映画「人生、ここにあり!」 監督:ジュリオ・マンフレドニア

全員 are-cover-dvd-10

  いい映画だ。良質なコメディです。脚本が素晴らしい。役者もいい。
  笑えます。楽しんでください。シネスイッチ銀座のお客は、みなさん静かでしたが。
  障害ある方々を笑いものにする話では決してありません。登場人物全員が作り出すドラマがコメディ仕立てになっている映画です。イタリアで実際に起きた医療・社会問題をきちんと正面からとらえながら、イタリア国外の多くの人々にも分かりやすく情報発信している作品です。

ポスターlm_Si_puo_fare---01  正義感が強く一途な男は、扱いにくいので異端児扱いされやすい。労働組合員のネッロは、本まで書いた。組合の上層部は彼の左遷先を探していた。
  一方、ちょうどこの頃、法律によって一斉にイタリア全国の精神病院が閉鎖されることになり、行き場を失った患者たちが大勢いた(1980年代)。ミラノではある精神病院の患者達を、病院付属の「協同組合180」に集め医師の下、慈善事業と称して単純作業していた。

支え31_03  主人公ネッロは1983年、ここに左遷されてきたことで、お話は始まる。
  隔離され薬漬けでボンヤリした無為な毎日を送っている患者達。ネッロがまず始めた事は、医師に断固主張して強い薬を軽くさせた。彼らは活発になり、性欲も取り戻し、仕事に創意工夫をすることも出来るようになってきた。薬を弱くし施設外の現場で作業する事態に、医師は患者が凶暴化し問題を起こすことを恐れた。確かにいろいろと事件は起きた。しかし従来受身だった患者達を自立させ事業化にこぎつけるまでになる。こういったストーリー。随所で笑わせるコメディだが、事実をもとにしているせいか、甘ったるくない。 (写真 ネッロと彼を支える彼女) 

  さて、バザーリア法。精神病院を閉じる法律が1978年にイタリアで制定。
  これによって患者は病院を出ざるを得ず、地域のグループホームや自宅から、各地にある地域精神保健センターに通院してケアを受けることになった。この映画は、その混乱初期にあった事実らしい。映画では「患者は家に帰るが、今度は家の人が気が狂う」と医者が言っている。
  予防・医療・福祉は原則として地域精神保健サービス機関が行い、治療は患者の「自由意志のもと」で行われることになった。しかし実は、隔離収容を根強く擁護する精神科医たちはたくさん残っているらしい。バザーリア派(解放派)と反バザーリア派(隔離派)はいまでも激しく争っている。
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組合所属の医師 反バザーリア派(隔離派)   バザーリア派の若手医師(写真右側)がネッロを支える



受け皿であるグループホームは、施設差、地域差があった。そのため、すべての精神病院の閉鎖完了は2000年になった。
精神病院は無くなったが、地域精神保健センターにある入院施設や司法精神病院には精神病棟がある。反バザーリア派はそれらを閉鎖的な精神病床として活用している。らしい。
また地域精神医療センターが機能不全になっている地域もあるらしく、精神病患者はホームレスになってしまう危惧があるらしい。

日本での精神病医療はどうだろうか?
ドキュメンタリー映画「精神」 監督:想田和弘 2008年  こちらからどうぞ
中国での精神病医療はどうだろうか?
ドキュメンタリー映画「胡同の精神病院」 監督:シー・ルンチウ 2002年   こちらからどうぞ


監督:ジュリオ・マンフレドニア|イタリア|2008年|111分|
原題:SI PUO FARE


反 6333  モザイク工事382B5E38396EFBC93-600x416
職場集会を聞く反バザーリア派(隔離派)の医師   施設外の現場 床の板張り、特に複雑なモザイク張りが事業化できた要因

会議scena-del-film-si-puo-fare-91116 交渉n-immagine-del-film-si-puo-fare-91118 発言01107290416
聞くだけの集会が発言する集会になった       顧客への受注営業・見積交渉  障害者というだけで断られることも多かった


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