映画「少年と砂漠のカフェ」 監督:アボルファズル・ジャリリ

メイン731c17d1ee468e566195c7  アフガニスタン西部のイラン国境付近。父はタリバンとの戦いで戦場に行ったきり、母は被弾して死亡、残ったのは姉とキャインという名の弟、14歳。生活のために彼は、鉄条網の国境を越えてイランに越境してきた。

  そこはイランのデルバランという小さな町のはずれ。見渡す限り何も無い荒野に、一筋の道路が永遠に続いている。そのロードサイドの遠く先に1点、ぽつんとカフェが見える。人工のオアシス。数本の木々と池、数台のトラックやトレーラーが一息ついている。ホテルとは言いがたいが宿舎施設もある。地元のドンであるハンじいさんと、その妻ハレーばあさんが営むカフェだ。キャイン少年はここに住み込みで働いている。遠くの井戸からの給水ポンプが壊れれば、井戸に行ってポリタンクに水を入れカフェまで幾度も運ぶ。少年は悲運にめげず真摯に働く。その姿にハンは彼を認めている。ハレーばあさんは実の孫のようにしている。
  こんな道路沿いだが、道はいろいろな出来事を運んでくる。
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労働者baran128  近くの道路工事の話がハンの元に来た。彼はアフガニスタン人をたくさん集め工事を請け負った。不法に越境しての出稼ぎの人たちだ。キャイン少年は宿泊するこの人たちに食事を配る。日ごろから時折、不法入国者取締りのために警察が巡回してくる。ハンは「このあたりじゃ不法入国者なんか見ない」と言うと、警察は「そうか」としか言えない。言わない。ところが警察がキャイン少年と出会い尋問されてショッピかれる。ハレーばあさんは怒りまくり警察になぐりこみ少年を取り返す。国境付近のアウンが表現されている。キャインは姉のために貯めた金を持って国境へ向かい、アフガン側にいる羊使いに渡して送金している。しかし国境での不法行動は危険であることに変わりは無い。

  道路工事はハンにとって裏目に出てしまった。道路が完成されるとハンのカフェ沿いの道は閉鎖された。ハンは街の鍛冶屋にクギを作らせる。このクギを道路にまいて、タイヤをパンクさせカフェに客を呼び込もうという作戦だ。しかし不運なことにパンクさせる前にハンは急死。キャインはハンじいさんの意志をついで道路にクギをまいて歩く。

  キャイン少年が主人公だが、彼のセリフは無い。彼の心情心境に、この映画は一切踏み込まない、語らない。このいさぎよさがこの映画の生命線であり、一切踏み込まないことによって、少年キャインの存在感のエッジをキリリと立たせている。キャイン役の少年は俳優ではなく、当時、実際のアフガン難民だったらしい。

車内delbaran 監督:アボルファズル・ジャリリ|イラン=日本|2001年|96分|プロデューサー:市山尚三
 英題:DELBARAN
 出演:キャイン・アリザデ(キャイン)|ラハマトラー・エブラヒミ|ホセイン・ハシェミアン|アハマド・マハダヴィ
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