映画「青べか物語」 監督:川島雄三
2023年03月25日 公開
話の舞台は千葉県、東京湾に面する浦粕。
浦粕とは、架空の地名で場所は浦安。
およそどんな話かは、原作が山本周五郎の「青べか物語 」(1960年)ですので、下記青空文庫で原文が読めますので……
https://www.aozora.gr.jp/cards/001869/files/57574_63587.html
ですので、今ここでは筋書きは横に置いて、注目は1962年当時の浦安(浦粕)の風景。
とりわけ、果てしなく広がる干潟(ひがた)※に目が行く。
ここは東京湾の最奥部、江戸川(話では根戸川)の河口付近の海の浅いところ(三番瀬)。
※干潮時に干上がり、満潮時には海面下に沈む潮間帯。砂質または砂泥質の浅場がひろがっている場所
ですが、物語が終わったのち、1965年から埋め立てが始まった。今じゃ、ディズニーランドの下。
話は戻って、映画ですが。
どうも違和感がある。
脚色の新藤兼人と、監督演出の川島雄三との間で、連携が取れていない感じがする。
それは何かというと、片方がアクセル踏み込むも、片方がブレーキ踏んでいる互い違いな感じ。
例えば、漁師町浦粕の威勢のいい人々が登場するが、これを新藤兼人のエネルギッシュな喜劇にするなら「強虫女と弱虫男」風にでもなるだろうし、そうじゃなく人々の内面を描くなら「裸の島」のように、コツコツ描くことも。
一方、例えば漁師町浦粕の元気いっぱいの人々と、これに振り回される男を群像劇にみたてるなら、川島雄三の喜劇映画「貸間あり」、コツコツ描くなら「洲崎パラダイス 赤信号」。
つまり、この「青べか物語」は、新藤兼人、川島雄三、互いの喜劇悲劇の技が、うまく協力せず、結果、打ち消し合っている感が拭えない。
大勢の俳優陣はみな実力ある方々ばかり。惜しい。
ちなみに言い忘れたが本作はカラー映画です。
それと、アニエス・バルダ監督の「ラ・ポワント・クールト」 (フランス1954)は、「青べか物語」と同じような海べりの話。
監督:川島雄三|1962年|100分|
原作:山本周五郎|脚色:新藤兼人|撮影:岡崎宏三|
出演:先生(森繁久彌)|おせいちゃん(左幸子)|五郎ちゃん(フランキー堺)|五郎ちゃんの二番目のヨメ(池内淳子)|芳爺さん(東野英治郎)|ほか有名俳優多数
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