映画「少年と砂漠のカフェ」 監督:アボルファズル・ジャリリ
2011年09月17日 公開

そこはイランのデルバランという小さな町のはずれ。見渡す限り何も無い荒野に、一筋の道路が永遠に続いている。そのロードサイドの遠く先に1点、ぽつんとカフェが見える。人工のオアシス。数本の木々と池、数台のトラックやトレーラーが一息ついている。ホテルとは言いがたいが宿舎施設もある。地元のドンであるハンじいさんと、その妻ハレーばあさんが営むカフェだ。キャイン少年はここに住み込みで働いている。遠くの井戸からの給水ポンプが壊れれば、井戸に行ってポリタンクに水を入れカフェまで幾度も運ぶ。少年は悲運にめげず真摯に働く。その姿にハンは彼を認めている。ハレーばあさんは実の孫のようにしている。
こんな道路沿いだが、道はいろいろな出来事を運んでくる。



道路工事はハンにとって裏目に出てしまった。道路が完成されるとハンのカフェ沿いの道は閉鎖された。ハンは街の鍛冶屋にクギを作らせる。このクギを道路にまいて、タイヤをパンクさせカフェに客を呼び込もうという作戦だ。しかし不運なことにパンクさせる前にハンは急死。キャインはハンじいさんの意志をついで道路にクギをまいて歩く。
キャイン少年が主人公だが、彼のセリフは無い。彼の心情心境に、この映画は一切踏み込まない、語らない。このいさぎよさがこの映画の生命線であり、一切踏み込まないことによって、少年キャインの存在感のエッジをキリリと立たせている。キャイン役の少年は俳優ではなく、当時、実際のアフガン難民だったらしい。

英題:DELBARAN
出演:キャイン・アリザデ(キャイン)|ラハマトラー・エブラヒミ|ホセイン・ハシェミアン|アハマド・マハダヴィ

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