映画「彼女のいた日々」 監督:アレックス・ロス・ペリー
2022年11月20日 公開
ニューヨーク市ブルックリンが話の舞台の、群像劇。
すなおで地味なナオミ(エミリー・ブラウニング)が持つ、生来の小悪魔性を、無意識に、周囲に発して巻き起こす、ひと騒動。
これを映画は喜劇にせず、というところが見どころだし、エミリー・ブラウニングがズバリ適役。
自宅の地下室を個室の仕事場にしている中年のニックが、若いナオミを助手として雇ったことで、妻アリッサが抱きはじめる、夫が浮気?と精神不安。
ニックとナオミ。ニックの仕事場で。
一方、、バディの妻ジェスが抱いた夫の浮気疑惑。
ナオミが母親に、今度の勤め先を知らせたら、「その近所に知り合いの息子が住んでるよ、あんたが小さい頃、会ったでしょ、憶えてる?会ってみたら」と言われ、親の言うままナオミが押し掛けで、バディと会ったことから始まったひと騒動。
バディと妻ジェス。夫婦の仕事場、音楽スタジオ。
そして物語は、アリッサの姉で独身のグウェンと、グウェンの秘書をしている同じく独身のサムを登場させ、二組の夫婦の沈鬱な騒動に絡んでいく。グウェンとサムは、日ごろから二組の夫婦と親しい間柄なのです。
以上、合計、この7名が、それぞれに向き合って話すシーンに、7組の組み合わせがある。(下図)
その内容は、浮気数歩手前の男の遠回しの当事者会話、夫が浮気?の妻たちの苦悩、夫婦間の沈黙・いがみ合い、そして、この騒動に触発されてか、女たちの自身の人生の苦悩や劣等感についての会話。
総じて一番ニュートラルな態度を示すのは聞き上手なサム。意外と理性あるバディ。一番つらい思いは、メンタルヘルス・コンサルティングを仕事にしているアリッサだった。
しかし、こうなったのは、必ずしもナオミのせいじゃない。
実は、この7名それぞれの会話が、この映画の中身なのです。まさしく群像劇。
通常のドラマじゃ、「あえて」ここまでやらない。本作はここまでやってたどり着く、人間の心の真相を描く。
本作と比べれば、普通のドラマは表層的でステレオタイプな処理だな。その分、分かりやすく娯楽で観れる。
つまり、本作は観たい人だけが観る映画です。
予告編です
https://www.youtube.com/watch?v=bGAV3rUqB0c

オーストラリアから来た20
歳代、居場所を転々として
いる飄々とした自由人

自宅の地下室で遺品整理の
請負稼業、ナオミを助手と
して短期で雇った

ニックの妻、メンタルヘル
ス・コンサルを自営、子供
なし

小さな音楽スタジオ経営主
ナオミの母の知人の息子、
20年昔に一度会っているが

バディの妻、夫婦でスタジ
オを切り盛り、かつてスタ
ジオの助手していたのが縁

ニックの妻アリッサの姉、
独身の40歳台、自身の生
き方の過去未来に悲観的

アリッサの姉グウェンの秘
書をしている、行動的思考
の人で冷静
ジェスとサム
サムとグウェン
ニックとアリッサの夫婦。
もう、ナオミはオーストラリアへ帰国した。
起き上がり小法師のように、夫婦のヨリが戻り始める‥
もう、ナオミはオーストラリアへ帰国した。
起き上がり小法師のように、夫婦のヨリが戻り始める‥
原題:Golden Exits
監督・脚本:アレックス・ロス・ペリー|アメリカ|2017年|93分|
撮影:ショーン・プライス・ウィリアムズ
出演:ナオミ(エミリー・ブラウニング)|ナオミの雇い主ニック(アダム・ホロヴィッツ)|ニックの妻アリッサ(クロエ・セヴィニー)|アリッサの姉グウェンドリン(メアリー=ルイーズ・パーカー)|グウェンドリンの秘書サム(リリー・レイブ)|音楽スタジオのバディ(ジェイソン・シュワルツマン)|バディの妻ジェス(アナリー・ティプトン)|ほか
【 一夜一話の歩き方 】
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