映画「生きてるうちが花なのよ 死んだらそれまでよ党宣言」 監督:森崎東
2011年12月13日 公開


福井県の美浜原発を取り上げた映画。
原発内で危険な作業を専門にする人々を原発ジプシーと言っている。定期検査がある全国各地の原発を渡り歩いている。
更衣室で、原発に入る前の準備風景が映画に出てくる。下着の袖口やズボン下(下着)のスソを太い粘着テープで何重にも巻いている、放射能汚染水の浸入を防ぐ手段なのか? 発電所の係員は作業者全員の首に放射能探知機をかける。宇宙服のような防御服を着て、暗い狭い作業場所に入っていく。息でヘルメットの前面が曇って周りがはっきり見えない。
ここ美浜の街はこうしたジプシーがたくさん集まってきていて夜の店は繁昌している。席に着くと彼らは一様に空のビールビンに口を当ててビンを吹く。ボーと音が鳴る。その鳴り方、音の大きさで自身の健康状態を図る。放射能で弱った身体だと、その鳴りが弱いらしい。
街にサイレンが鳴った。発電所の人が店を回って「水が出た、手伝って欲しい」ジプシーは酒を中断して原発に向かう。


アイコは墓の前で祝言をあげるべく、バーバラとひもの野呂に手伝ってもらう。その時突如、墓の中から安次が防御服の姿で現れる。防御服を脱いだ安次は地面に正座し、仲人の野呂に丁寧な挨拶をする。祝い酒の一升瓶を酌み交わす。いい祝言があげられた。幸せそうなふたりは、どこかへ去っていった。
ちょうど、その頃、安次の遺体紛失を知った発電所は地元やくざを使って、事の次第をもみ消そうとアイコを殺害していた。
バーバラと腐れ縁で、一匹狼やくざの宮里(原田芳雄)は、美浜のやくざとも通じていた。今度はバーバラと宮里がやくざにそして警察からも狙われる。宮里は「事件のすべてをバラす」と公言する。
以上のストーリーを軸に、ほかにいくつものエピソードを絡めた脚本だが、いろんなエピソードを絡めたことで、話が散らかってしまい原発問題を薄めている。意図的か?矛先が見当違いであることは確かだ。でも見ておくべき映画。
監督:森崎東|1985年|キノシタ映画|配給:日本アート・シアター・ギルド|
脚本:近藤昭二・大原清秀・森崎東|撮影:浜田毅|
出演:倍賞美津子 (ストリッパーのバーバラ)|原田芳雄 (宮里)|平田満 (元教師→バーバラのひも・野呂)
上原由恵 (アイコ)|泉谷しげる (アイコの彼氏、原発ジプシーの安次)|
片石隆弘 (バーバラの弟・正)|竹本幸恵 (タマ枝)|久野真平 (和男)|小林トシ江 (バーバラの母・タケ子)|梅宮辰夫 (鎧刑事)|左とん平 (大内)|小林稔侍 (戸張)|殿山泰司 (船長)|乱孝寿 (ギン子)


原発内の更衣室 向こうに原発を見ながらバーバラとアイコ
バーバラのひも・野呂(平田満)は原発作業員になって稼ぐ

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