映画「声もなく」(韓国2020) 監督:ホン・ウィジョン
2023年04月15日 公開
本作は、やくざ映画ではないですが、犯罪組織の末端で、生活の糧を得ている人(ヤクザじゃない人)の日常を淡々と描きます。
さらにそんなストーリーのなかで、もうひとつのテーマである、主人公の青年、テインに芽生えた「慈しみの心」を、ていねいに描き出します。
むしろ、こちらがメインテーマかもしれません。
注目すべき監督です。
テインは、広々とした田園風景の中、人けの無いところに建てた、ビニールハウスのような小屋にポツンと住んでいる。
テインは耳は聞こえるが口がきけない。(おそらく、聴唖=発達性運動性失語か)
そんなテインは、チャンボクという男の下で働いている。
それは、軽トラックに乗っての、タマゴの移動販売。これが表向きの稼ぎだ。
(テインは車に乗ると、いつもすぐ寝てしまう)
そして本業は、ヤクザ組織が、抹殺したい男をロープで釣り上げ、リンチしたあとの「後始末」。
つまり、その死体をおろして林間に埋める事後処理の請負仕事。
チャンボクはキリスト教信者のようで、この仕事が終わる時に、必ず聖書の一説を唱える。
さて、話は、組織のボスからチャンボクに、人を(生きた人間を)いっとき、預かってくれと強要されたことから、展開し始める。
指定されたところへ行くと、なんと、その人とは女の子であった。
誘拐されて、そこに かくまわれていたのだが、親が身代金を払おうとしないのだった。
テインは、チャンボクに「この子はお前の家で世話しろ」と言われ、渋々、その子、チョヒ11歳を自宅に入れた。
ところが、ある日、頼んだボスが、釣り上げられリンチされ死体となった。(組織内下剋上か)
誘拐したボスがこの世を去り、この子チョヒをこのあとどうすればいいのか、誰も知らない。チャンボクは悩んだ。
そんな宙に浮いた状況のなかで、テインの家では‥‥
テインには年の離れた幼い妹がいた。まるで自然児、躾されたこともない、学校へ通ったこともない子。
チョヒは、その子に対して、まるで姉のように接するようになった。
荒れた部屋で、三人の奇妙な生活が始まった。
さあ、この先は見てのお楽しみ。
誘拐を生業にする二人の男と、子供の臓器を売買するビジネスへ子供を提供する夫婦が登場してきますが、テインは‥‥。
ちなみに散発的ですが、コミカルなパウダーをまぶしたシーンもお見逃しなく。
予告編をご覧ください。
冒頭に監督のメッセージがあります
冒頭に監督のメッセージがあります
https://www.youtube.com/watch?v=-x8vcApL32I
原題:소리도 없이|Voice of Silence
監督・脚本:ホン・ウィジョン|韓国|2020年|99分|
公式サイト:https://koemonaku.com/
撮影:パク・ジョンフン
出演:テイン(ユ・アイン)|チャンボク(ユ・ジェミョン)|チョヒ(ムン・スンア)|ほか多数
【 一夜一話の歩き方 】
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