自分を探す映画(4) 「明るい瞳」 監督:ジェローム・ボネル

メインf3aee18d2016f  先天的に精神障害を持つ主人公ファニーは幼い頃から苦労が絶えない。だから「自分は何か」という問いの答え探しは、もうとうに終えていた。残るは、場や人との出会いであった。

  兄は優しくしてくれるが、問題が起きると「病院に戻れ」と言う。言うしかない兄。なぜなら狭い家に兄夫婦とファニーが住む。兄は新妻を大事にしたい。だが妻とファニーの関係は悪化をたどる。村人と時にいざこざを起こすファニーだが、村の連中は彼女の扱いには慣れている。
  ファニーには、いつもじゃないが、もうひとつの声が聞こえる。発作が起きると黙れ黙れと自分に言い聞かせるが、黙らない、もうひとつの声。これが彼女を苦しめる。この時はイライラ感もザワザワ感もMAXになる。つい、乱暴な振る舞いをしてしまう。この突然の行為にまわりは戸惑うし、兄も振り回される。
  でもいい娘。周囲は彼女に世間についてちゃんと教えてこなかった。その上、すれてない、いわゆる天然、それも超・天然系。だからしてしまう発想や行動。これも周りには突飛に見える。障害にワシづかみされる心、開放される心。精神障害と天然の混ざり具合が、彼女を理解することを阻んでいる。そう、兄も理解できない。天涯孤独なファニーの苦悩は、実はここにある。

  兄とけんかして、ファニーは着の身着のままで車で家を出た。父親が眠る墓地を探しに。父と話したかった。夜の田舎道は暗い。ヘッドライトに照らし出される道の先は闇。ただひたすら走った。朝を向かえ彼女の心は少し晴れてくる。行く先々の村の様子を見る余裕も生まれて来る。ただしガソリンを入れて、もう金は尽きた。バーガーショップに入って隣席のバーガーを盗み食い。笑えるシーンもいくつか用意されている映画。
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  ドイツに入って森の中でタイヤがパンクした。四苦八苦している彼女に救いの手を伸べたのが、この森に一人住む男オスカー。ドイツ語しか話せない彼はファニーと会話できない。しかし元々無口な男だ。ふたりの間でドイツ語もフランス語も要らなかった。ファニーの天涯孤独が少しずつ解けていく。森や、森での素朴な日々が彼女の心を穏やかにしていくのであった。


監督:ジェローム・ボネル|フランス|2005年|87分|
原題:Les Yeux Clairs
出演:ファニー(ナタリー・ブトゥフー)|オスカー:森に住むドイツ人(ラルス・ルドルフ)|ガブリエル:ファニーの兄(マルク・チッティ)|セシル:兄の妻(ジュディット・レミー)|

ピアノ_54978403_5 森人44_54978403_5 説明_54978403_3
時にピアノが慰みに            森人オスカー        「墓地」をジェスチャー説明するため道路に寝るファニー、無口なオスカー

バスlairs
野外バス

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