映画「祝祭」 監督:イム・グォンテク
2012年02月17日 公開


韓国の葬式の話ですが、苦味、酸味、そして旨味があって、その上 何やらとても にぎやかな映画です。

ソウルに住む著名作家イ・ジュンソプの母親が亡くなり、チャンフン(長興)にある実家で葬儀を行うことになります。親族や地元の名士や近隣の人々、そしてソウルからはるばるやって来る出版社の編集者や評論家の人々で、実家はごった返しています。庭のあちこちにテントを張って何とか収まった。
ここに集まった人々は、ジュンソプという40歳過ぎの男が40数年生きてきた証であり、彼の生い立ちから現在の地位までを、グッと濃縮したドラマとして観客は見ることになります。様々な出自の人々が、うろうろします。人間臭いエネルギッシュさが前面に展開されます。またドロドロした面も時にはコミカルに描かれています。

日が沈むと実家は闇の中に浮かび出る。テントの灯りの下で人々は、料理に酒と、充分な通夜ふるまいをうけています。酔っ払えば話声も大きくなり口も滑る。そのうち始まったのが死者を送る唄。儀式にのっとり死者を送る唄のリードをとるおじさん、皆は輪になって回りながら踊りながら歌い合わせます。
韓国は儒教の国。葬儀はたいてい儒教式で行われます。ジュンソプの実家は地方なので伝統的葬儀なのでしょう。そういう伝統/民俗的視点から記録映画としてみることもできます。
映画に出てくるシーンから伝統的なシーンを拾うと、まず葬式の装束が目を引きます。みながそろって行う儀式も注目です。ウソ泣きで「アイゴー、アイゴー…」と大声で泣く儀式は、葬儀の期間中の朝夕行われます。屋根に登って行う儀式、喪輿で出棺から埋葬するまでの儀式などなど結構忠実に映像化されているらしいです。
さらには、ジュンソプが自身の幼い頃、この実家で祖母との経験を基にした創作童話のシーンが、何箇所かに挿入されています。とても盛りだくさんな内容の映画です。観客にも通夜ふるまいを受けている気分になります。
皆が笑っている集合写真は、メイキング色が強いですがほほえましい。

監督:イム・グォンテク|韓国|1996年|107分|英題:Festival|祝祭(チュッチェ)|
原作:イ・チョンジュン|脚本:ユク・サンヒョ|脚本:ユク・サンヒョ
出演:アン・ソンギ(イ・ジュンソプ ソウルに住む著名作家)|オ・ジョンヘ(イ・ヨンスン ジュンソプの姪)|ハン・ウンジン ジュンソプの母|チョン・ギョンスン(チャン・ヘリム 業界雑誌記者)|ほか多数

都会で葬式となると、こんなことが出来ないのは、どこの国も同じ。韓国では病院の地下に斎場があって通夜が現代風に行われるらしい。そんな斎場でも花札がおいてあるそうです。この映画で花札のシーンがありますが、あれは至極当然な事のようです。
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