の父親も、潤子が日本人の雄司と付き合うことを良しとしない。帰れと、雄司は殴られた。
そんな潤子と雄司のラブストーリーを笑顔で支えるのは、潤子の母の利代(二世)と、祖母(一世)。
映画は、潤子が在日である故のあれこれを映画シーンに盛り込み、また祖母の口からは、一世のこれまでの苦難の人生を、潤子に話すかたちで、観客に伝えている。
ラストは、新幹線の新大阪駅プラットホーム。
結局、雄司は横浜の叔父の世話になるらしい。
雄司は潤子に言う。向こうで一段落したら、呼ぶよ、と。
やがてドアが閉まる。笑顔で別れる二人。
観ておいていい映画。
本作品は、邦画のジャンルに入れるより、広い視野でみて、日本製作のコリアン映画(つまり洋画)に位置づけされるのが自然。
潤子の祖母が若い頃(戦前)、夫と一緒に、日本のあちこちの土木工事の作業現場で働いたと、潤子に語る。まさしく、そんなシーンが清水宏監督の「有りがたうさん」(1936年)に出て来る。
ちなみに、日本製作のコリアン映画というジャンルを掲げるなら、崔洋一 監督の「月はどっちに出ている」、李学仁 監督の「異邦人の河」が思い浮かぶ。
監督:金佑宣|日本|1989年|100分|
脚本:金秀吉、金佑宣|撮影:金徳哲|
出演:潤子(姜美帆)|雄司(田中実)|利代(李麗仙)|貞順(初井言栄)|チョンテ(佐藤允)|光秀(井川比佐志)|ほか
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(兵庫・和歌山・奈良も含めました)
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