映画「米」 監督:今井正
2011年09月29日 公開

琵琶湖につぎ大きな湖、霞ヶ浦の水郷地帯が舞台。この霞ヶ浦というスケールの大きな自然を相手に、漁業や農業の毎日を送る村人たちの話。主人公の青年(江原真二郎)は農家の次男、だから次男なりの人生設計が必要だった。
ある日、一枚帆の舟で網を引く「帆引き舟」でシラウオやワカサギの漁をしている漁師(木村功)から誘いがかかった。佃煮工場のあるじが、この漁の胴元で、魚が獲れる時期だけの季節労働である。だから、それなりに大きな現金を手にする。
青年と運命的な出会いをする娘(中村雅子)の家は貧しい農家、母親(望月優子)と娘で米作り、小舟で水郷に出て、うなぎやエビを獲ってわずかな現金を得る、そんな生活。
ある日、青年と友人は帆引き舟で漁に出ていたが、風が予想以上に強かった。竹の帆柱が倒れ、舟は一瞬にして転覆した。友人は死亡し、青年は岸に流れ着いた。これを救ったのが、あの娘だった。

娘の母が夜間に密漁をして水上警察に見つかり所轄の警察署がある町へバスに乗って出向く話、 若い男達が小舟に相乗って意気ようよう夜ばいに行く話、 村祭り、 佃煮工場の様子など、シリアスな場面もあるが笑いを誘うシーンも多い。人物描写は娘の母親(望月優子)にウェイトが置かれている。
昭和当時の水郷地帯の生活が、実によく活写されていて見ごたえがある。記録映画といって良いくらいに取材されていて、製作に望んだスタッフの心意気が今に伝わる。欲いえば、霞ヶ浦のスケール感あるシーンが欲しかった。
この映画、地方の貧困問題に焦点を当てた製作と言われて来たようだ。そういう視点で、つまり昭和32年当時の視点で観れば、問題提議&少し大衆映画な、ちょい重い映画と感じるかもしれない。でも今の視点で観直すと、水郷地帯というワイルドな自然環境と、昭和な人々の力ある、負けない生活をうまく映画にしていると見える。いい映画だ。

出演:江原真二郎|中村雅子|望月優子|中原ひとみ|木村功




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