映画「素足の娘」 監督:阿部豊 主演:南田洋子

上

どうってこと無いが、素直な映画。
佳作とまでは言えないが、テンポが良い喜劇風味な作品。南田洋子が演じる地味なロマンス。

時は昭和30年代はじめ。
話の舞台は、広島県尾道の、海(狭い尾道海峡)を挟んで、目の前にある向島という名の島。大きな造船所がある。

桃代18歳(南田洋子)は早くに母を亡くし、長崎の叔父の家で育った。しかしその叔父が死んで、桃代の居場所がなくなってしまう。
そこで、向島の造船所で庶務をしている桃代の父親(大坂志郎)が、父子で生活しようと桃代を向島に呼び寄せた。

中

小間物屋の二階の貸間で父娘の生活が始まる。ここらあたりから話は始まる。

向島は造船所の企業城下町、若く乱暴な工員たちが大勢いる。
そんななかで、桃代は造船所内にある従業員食堂の給仕係の一員として働き始める。

桃代は、少々おてんばの中卒、長崎でそこそこ世慣れしたが、根はすなおな女の子。
一見、南田洋子のアイドル映画のように見えるが、吉永小百合なんかが、いつも演じる初心な女性じゃない設定にリアルを感じる。

また、昭和30年代はじめ、今から65年以上昔の、造船所で働く男たちの粗野な振る舞い、男女の隠さぬ性愛を物語る映画でもある。
桃代に下心を抱く造船所の父親の同僚たち、そして造船所の工員たちと盆踊り、桃代の父親に恋する小料理屋の女将。
これらに加えて、父親の見合い話、楚々としたきれいな新しいお母さん。そして小料理屋の女将の嫉妬。
ただし表現は小ざっぱりして深みにはまらない。特に桃代の負けない心の演出が功を奏している。

さらには、造船所で造られた新造船はアメリカ船籍。若く男前の造船技師が留学したいがために向島一の富豪の娘と結婚などなど、この映画には時代背景含め、思う以上にたくさんのことが詰め込まれている。
観終わったあとに昭和30年代の時代の空気がにおいだす。
とにかく、今よりずっと荒っぽかったざらざらした時代。その分、勢いがあった。

そして、結局、桃代は、向島生まれの荒っぽい工員のひとり、安治(長門裕之)と愛を誓い合う。

下
安治の家は大きい。
(長屋門)の前の井戸の手押しポンプを仲良く二人で。
左は安治の母と子犬。
この子犬が二人を取り持つ縁となった。
監督:阿部豊|1957年|90分|
原作:佐多稲子|脚色:館岡謙之助|撮影:伊佐山三郎|
出演:佐多桃代=南田洋子|安治=長門裕之|桃代の父・秀文=大坂志郎|川瀬=金子信雄|秋子=渡辺美佐子|まさ子=小園蓉子|静江=利根はる恵|中里=二谷英明|ほか多数

【 一夜一話の歩き方 】
下記、タップしてお読みください。

写真
写真
写真
写真
写真
関連記事
やまなか
Posted byやまなか