映画「日陽はしづかに発酵し・・・」  監督:アレクサンドル・ソクーロフ

メインかも・・i00-thumb この映画、夢の中をさまようような悪夢的ストーリーです。
 何となくあのことを言いたいんだなと連想させる幾つかのエピソードとその苦悩を、幻想的な心象風景で描く映像叙事詩というのでしょうか?。難しい映画です。

 あのこととは、ソ連とその属国(中央アジアのトルクメニスタン)の政治的関係。ロシア人と中央アジア諸国人の民族的宗教的関係。さらに中央アジア諸国は強制移住の地、流刑地、核実験地であり、ユダヤ人、ドイツ人、ロシア政治犯が点在して住む荒涼とした砂漠地域。このあたりについては、カザフスタン映画『ギフト・トゥ・スターリン』2008年 が分かりやすい。政治的背景を考えると1988年当時はここまでしか言えなかったのかな。20年後の映画で無知な人間でも分かる映画ができた、ということか。

 直球で言えないとなると、抽象的表現になってくる。その分かり難いこと自体が、創造的に見えたり、ミステリアス的なミラクルに見えたりして、凡人をかるーく超越して、ときに芸術になったりする。

 心象風景、その人の心に刻み込まれている風景、心の中に思い描いた空想の風景。本人には納得の心象風景だろうが、他人にはちんぷんかんぷん。経験の共有がないと基本、理解できない。ポルトガル映画「トラス・オス・モンテス」は詩人が作った映画。これも映像叙事詩。難しい映画ですが少しは分かる。それは、詩人が、その土地を愛し、寄り添うような視点を持ちながら製作しているからだ。郷里を愛する気持ちは万国共通だ。その点、「日陽はしづかに発酵し・・・」はトルクメニスタンという地を愛していない。

 『ギフト・トゥ・スターリン』はカザフスタン人による映画。カザフスタンという地からロシアを見る。先にあげた、あのこと、について語るには分かりやすい視点だ。
 
 この映画、ファンタジー的、悪夢的展開ですね。そういう心象風景的な悪夢を展開しやすい所・ロケ地は、監督の軸足ロシアから思いっきり遠い地域が良かったのかもしれない。自ずとロシアの属国地方に設定されやすい。そして監督がそう思って無くても、結果的に、ロシアからのソ連的視点で描くことになってしまう。監督の、その人の、個人的な生来が映画を左右する。

 というようなことは、脇に置いておいて、すなおに楽しみましょう。
ワイド231

sumo-ru7279.jpg監督:アレクサンドル・ソクーロフ|ロシア(ソ連)|1988年|128分|
原題:ДHИ ЗATMEHИЯ|The Days of Eclipse
出演:アレクセイ・アナニシノフ|エスカンデル・ウマーロフ

邦題は、「ず」じゃなくて「づ」なんです。


トルクメニスタンの国旗 トルクメニスタン
 1991年ソ連からの独立。カラクム砂漠が国土の85%を占める。
 西側にカスピ海、アフガニスタン、イラン、ウズベキスタン、カザフスタンの4か国と国境を接する。
 トルクメン人 (85%)、ウズベク人 (5%)、ロシア人 (4%)、その他 (6%) (2003年)
 言語:トルクメン語 72%、 ロシア語 12%、ウズベク語9%、その他7%
 宗教:イスラム教スンニ派が大多数、正教会も一部存在
 
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【 アレクサンドル・ソクーロフ監督の映画 】
 これまでに記事にした、アレクサンドル・ソクーロフ監督の作品です。
 画像をクリックしてお付き合い下さい。

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「孤独な声」
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「日陽はしづかに発酵し‥」
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「セカンド・サークル」
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「エルミタージュ幻想」
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「マリア」
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「フランコフォニア ルーヴルの記憶」


【 一夜一話の歩き方 】
下記、タップしてお読みください。

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やまなか
Posted byやまなか

Comments 1

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カヨ  

この映画、知りませんでした。いつか観てみたいです。トルクメニスタンのトンデモ独裁者について、Kさんとお会いした時に話題になりました。ちょうどカダフィのニュースが流れ出した頃です。

2011/06/09 (Thu) 13:34

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