映画「殺し屋たちの挽歌」(英1984) 監督:スティーブン・フリアーズ
2023年09月15日 公開
犯罪アクション映画じゃないので、よろしく。
この映画は、世間から、はみ出した4人が、スペインを走り抜け、パリへ行くはずのロードムービー。
ですが、この4人は、互いに知り合いじゃない。
そのうちのひとりは、拉致された男パーカー(左端)。そして彼をパリに送り届ける役目の黒メガネのブラドック、その助手として雇われた若いチンピラのマイロン、そして旅路の途中でこの犯罪に巻き込まれてしまった女マギー。




さて、なぜパーカーは、拉致されたのか。
彼は10年前、強盗を働いたが、裁判で司法取引に応じ、強盗メンバーを裏切った過去を持つ。(これが映画冒頭シーン)
その後、パーカーはここスペインで、ひとり快適な隠居生活を送っていたが、刑を終えた強盗仲間の復讐が、ついに始まり、彼はパリへ連行され殺される予定。
しかし、パーカーはいつか来る、こうした死への行進を予期していたのか、表情は案外、明るい。
信仰心が芽生えたか。心に余裕があるせいか、パーカーの心は、同乗者3人それぞれの境遇の外の世界にいて、3人を観察し彼らに助言さえ言う。
そのパーカーをパリまで護送するのが、プロの殺し屋ブラドックだが、彼には何やら暗い影があり、無常観すら感じさせる。
そしてブラドックの助手として臨時雇いのマイロンは、喧嘩っ早い軽率な男。俗世間に生きている。
それから、途中マドリッドで加わった(拉致された)マギーは、浮遊する一種、謎の娘。
とにかくこの映画は、4人4様の、彼らのロードムービーだ。
パーカーが、ブラドックにマイロンにマギーに対する思いが3つあるように、同様に他の3名それぞれが他の3人への思いがある。映画はこれら合計12の思いをていねいに描き分けている。ここが一番のみどころ。
もちろん、この4人の間に、いざこざは幾度もあり、一方で、ブラドックはパリへ向かう中、マドリッドでマギーの彼氏を射殺し、さらにはロードサイドのガソリンスタンドの男も殺した。それらを糸口に警察は捜査に入り、彼らを追う。
あとは観てのお楽しみ。いい映画です。
https://www.youtube.com/watch?v=xyNVTkemjgQ
映画冒頭に流れるクラプトンのギター、またパコ・デ・ルシアのフラメンコギターもお聞き逃しなく。
原題:The Hit
監督:スティーブン・フリアーズ|イギリス|1984年|94分|
脚本:ピーター・プリンス|撮影:マイク・モロイ|テーマ曲:エリック・クラプトン|
出演:パーカー(テレンス・スタンプ)|ブラドック(ジョン・ハート)|マイロン(ティム・ロス)|マギー(ローラ・デル・ソル)|他
【 一夜一話の歩き方 】
下記、タップしてお読みください。
- 関連記事
-
-
映画「オールタイム・ハイ」(仏2023) 監督:ジュリアン・ロイヤル 2023/11/19
-
映画「ザ・マーダラー 殺人犯は誰だ!?」(タイ2023) 監督:ウィシット・サーサナティヤン 2023/10/25
-
映画「初恋」(香港1997) 監督:エリック・コット 2023/10/15
-
映画「ライフ・アフター・ベス」 監督:ジェフ・バエナ 2023/10/05
-
映画「パリの調香師 しあわせの香りを探して」(仏2019) 監督:グレゴリー・マーニュ 2023/09/30
-
映画「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」(米2022) 監督:ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート 2023/09/25
-
映画「THE CROSSING 香港と大陸をまたぐ少女」(中国2018) 監督:バイ・シュエ 2023/09/20
-
映画「殺し屋たちの挽歌」(英1984) 監督:スティーブン・フリアーズ 2023/09/15
-
映画「ガンパウダー・ミルクシェイク」(仏・独・米2021) 監督:ナボット・パプシャド 2023/09/10
-
映画「ショック・ドゥ・フューチャー」(仏2019) 監督:マーク・コリン 2023/07/15
-
映画「ハブ ア ナイス デイ Have a Nice Day」(大世界) 監督:リウ・ジエン 2023/06/25
-
映画「エル プラネタ」(アメリカ・スペイン) 監督:アマリア・ウルマン 2023/06/20
-
映画「タイムシェア」(メキシコ) 監督:セバスティアン・ホフマン 2023/06/15
-
映画「ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ」(中国2018) 監督;ビー・ガン 2023/06/10
-
映画「ジャックフルーツが行方不明」 (インド2023) 監督:ヤショバルダン・ミシュラ 2023/06/05
-