映画「鏡」 監督:アンドレイ・タルコフスキー
2011年08月31日 公開

観る人の不幸は、難解で分からない映画なんだというスタートで、観はじめるから分からなくなる。また難解な映画を観たぜと、丸呑み満足するのは、消化してなくて悲しい。
ロシア語なんて分からなくて当然だ。ソ連なんか習ってない。字幕をすべて追えない。三重苦? 朗読される詩はお経。分からないことを恐れない。
例えば、この映画は字幕なしで映像だけでも観れる映画だ、と思った。観てみるといい。音楽を聴く感じ、未知の交響曲を聴く感じで、受身じゃなくて前に出て、映画に接してみて欲しい。
そう思いながら自分の感覚を敏感にして観ると、自然と体に入ってくる。まず質感が違うことがわかる。めったに無い映像美と自分なりの理解感がうれしい。映像の肌触りは極上シルクのように滑らか。澄んだ上品さがある。一方、背筋がシャキンとしている確かなたたずまい。このバランス感、いいな! 他に無い味わい。野暮ったさなんてどこにも無い、そうロシアっぽくない。
もう、ここであえて言語化する必要はないかも。この段階でいい映画じゃん、と言っていいと思う。

監督の経験した時空間と、暗雲垂れ込めるスターリン時代の国家としての時空間との、並列対比とアナロジー。ソ連のこれまでの記録と、監督の幼い記憶・郷愁・思い入れが、過去/現在の時を越えて行き来する。
え?行き来する? そりゃ・・・監督しか、わかんない。他人がわかるのは、その時代の経験イメージ、同時代観。ソ連の人はシッカリわかるが、日本人にはわからん。
スターリン死去の1953年前後、監督は二十歳だ。それ以前のことを描いている映画、例えば「フルスタリョフ、車を!」なんかのソ連映画を観て、当時はどうだったのか、ジワリとにじり寄って、分かったフリをしてみたい。

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出演:母マリア/妻ナタリア:マルガリータ・テレホワ
父:オレーグ・ヤンコフスキー
少年時代の作者(アレクセイ)/現代の作者の息子(イグナート):イグナート・ダニルツェフ
幼年時代の作者:フィリップ・ヤンコフスキー
医者:アナトーリー・ソロニーツィン




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