「ゴーストワールド」 監督:テリー・ツワイゴフ 自分を探す映画(5)
2011年08月27日 公開

思いや考えをたくさん盛り込んでいるんだけれど、整理しない。説明しない。主張しない、安易に解決もさせない。そんな見識の高さと、さりげなさ、引っ込み思案さが気に入っている。あらためて観てそう感じた。
自分探しに出かけるまでには、時間がかかる。
高校を卒業したが旅立てない。自分の中で何かが、ある一定まで満たされてこないと、旅立つための準備スイッチが入らない。この映画の主人公のように、とりわけ位置エネルギーが高い人は、そのスイッチが入るまでは、破裂しないネズミ花火のように火花を散らしグルグル同じところを回転している。周囲を傷つける。
さて満たされて準備スイッチが入った。次は、具体的な旅立ちのトリガー、キッカケだ。
あるキッカケに促されて自発的であったり、何かに背中を押されてということもある。その何かは偶然だったりするが、実は自分の中で気づかず潜在していたものが急に表面化してきて、そいつが背中を押すこともある。そんな瞬間は、できれば幻想的でミステリアスであってほしい。そういうチャンスに遭遇するかどうか。そしてその

イーニドの場合は、バスだった。
不思議なことに、路線が廃止になって久しいそのバス停に、そのバスが現れたのだった。彼女のためだけに。
中流の下層の白人ばかりが住むロス郊外の住宅街。父親と2人で住む主人公イーニドは高校卒業した。とりあえず何する気もない。無意味な反発心が旺盛でアウトロー気取り。地元の映画館で売店のアルバイトを始めた。

映画館客 : 酒は置いてる?
イーニ ド : 残念ね、でも保証するわ。この映画を観たらヤケ酒よ。
映画館客 : ・・・・・・目が点。
そばにいた売店上司がすかさず注意する。 (写真→)
売店上司 : 映画の悪口は言うな。ルールだ。いやなら自分で映画館をやれ。
イーニドが唯一心を許せるのは、親友のレベッカ。いつも二人。
あることでイーニドは同じ街に住む30歳過ぎの独身男性シーモアに関心を持つ。イーニドが18年間に経験した世界とはまったく違う世界を持ってるシーモア。だが外見からしてダサいし、無口、男らしくない。さて話は、疲れたような陽ざしのこの街で、このシーモア、親友のレベッカを中心に静かに展開。その日々の流れは、主人公イーニドの中で何かが満たされるのを待っている時間であった。
監督:テリー・ツワイゴフ|アメリカ|2001年|111分|
原作:コミック『ゴーストワールド』(ダニエル・クロウズ作)
原題:Ghost World
出演:ソーラ・バーチ(Enid)|スカーレット・ヨハンソン(Rebecca)|スティーヴ・ブシェーミ(Symour)|ブラッド・レンフロ(Josh)|イリーナ・ダグラス(Roberta)







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