映画「ゼロシティ」 監督:カレン・シャフナザーロフ
2011年11月21日 公開

今となっては、いささか陳腐な表現フォーマットになった不条理劇スタイルの映画。
奇妙・奇怪・不調和・不気味さが好みなら、どうぞ。エロはない。
映画「トゥルーマン・ショー」とか「ビッグ・フィッシュ」とか、現実の市街が劇場化される都市とかに関心ある人も、どうぞ。

彼の工場が外注から調達している空調機の後部パネルの設計変更を、発注先工場に依頼したが、来いと言われ、彼はこの工場に列車に乗って出張してきた。工場長に会うべく、秘書室に入ると、秘書嬢はこのありさまだ!
彼は工場長と面会し、改めて依頼の趣旨を言うが工場長は理解しない。工場長は言う「何のために仕様を変えるのか? 15年製造し続けてるのだよ」 モスクワでは独立採算制度の導入を考え始めたが、ここはソ連の旧態依然たる世界。ヴァラーキン技師は、この意識のギャップに驚く。我々はビジネスの受発注の概念すらない事に驚く。
で、まあ、彼も我々も一致して驚くのは、秘書嬢がなぜ全裸なのか。ご本人は、ちゃんと衣服を着ているようにごく自然に理性ある振舞い。ヴァラーキン技師がためらいながら工場長にこの事を言うと、「あ、そう」だけ。


そののち、用意された車で森は脱出できたが、再度警察に出向いたり、ロックンロールパーティでスピーチをさせられたり、ヴァラーキン技師の泊まるホテル一室に市長ら多数がが突然訪問してきたり。つまりモスクワに帰るな、ここに留まれということ。幼い男の子からは「あなたは この町から逃れられない、そのまま2015年に死ぬことになっている」という予言めいたことを聞かされる始末。 自殺したコックは、ヴァラーキン技師の写真を持っていた。だからケーキができたわけ。つまりヴァラーキンがモスクワにいた時点から、この奇妙な計画は始まっていたのだ。ご指名だった。

隙をみてヴァラーキン技師は逃亡する。深く暗い森を駆け抜け、小舟を見つけた。
混乱の時代の映画製作だから、言うに言えぬ苦労があったのだろう。でも今、ふつうの観客として観ると、まったくの外れ作品でないだけに、余計欲求不満になる。話の筋がぱらけちゃってぼんやり。やるなら徹底的にやってよ。ブラック?コメディ?それとも? そこが残念。この映画と同じ年に製作のソ連映画、パーヴェル・ルンギン監督の「タクシー・ブルース」1990年のほうが出来はいい。

脚本:カレン・シャフナザーロフ、アレクサンドル・ボロジャンスキー|撮影:ニコライ・ネモリャーエフ
原題:Zero City город ЗЕРО
出演:レオニード・フィラトフ (技師ヴァラーキン)|オレーグ・バシラシヴィリ (チュグノフ)|ウラジーミル・メニショフ (検事)|ピュートル・シチェルバコフ (市長)|アルメン・ジーガルハニアン|イフゲニー・イフスティグニエフ|アレクセイ・ザルコフ|イリーナ・アルザハニク



蝋人形展示シーン2点 プレスリーが流れるパーティ

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