映画「バタフライ・キス」 監督:マイケル・ウィンターボトム
2012年01月13日 公開


北イングランドのランカシャー。
ユーニス(上)は、ヒッチハイクし、あるいは道路沿いを歩きながら、ロードサイドの店を訪れる。彼女は決まって店員にたずねる。「ジュディスという女はいないか?」口ずさみながら、「こういうメロディのCDを置いていないか?」と。
店員の対応が気に食わなかったり、店にほかの客がいない時、ユーニスに殺意が湧きおこる。何人目なんだろうか。冷徹で無慈悲で手馴れている殺人。

ミリアム。 近所で一人住まい。
ガソリンスタンドの売店でパートをしている。
ミリアムが働くこの店にユーニスがやって来た。いつものように、ジュディスを知らないか、CDはないか。ミリアムはていねいに対応する。そして、どういう訳か、店員という立場を越えてユーニスを気づかい始めるミリアム。
ユーニスは長時間、他人と接していることが苦痛だ。一歩引くユーニスに、ミリアムは言う。「私は難聴で補聴器をしてるが、不思議な事に、あんたと話すときは補聴器が無くても聞こえる」「今夜、泊まるところが無いなら、うちに泊まれば?」
そんなことで、ミリアムは自分のベッドでユーニスと初体験をする。拒まなかったミリアム。

田舎で育った独身女性ミリアム。穏やかで優しい。取り立てて特徴が無いこの女性が、ユーニスに似た狂気の種を心に宿していたのだ。ユーニスに出会った事でミリアムの心に狂気が芽吹き一気に茂り始める。ユーニスの狂気は鋭く尖っているが、ミリアムのそれは大きく抱擁性さえを持つ。それはもう、ユーニスの狂気を越えたかにみえ始めた。

ふたりは知っていた、あるいは出合って数日の間に気付き始めたのだ。それは「ユーニスは自身を止められない。自分を殺して自分を止めてくれる人間か悪魔を探していた。そしてそれがミリアムだと。」 だからふたりに愛が芽生えたのだ。
いい映画です!

脚本:フランク・コトレル・ボイス|撮影:シーマス・マクガーヴィ|
出演:アマンダ・プラマー(ユーニス)|サスキア・リーヴス(ミリアム)|リッキー・トムリンソン(ロバート)|キャシー・ジェイミソン(ウェンディ)|デス・マッカリア(エリック)|
マイケル・ウィンターボトム監督の映画
【 一夜一話の歩き方 】
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