「ベルリン・天使の詩」  監督:ヴィム・ヴェンダース

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  一日を振り返ると、口から出た言葉より、心でつぶやいた言葉の方がずっと多い。

地図ベルリンt  かつて、ドイツは東西に分かれていた。
  共産圏、東ドイツの国土の、真っただ中に位置した都市ベルリン。そのベルリンの西半分が、飛び地の西ドイツ領だった。だから戦後も都市復興が遅れていた。住む人間にとって、つぶやくことは多かった。

  その昔、ひとりの天使が三人の賢者の夢の中でささやいたという。ここベルリンの天使たちは人々のつぶやきは聞けるが、人とコミュニケーションがとれない霊たちである。人にはその姿は見えない気配さえ感じない。建物の高みから街を眺め、人々の雑踏の中に分け入り、人々のつぶやきに耳を傾ける、そんな毎日、永遠の命。人々にとって何の役にも立たない、いなくてもいいフワフワした存在。そして経済的に自由、つまり働かなくても生活できる。ヴィム・ベンダース監督が好む人物設定だ。
  そんな無用な天使だが、幼い子供達にはその姿が見える。そして「元」天使には、気配が感じられる。もうひとつ、天使が人間に恋すると、その人間は天使を感じられる。(好きなら)
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  天使のひとりが人間の女性に恋した。
  天使が恋をすると、その天使は死に、人間になる。そして人間となった男は女を探す。やっと出会え、女はひと目で天使であった男を理解できた。


 
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  ドイツ統一後、ベルリンに行った。ブランデンブルク門を抜け、旧東ドイツ側を歩いてみた。石造りの巨大な建物が並んでいるせいか、空気が重い。人影はまばらに観光客が見えるだけ。ふと見上げると、建物の屋上に神々の石像が並んでいる。そんな建物をいくつか見た。ところどころ石像が落下していて、建物の脇にまとめて置いてあった。あの石像の影に混じって天使がいたかもしれない。


ふたりvlcnap監督:ヴィム・ヴェンダース|西ドイツ・フランス|1987年|127分|
原題:Der Himmel über Berlin
脚本:ヴィム・ヴェンダース、ペーター・ハントケ|撮影:アンリ・アルカン
出演:ブルーノ・ガンツ (Damiel)|ソルヴェイグ・ドマルタン (Marion)|オットー・ザンダー (Cassiel)|クルト・ボウワ (Homer)|ピーター・フォーク (Peter Falk)|ラジョス・コヴァーチ (Marion's Trainer)

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やまなか
Posted byやまなか

Comments 3

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kayo  

日本語だっても分かってるよ、天使だもん!

2012/01/07 (Sat) 05:53

山中  

あの時は、何つぶやいていたんだろうか? でも日本語だよ。 そうだ、ベルリンの空港で自分のカバンだけが出てこなかった一人旅。その時ロビーは自分ひとりになって、しばらくしてベルトコンベアーがついに止まった。シーンとした、ただただ大きな空間が広がっていた。
ヒースローで自分はベルリン行きに乗ったが、カバンはほかの空港へ行っっていた。

2012/01/07 (Sat) 00:36

kayo  

天使はいたよ、きっと。やまなかさんの肩に手を置いて、やまなかさんのつぶやきを聞いてたはず。

2012/01/05 (Thu) 23:44

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