映画「約束」 監督: 斎藤耕一
2011年04月21日 公開

行きずりの愛。すれ違いざま、の愛。3泊4日の愛。
話が進むうちに、男は、女との時間がとても制約されていることが分かってくる。
女は、3泊4日の仮出所の身である。
女の刑期は、まだ2年残っている。
女は、明日の夜9時までに刑務所に戻らなければならない。
刑務所の門でふたりが分かれる時に、2年後の再会を約束する。ふたりが出会ったあの公園で。
男は、女との出会いの後に、人を刺していた。(女は知らない)
男は、ただちに指名手配されていた。
男は、刑務所の門で女と別れた直後に、逮捕された。(女は知るよしもない)
それから2年後、女は公園で男を待っている・・・・。
男と女、中原朗(萩原健一)と松宮螢子(岸恵子)。
シーンもセリフも、このふたりのためだけにある。人物背景を省略する日本画のように、ふたりの人生背景を映画は説明しない。
1960年代的ビンテージ・オルガンの哀愁が、どことなくフランス映画風サウンドをかもし出す。冒頭、鉄道線路の映像が続く、これもフランス映画を感じさせる。そのフランス風に、岸恵子の存在が味付けする。一方、日本海の海、小さな漁港の石垣など日本的心象風景もミックスされるが違和感なし。意外と長いこうした映画導入部分で、何かしらをキャッチできないと、その後始まる物語に入り込めないかも。とにかく映画館にあわてて駆け込む、といった鑑賞態度だと、うまく楽しめない。繊細な映画です。
萩原健一は当時22歳。スター性を横に置いた演技が、いさぎよい。素直に言えば、田舎のあんちゃん味がいい。
今からみれば、幼い。その危うい幼さが功を奏した。役者、一生に一度、その時だからこそ、できたという演技がある。萩原健一、この映画。


出演:岸恵子(松宮螢子)
ケイコのケイは、ほたるのケイ、・・・蛍光灯のケイか
萩原健一(中原朗)
アキラの字は、ほがらか
南美江(護送役:島本房江)1915-2010年|三國連太郎(山室刑事/裁判官/検事)|中山仁(護送犯)|姫ゆり子(女)|殿山泰司(村井晋吉)|ほか







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特集:刑務所は出たけれどの物語
「刑務所は出たけれど」という切り口で、映画を集めました。
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