ドキュメンタリー映画「石炭、金」 監督:ワン・ビン
2011年11月07日 公開

山西省の鉱山。広大な荒地の先に、石炭の採掘現場がある。なんと露天掘りだ。大型トラックが、中にはさらにトレーラーを連結したトラックが、石炭の荷積みの順番を待っている。パワーシャベル数台が引っ切り無しにトラックに石炭を積んでいる。トラックとパワーシャベル以外、見渡す限り、視界には何も無い平地。
ここから東に進む石炭ロードは天津の港に向かっている。この道をひたすら往復するドライバー達が主人公。
みな、自家営業のようだ。天津まで運んで1回いくらの世界。1回ごとに精算されて札束を手にする。途中、警察のチェック、高速道路代金、もちろん重油代、事故などリスクやコストがあるはず。そこで天津までの途中に、積荷の石炭全部を買い取る業者がロードサイドにいる。なるほど!
映画はこのロードサイドの業者の描写にも時間を割いている。売値買値のたたき合いだ。罵り合いだ。石が混入している、積荷の石炭がかた過ぎて質が悪い等々。
一抱えもある石炭の塊が、重くゴツゴツぶつかり合うように、人間同士が毎回ぶつかり合う。一片の安らぎもない。石炭採掘の底が尽きるまで続くのか。いやいや、中国の発展を支える石炭。繁栄の証だ。
日本の話。1950年代ごろ、国道1号線を日本通運のトラックが、昼夜無く引っ切り無しに東京/大阪を往復していた。戦後、やっと物流が復興してきた証だった。ドライバー達はその速さや正確さを誇っていた。
狭い国道。当時、大型トラックがすれ違うのがやっと位の道幅。夜は街灯も無い。舗装が無いところもあった。そんな中でのエピソードをひとつ。
深夜、日本通運のトラックがすれ違う時、お互い出きるだけスピードを落とさないで、自分のバックミラーと相手のバックミラーを、わずかに接触させる。一瞬、火花が散る。そんな緊張感と、ドライバーテクニックを誇りにしていたらしい。眠気を覚まし、居眠り運転を避ける意味もあったんだろう。
ワン・ビン監督のほかの作品は、驚くほどの長時間。体力気力を落としている現在、この作品くらいがちょうど良かった。上映は、オーディトリウム渋谷。初めて入った。新設の会場なのでオーディオ装置がいいのでしょう、いい音出してました。1階上のユーロスペースの音はひどい。そろそろ何とかして欲しいものだ。

監督:ワン・ビン|中国|2009年|53分|
原題:煤炭,銭|英題:COAL MONEY|
← 山西省の位置
地震や炭鉱事故のニュースを聞くこともある。



映画映像じゃないが、石炭はこんな感じ。 荷積みはこんな感じ。 トラックはこんな感じだ。
ワン・ビン監督の映画
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