映画「パレルモ・シューティング」 監督:ヴィム・ヴェンダース
2011年09月13日 公開


ヴィム・ヴェンダース監督ファン以外は、ちょっと観ちゃいけない映画です。
主人公フィンは、もともと著名な若手写真家。新進気鋭で派手。そんな彼を広告業界が放っておく訳がなく、フィンも積極的にコマーシャルな写真をどんどんこなす。そしてセレブな階段を登った。同時に、それまでのフィン自身と私生活は放置されるまま。
広告写真業界というステージで演技するフィン。誰もがうらやむ華麗さ。だがハードで不規則な仕事。何でも自由に思いのままと考え勝ちな脳内イメージは、現実を越えてますます増大して行く。写真も手段が目的化してしまい勝ち、アドビなデジタル処理の世界をまい進する。
そう、そのうち、それはいつかはやって来ると本人も感づいていた。この辺の乗りは監督らしい展開だ。
それまでのフィンと、セレブ後のフィンが、ギシギシこすれ合いはじめる。ストレスから睡眠障害になる。屋外のどこでも座ったところですぐ寝てしまう。


脳内イメージの肥大がフィンの精神を突き破り、死神幻視を招く。しかし、その死神は実はもうひとりのフィンなんだ。パレルモの風土と、フラヴィアの愛が彼を救う。そしてなによりも、死神がフィンを救い、フィンは死神を救った。
映像はデジタルでクリアな印象が残る。CGなシーンは一瞬の迫力はあるが、そこまで。ストーリーは思いのほか平凡で、かつ結末に不満が残ります。
ファン以外の人には、デニス・ホッパーやカンピーノの名をあげ、派手に語ってみても、あまり通じないな。

パレルモに行って「プラウベル マキナ67」を首からぶら下げながら路地を街歩きして、ヴィム・ヴェンダースごっこをしてみたい人、いる?

予告編
http://www.youtube.com/watch?v=hW2muXAgyfQ
監督:ヴィム・ヴェンダース|ドイツ=フランス=イタリア|2008年|108分|
原題:PALERMO SHOOTING
出演:カンピーノ(Finn)|ジョヴァンナ・メッツォジョルノ(Flavia)|デニス・ホッパー(Frank)|ミラ・ジョヴォヴィッチ(Milla Jovovich)|ルー・リード(Lou Reed)|



「プラウベル マキナ67」
カメラのサイズ:高さ11.5cm、幅16.2cm、 奥行5.65cm、 重量:1250g
フィルム:120フィルム使用,67判(フィルムの縦横サイズが6cm×7cm)
「マキナ」は通好みのカメラ。もともとドイツ・フランクフルトのカメラメーカーだった。このメーカー創設者の息子が高齢となり跡継ぎが無く、カメラ販売店「カメラのドイ」の土居氏が事業を継続した。土居氏はカメラコレクターでもあった。

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