映画「さすらい」  監督:ヴィム・ヴェンダース

上



サングラス








男は馬鹿だから。男はひと皮むけば幼いから。
だから、あてどもなく思い続ける、手すさびのオモチャが手元にある。
そんなオモチャに気を取られ続けて、先が見えない。そして未決のまま、確信的に遊びに興じて、その先を見ない‥。
出会い ロベルトは、妻との関係のシガラミから逃れたい一心で、前後を忘れフォルクスワーゲン・ビートルのアクセルを踏み込んでいた。前方不注意。次の瞬間、車ごと川に派手にダイブ!
 それを見ていたブルーノはニヤニヤ。わが身を振り返れば、大笑いできた柄じゃない。
 まさに冷や水浴びて、ロベルトは放心状態、思考停止。オール・クリア。逃れたいシガラミ全~部、川に流してしまったらしい。 そして、「乗れ、乗りたい」もなく、ふたりの男はブルーノの大型トラックの車上の人となった。出会ってすぐに、互いに同じ臭いがすることを、2人は直感する。そして、これから始まる長いドライブ。西ドイツの田舎町を転々と巡る間に、2人に友情が生まれ、仲たがいもし、また様々な男女と出会う旅になる。

その直後 過去を抱えた男の、それぞれが歩んできた道が、この川岸で偶然に交差したんだ。話は、ロベルトとブルーノが並んで歩み、そして別れで映画は終わる。テーマは、自分で封印した、それぞれの過去に対峙しに行く2人の冒険の旅。過去と出会うその時、片方の男は立会人の役目を果たす。  

過去 ブルーノは映写機のリペアマンだ。修繕会社と契約していて、各地の映画館を気ままに巡回している。乗っているトラックは自前。この車がブルーノの家であり、世間を離れて生きていくトリデだ。のちにロベルトに言われる。 「お前は、トラックという安全地帯にいる。」と。
 ブルーノは父を見たことがない。その昔、彼は母を残して家を出た。その後、互いに音信不通で時は過ぎて行った。今回、ロベルトに言われて、家出後初めてその地に行ってみた。既に廃屋となっている。幼い頃に缶に詰めた宝物を見つけ出す。(右写真)
 
 ロベルトは父に会いに行く。彼の実家は、ローカル新聞の小さな発行所兼印刷所を営んでいる。父はワンマンであった。(右写真) 母にも子にも封建的に厳しかった。幼いロベルトは、いつも父の言う事を、無理難題をも、黙って聞く子供に育だった。これがロベルトのトラウマであり精神的なしこりとなっていた。彼の妻とのシガラミも、彼の精神的構造が起因しているとロベルトは思っている。今回、8年ぶりに父と会い、ロベルトは恨みつらみを吐き出した。
 その夜、徹夜で「女性を正当に評価するには」という記事を書き、1人で印刷作業をして新聞に仕立てて、父に読ませるために1部だけ製作した。やはり、思いを素直に口にできない男であった。ちなみに彼は、小児科と言語学の中間領域を学問分野にして子供の精神構造を研究する学者であった。

踏切 別れ










ああだこうだの旅は、またたく間に、別れを迎える。
それでも、しばらくの間、線路と道路が並走する所で、映画は最後の演出をする。
ローカル線のレールバスに乗ったロベルト。車窓からブルーノのトラックが見える。
一方、トラックを運転するブルーノ。目の前の踏切を通過する、ロベルトが乗ったレールバス。
この2人、踏切で一瞬、交差し、ふたたびそれぞれの道を行くのであった。
そしてその後・・・
一仕事終えたブルーノはひとりトラックの運転席にもどり、やおら訪問先のスケジュール表を破り始めた。彼の中で、自身の映写機が停止する。「これまでの生き方」の上映を終えようとしているようだ。
ブルーノ、何か決心が出来たのかい?

ラスト






原題:IM LAUF DER ZEIT  :KING OF THE ROAD  
   :AU FIL DU TEMPS
監督・脚本:ヴィム・ヴェンダース|ドイツ|1975年|176分|
撮影:ロビー・ミューラー、マルチン・シェイファー|
出演:リュディガー・フォーグラー(ブルーノ・ヴィンター)|ハンス・ツィッシュラー(ローベルト・ランダー)|リザ・クロイツァー(パウリーネ)|ルドルフ・シュントラー(ローベルトの父)|マルクアルト・ボーム(妻を失った男)|ディーター・トライヤーパウル)|フランツィスカ・シュテンマー(映画館主)|ペーター・カイザー(映写技師)|ミヒャエル・ヴィーデマン(先生)|

西ドイツの牧歌的な風景のなか、2人を乗せてトラックは、どこまでも行く。
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言葉にならないブルーノの叫び。 東ドイツとの国境付近で。


ヴィム・ヴェンダース監督の作品をまとめました。
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