映画「胡同の理髪師(フートン)」 監督:ハスチョロー

メインo146769  いい映画だ。
  主人公のチンさんが、すがすがしい。1913年生まれ、90歳過ぎた今も現役で仕事をなさってる。理髪店はすでにたたんでいるが、訪問サービスで馴染みの老人たちの家へ行って散髪している。チンさんは、かつては北京で名の知れた理髪師だった。胡同の老人達は、チンさんの散髪/髭剃りを楽しみにしている。今じゃ、地域の老人介護サービスだ。
  実はこのチンさん役、実在の理髪師チンさんが演じている。胡同の住民である。実在のリアリティ、存在感は俳優の演技にまさる。これがこの映画の要であり、だから素晴らしい作品になった。ちなみにチンさん以外にも胡同のご老人たちが出演している。

  さて、チンさんの息子は、定年退職して孫もいるが生活が安定してない。時々ぐちぐち言いながら、金をせびりに来る。チンさんは黙って聞いているだけ、最後にベッドの下から箱を出し現金を渡す。息子役は俳優なんだけど違和感がない。なかなかのチンじいさんです。こんな調子が映画全体にあって、このご老人の、粋で、まじめで、無駄口たたかない、すがすがしい雰囲気がこの映画の味。
  胡同地域の立ち退きも、さっぱりと受け入れる。ご老人いわく、立ち退き調査が入っているが、実際に工事が始まるまで、まだ時間がある。私はそれまで生きていないから。
  胡同の地域再開発は、老舗や街並みの崩壊、胡同に残るしきたりや生きる知恵の崩壊。

  チンさんの常連客の、あるじいさんは、胡同で一人住まい。その息子夫婦は北京の高級高層マンション住い。ある時、息子は父を自分のマンションに引き取る。息子の奥さんは老人を汚いもののように嫌う。だから老人はすぐに寝たきりになってしまった。息子は胡同の家の資産価値が気になってる。うわ言のように人の名を言うご老人。その名が理髪師チンさんだとやっと理解した息子は胡同にチンさんを訪ね、マンションに来てもらった。チンさんは黙々と散髪、髭剃りをする。寝たきり老人は、みるみるうちに心が開放されていく。つらい現実だ。もっとも、このシーンはチンさん以外みな俳優ですが。

  ポルトガルのペドロ・コスタ監督を思い出す。監督はヴァンダという実在の女性に出合って「骨」「ヴァンダの部屋」といった映画を作ることが出来た。

  映画「胡同の精神病院」・「胡同のモツ鍋店」はこちらから。

監督:ハスチョロー|中国|2006年|105分|
原題:剃頭匠|THE OLD BARBER
出演:チン・クイ|チャン・ヤオシン|ワン・ホンタオ|ワン・シャン|マ・ジンロン|トン・ジョンチ|ユウ・リピン|ソン・グァ|シュ・フェジー

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やまなか
Posted byやまなか

Comments 2

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なるほど、麦飯か、いいね。

2011/09/10 (Sat) 00:06

kayo  

この映画知ってる。でも、観たことがない。やまなかさんの感想に触発されました。やまなかさん、西麻布にある(あった?)、「胡同」という韓国料理屋さんをご存知?  キムチ鍋のシメは麦飯の雑炊。けっこう旨かったっす。韓国のお酒もマルでした。

2011/09/10 (Sat) 00:03

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