映画「ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択」  監督:ケリー・ライカート

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ここは、カナダ国境に接するモンタナ州というところ。人口密度がとても低い。
広大な荒野に、時折貨物列車が通る時に、やっと人の気配を感じるくらいだ。

そんな風景のなか、作り手は、三つの話に登場する四人の女性の、それぞれの心中に焦点を絞る。

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ローラ・ウェルズ
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ジーナ・ルイス
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ジェイミー
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べス・トラヴィス

中1
ローラ・ウェルズは街で弁護士事務所を開く独身女性。
そのローラに、無理な弁護を依頼する初老の男フラーは、妻に家を追われ行き場がないとみえて、ローラにまとわりつく厄介な男。
もちろんローラは、フラーを追い払うが、そのシツコさに根負けして、時々、仕方なく向き合ってあげている。
しかしフラーは、自分の怒りを、法律上の制度が取り合ってくれないことが、どうにも腑に落ちなくて、人質を取って立てこもるが‥。


中2
ジーナ・ルイスは、地元の中小企業の経営者だ。
夫は会社の部下、娘もいる。
そんなジーナが、家を新築したい。
そのために、荒野の中にあって、目星をつけている あの古い石材を、おもむきがあるので、ぜひ使いたい。
しかしその石材は、親の代からその地に住む老人の敷地内にある。
ジーナは、老人から、それをつっけんどんに買い取ることを嫌い、なんとか温かい関係で譲り受けたい。
だが、同伴した夫はドライに買い取ることを考えている、このちょとした意見の相違をジーナは気に入らない。


中5
馬を相手に牧場で働く女ジェイミーは、冬だけの期間雇用のようだが、手慣れた仕事ぶり。牧場主の姿はない。
毎日一人で黙々と仕事に励む、何の不満もなく充実した日々。
そんなある夜、ジェイミーはいつになく、明かりが点いて人が集まる分校が気になった。
教室の後ろの席にそっと座って何が始まるのかと、見守っていると、一人の若い先生が現れる。
その先生はべス・トラヴィスというジェイミーと同世代くらいの女性。4時間かけて法律を教えに来た派遣教師であった。
ジェイミーは法に関心があるでなく、ただ、教師べスに関心があるようだ。
駆け出しの弁護士べスと、牧場で働くジェイミー。このふたりに何があるでなく、短い日々の様子を映画は語る。
中3


以上3話は、どれも物語の始まりでしかない。
ローラは、経験豊かな弁護士で地元で一目置かれている。
「でも、私は女だから、男の意思にあらがえないで押し込まれてしまうことがある」と独り言。
そんなローラは、出所後のフラーにどういう態度を示すのか‥。

ジーナは、生きるに自信があるように見える。
しかし、会社の部下でもある夫との関係は、家庭にも持ち込まれる、そうなってしまう夫婦。

牧場のジェイミーは、牧畜が自身に合っている様子。
駆け出しの弁護士べスは、これからの人生の成功目指して一生懸命中。
ジェイミーの、べスに対する気持ちはどうなんだろうか、そしてふたりは別れるのか。

そんな3話だから、この映画に起承転結の結は無い。と言うより、「起」しかない。
まるで連句の最初の句だけの映画と思った方がいい。あとは、観る者が物語をつくる。
あるいは鑑賞を、自分と作品との楽しいやりとり、とみるならば、この映画は、しりとりゲームだよ。

視点を変えれば、ま、勝気な監督は、観る者へ挑戦状を送り付けている。
お前は漫然と観てそれで終わりかよ、それでとやかく言うやつはいらない、と。
あるいは、これまでの作品では物語を説明し過ぎたと思っているのかも。

とにかく、監督は原作から何を引き出そうとしているのか、これが見どころ。

予告編です
予告編 決め
https://www.youtube.com/watch?v=Bfnrfl7pvr8


原題:Certain Women
監督・脚本:ケリー・ライカート|アメリカ|2016年|106分|
原作:マイリー・メロイ|撮影:クリストファー・ブロベルト|
出演:弁護士のローラ・ウェルズ(ローラ・ダーン)|ローラの問題顧客ウィリアム・フラー(ジャレッド・ハリス)|ジーナ・ルイス(ミシェル・ウィリアムズ )|その夫のライアン・ルイス(ジェームズ・レグロス )|牧場で働く女ジェイミー(リリー・グラッドストーン)|弁護士で派遣教師のべス・トラヴィス(クリステン・スチュワート )|地元の老人アルバート(ルネ・オーベルジョノワ)|ほか
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やまなか
Posted byやまなか