映画「ゼロシティ」 監督:カレン・シャフナザーロフ

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 今となっては、いささか陳腐な表現フォーマットになった不条理劇スタイルの映画。
 奇妙・奇怪・不調和・不気味さが好みなら、どうぞ。エロはない。
 映画「トゥルーマン・ショー」とか「ビッグ・フィッシュ」とか、現実の市街が劇場化される都市とかに関心ある人も、どうぞ。

秘書秘書66d50  モスクワの機械工場の技師ヴァラーキンが、不幸な主人公。マジメで、頭もいいし、まわりに気を使い順応性も高い男。
  彼の工場が外注から調達している空調機の後部パネルの設計変更を、発注先工場に依頼したが、来いと言われ、彼はこの工場に列車に乗って出張してきた。工場長に会うべく、秘書室に入ると、秘書嬢はこのありさまだ! 
  彼は工場長と面会し、改めて依頼の趣旨を言うが工場長は理解しない。工場長は言う「何のために仕様を変えるのか? 15年製造し続けてるのだよ」 モスクワでは独立採算制度の導入を考え始めたが、ここはソ連の旧態依然たる世界。ヴァラーキン技師は、この意識のギャップに驚く。我々はビジネスの受発注の概念すらない事に驚く。
  で、まあ、彼も我々も一致して驚くのは、秘書嬢がなぜ全裸なのか。ご本人は、ちゃんと衣服を着ているようにごく自然に理性ある振舞い。ヴァラーキン技師がためらいながら工場長にこの事を言うと、「あ、そう」だけ。

バンド0-4  ホテルに戻った。一泊して明日はモスクワに帰る。気持ちを静めて、ホテルのレストランへ行く。閉店時間直前で客は彼一人。注文の時にデザートを勧められたが断った。食事を終えた頃、大きなデザートが来る。食えと脅迫まがい。ケーキ皿の覆いを取ると、また驚愕。なんとヴァラーキン技師の頭部の形をしたケーキだ。コックが真剣に作った、食わないとコックは確実に自殺すると言う。その時、突然レストランのステージが開きバンド演奏が始まった。そして銃声が一発! コックだった。

技師90-1  ヴァラーキン技師は参考人として警察で身柄を拘束されるが、自由の身となった。すかさずタクシーで駅まで向かうが、森で降ろされてしまう。暗闇の中、向こうに明りが見えた。そこは郷土資料館で蝋人形展示施設であった。館主に駅へ行く手配をしてもらい、それまでの時間、館主同伴で蝋人形展示を見ることになる。古代から革命そして現代へと時系列に、郷土にとっては重要なシーン、政治的なものはもちろん、敵国アメリカのロックンロール・パーティ解禁記念とか含め、たくさんのシーン説明がなされる。ヴァラーキン技師も説明内容の理解に困惑する。彼が困惑する理由がわからない。ソ連の中での新/旧の世界観の差? 単に奇妙なのか? ここんところ、蝋人形解説がこの映画一番の見せ場だと思うが、我々はヴァラーキン技師以上に、正直わかんない。ロシアの人が観たら笑うシーンもあるのだろう。

  そののち、用意された車で森は脱出できたが、再度警察に出向いたり、ロックンロールパーティでスピーチをさせられたり、ヴァラーキン技師の泊まるホテル一室に市長ら多数がが突然訪問してきたり。つまりモスクワに帰るな、ここに留まれということ。幼い男の子からは「あなたは この町から逃れられない、そのまま2015年に死ぬことになっている」という予言めいたことを聞かされる始末。  自殺したコックは、ヴァラーキン技師の写真を持っていた。だからケーキができたわけ。つまりヴァラーキンがモスクワにいた時点から、この奇妙な計画は始まっていたのだ。ご指名だった。
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  隙をみてヴァラーキン技師は逃亡する。深く暗い森を駆け抜け、小舟を見つけた。


  混乱の時代の映画製作だから、言うに言えぬ苦労があったのだろう。でも今、ふつうの観客として観ると、まったくの外れ作品でないだけに、余計欲求不満になる。話の筋がぱらけちゃってぼんやり。やるなら徹底的にやってよ。ブラック?コメディ?それとも? そこが残念。この映画と同じ年に製作のソ連映画、パーヴェル・ルンギン監督の「タクシー・ブルース」1990年のほうが出来はいい。


列車934監督:カレン・シャフナザーロフ|ソ連|1990年|101分||
脚本:カレン・シャフナザーロフ、アレクサンドル・ボロジャンスキー|撮影:ニコライ・ネモリャーエフ
原題:Zero City город ЗЕРО
出演:レオニード・フィラトフ (技師ヴァラーキン)|オレーグ・バシラシヴィリ (チュグノフ)|ウラジーミル・メニショフ (検事)|ピュートル・シチェルバコフ (市長)|アルメン・ジーガルハニアン|イフゲニー・イフスティグニエフ|アレクセイ・ザルコフ|イリーナ・アルザハニク


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