映画「ブック・オブ・デイズ」と「中世ヨーロッパの都市の生活」と。
2011年11月17日 公開

映画 ブック・オブ・デイズ
監督:メレディス・モンク
14世紀らしい。ここはフランスの中部にある中世の城壁都市。
キリスト教徒はみな白装束。この都市ではユダヤ教徒は少数派であり、キリスト教徒に管理監督されている。 服装は黒装束で左肩には丸印をつける事、農業や交易の職には就けない、金細工、皮なめし、ガラス工など、また金貸し・両替商を営むこと、などが書かれた掲示が街の壁に貼られている。この棲み分けルールによって両教徒は同じ都市で平和に住んでいた。

エヴァというユダヤの少女がいた。彼女は不思議なものが見えるようになる。不思議なものとは、それは現代の様子。銀色の飛行機、自動車、無数の人々とニューヨーク、カメラで写真を撮る人の様子など。幻覚なんだろう、他の人間には何も見えない。彼女はこの不安を祖父に相談する。祖父は祖父なりに聖書に沿うような説明するが、途中で説明し切れなくなると同時に、そんな孫を心配し苦悩する。
娘は自分の理解者を求め狂女と出会い、当時誰も持たない卓越した思想を学び、自己の不安から解放される。
シーンは現代にスイッチ。彼女が住んだ石造りの家は今もあって廃墟になっていたが、壁には、ある絵が残っていた。娘エヴァが自宅の壁に自身が見た不思議なものを描いていたのだった。
この映画を初めて観た時は、「抽象的で意味がまったく分からない、あの手の映画」だった。セリフもめっぽう少ない。
しかし「中世ヨーロッパの都市の生活」という本を最近読んで、改めてこの映画を観たら、素直な表現でいい映画だと気がついた次第。舞台演劇的手法だが嫌味にならない。映像がきれいだ。衣装デザインもいい。音楽は監督の本業なので悪いわけがない。

アメリカの作曲家、パフォーマー、演出家、ヴォーカリスト、映画製作者、振付家。音楽、演劇、舞踏にわたりトータルな作品を世に送り出しCDも多い。
監督:メレディス・モンク|アメリカ|1988年|74分|
原題:Book of Days
脚本:Tone Blevins|撮影:ジェリー・パンツァー|音楽:メレディス・モンク|美術:Yoshio Yabara|
出演:Toby Newman (少女)|Pablo Vela (祖父)|Lanny Harrison (母)|Daniel Ira Sverdlik (父)|Andrea Goodman (叔母)|Joshua Sippen (叔父)|Karen Levitas (年長の娘)|Hannah Pearl Walcott (年少の娘)|Gail Turner (農婦)|Mieke Van Hoek (商人)|Robert Een (兵士)|Lucas Hoving (医者)|Gerd Wameling (旅の語り部)|Greger Hansen (旅の修道士)|Wayne Hankin (旅芸人)|Ruth Fuglistaller (伝染病患者)|Rob McBrien (商人(死のダンサー))|メレディス・モンク (狂女)


ユダヤ人街の家々 エヴァは祖父に、幻覚を説明している (カメラ撮影を説明しているようだ)

J.ギース、F.ギース共著 (講談社学術文庫)

1250年、フランスの中世都市トロワ(Troyes)が舞台。
著者は学者じゃないから、おもしろく物語れる。
1250年、人々が行き来する街並、映画を観ているように、その様子が読者の目の前に現れる。人の家の中にも入っていく。教会の鐘も聞こえる。リアルな記述が続く。もちろん推測からイメージを膨らませた部分もある。
下の地図の右上、点線で囲まれている所はローマ時代の城壁。この中に、この街のシンボル、サン・ピエール大聖堂があり、かつユダヤ人地区がある。外国人居留地のような存在。シナゴーグもある。
街には教会や修道院がたくさん建っている。あちこちから鐘が聞こえただろう。
ぜひ読んでみて。

トロワは人口1万人。
パリが5万人、ロンドンは2.5万人、トロワは北ヨーロッパで上位5番目ほど、豊かだった都市。もっとも南ヨーロッパの方が豊か。ヴェネチアは10万人だった。俯瞰してみると当時南北(つまり西)ヨーロッパの推定人口は6000万人くらい。現在のフランス地区は2200万人。
【目次】
プロローグ
第一章 トロワ 1250年
第二章 ある裕福な市民の家にて
第三章 主婦の生活
第四章 出産そして子供
第五章 結婚そして葬儀
第六章 職人たち
第七章 豪商たち
第八章 医師たち
第九章 教会
第十章 大聖堂
第十一章 学校そして生徒たち
第十二章 本そして作家たち
第十三章 中世演劇の誕生
第十四章 災厄
第十五章 市政
第十六章 シャンパーニュ大市
エピローグ 1250年以降
【 一夜一話の歩き方 】
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