映画「THE CROSSING 香港と大陸をまたぐ少女」(中国2018) 監督:バイ・シュエ

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「香港と大陸をまたぐ少女」とは、16歳の普通の高校生ペイ。
毎日、中国の深圳(しんせん)から、香港にある私立高校へ、出入境検査場を通過して通学している。

つまり、ペイの家は中国、持ってるIDは香港。
それは、中国出自の母親がペイを香港で生んだからで、その後、両親は離婚、現在、香港出自の父親は香港でトラック運転手、母親は中国のマンションで、ペイと、そこそこ不自由なく生活している。
(たぶん、両親が出会ったのは、香港が中国の特別行政区になった1997年以前かな、と思って観た)

中1

ペイの親友はクラスメイトのジョー。ふたりは、いとこ同士。
つまりペイの母親とジョーの母親は姉妹だけれど、ジョーの家には素敵なプールがある、凄い豪邸。
(ジョーの父親も香港出自の人だろう)

ペイとジョーは、ちょっと悪仲間。
ふたりは日本へ旅行して温泉に入りたい。
ジョーは金持ちの娘だが、ペイはバイトして旅行資金を貯めている。でも、二人は、富の差を気にしないフランクな関係。

中2

さて、ここから物語は動き始める。
ある日、ペイは香港の高校からの帰宅時に、香港と深圳の境の、出入境検査場で、混雑の中、中国側へ密輸入しようとする男を見かけた。それを察知した検査場の係官。
係官たちから逃げる、その見知らぬ男は、咄嗟に、通りすがりの制服姿のペイにある物を無理やり手渡した。それは密輸品の数台のiPhoneだった。
ペイはその時知らなかったが、その密輸組織の一員ハオは、実はジョーの彼氏だった。
ペイの服装がジョーと同じ制服だったことが、この物語の出発点。
あとは予告編で、どうぞ。

予告編 決め
https://www.youtube.com/watch?v=BOzQKUttqV4

中4


総じていえば、凄い作品じゃないですが、最後まで観通せます。
観る者に、香港、中国の、色々のことを思わせる映画です。
惜しむらくは、主人公ペイの人物表現がいささか薄っぺらい。それを今風のサラッとした表現なんだとも思えるが。
一方で、どういう方向にせよ、何かしら、ペイの心情により深みを付けるとすれば、結果、検閲に忖度、の面倒さを抱え込むことになるのかもしれない、なら、それを避けたとも思った。
密輸組織のアレコレやら、ペイとハオの愛を多く語った方が楽だし、観客は喜ぶ。

ちなみに、我々外人には、観ているそのシーンが香港なのか深圳なのか、分からないことがあった。
たとえば、密輸組織の拠点は香港、深圳の両方にあるのが、後になって気づいたり。

それから、ついでに言うと、フルーツ・チャン監督の「ドリアン ドリアン」(2000年)。(ブログ内リンク)
本作「香港と大陸をまたぐ少女」と同様に、香港、深圳をまたぐ女の物語だが、時代も違うし、作り手の視点も違うが、観ておいて損はない。


原題:過春天 The Crossing
監督:バイ・シュエ|中国|99分|2018年|
脚本:バイ・シュエ、リン・メイルー|撮影:プー・ソンリー|
出演:ペイ(ホアン・ヤオ)|学友でいとこのジョー(カルメン・タン)|密輸組織の一員ハオ(スン・ヤン)|ほか

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Posted byやまなか