映画「タクシー・ブルース」 監督:パーヴェル・ルンギン
2011年04月27日 公開

舞台はモスクワ、30歳半ばの2人の独身男の話。シュリコフ(写真左)はタクシー運転手、リョーシャ(写真右)はジャズミュージシャン。
シュリコフはタクシー仲間の間で一目置かれるベテラン、人徳もある。マジメに働いてきちんとした日常生活がモットーの模範労働者としてソ連政権時代を生きてきた。リョーシャは、その日暮らし、狂乱大好き、波乱万丈なサックス奏者。気の合うはずもない男同士が、会ってしまい、同居までする。
ことは、タクシー代もないリョーシャが、シュリコフのタクシーに乗って料金を踏み倒したことから始まる。結局、生活力のないリョーシャに情けをかけたシュリコフ。同居させて、働かせてリョーシャの人生・生活・根性の再生を促すが、本人はその気がまったくない。それでも男同士の友情は男臭くゆっくりと育まれる。
さて、マジメなシュリコフも女好き。部屋に女を呼んで二人っきりパーティ。そこへリョーシャが。シュリコフは彼にサックス吹けと命令する。フリージャズっぽいサックスが鳴り出す。この音に女が感応・官能する。このシーンがいい。
リョーシャの才能を認めるジャズ仲間が、アメリカから来たサックス奏者に彼を会わす。両者サックスソロの応酬、丁々発止。まるでプロ・テニスプレーヤー同士が初対面でコートに立ち、軽く打ち合うなかで相手の実力を探り認め合うよう。
そんなことがあって、リョーシャはアメリカに呼ばれ、コンサートを重ね有名になって帰国。帰国記念コンサートは大入り、大勢のファンが彼を取り囲む。それを見たシュリコフは衝撃を受ける。お互いの住む世界がこんなに離れてしまった。シュリコフは自分自身に、リョーシャに、どう対処すればいいのか分からない、我を失なってしまう。戸惑うシュリコフのこころに、友情と嫉妬が、喜びと怒りが激しく交錯するのだった・・・・・。
ここで一言いわせてもらえば、リョーシャ帰国後のシュリコフの心情をもっとしっかり描いて欲しかったな。観客はラストシーンへ向かうシュリコフが理解し難いし、さらには次の事実を映画最後に知らされるが・・・・・・。
その後、シュリコフはタクシー会社の社長(*)になり、ベンツを自家用車に持つ身になる。
リョーシャは、精神障害で入院治療が続く。
* ソ連解体時、政府は「今、手元にある物は、あなたの所有になる」という原則で、ソ連政権下のあらゆる公共物・権利が民営化された。それまで工場や事業所の運営を国から任命されて仕事していた人々は、無償でその工場や事業所を自分のものにできてしまった。これをオリガルヒというらしい。

原題:Taxi Blues
出演:ピョートル・マモノフ|ピョートル・ザイチェンコ|ヴラジミール・カシュプル|エレナ・サフォノヴァ|セルゲイ・ガザロフ









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