映画「ヤンヤン 夏の想い出」 監督:エドワード・ヤン
2012年03月13日 公開
素晴らしい映画だと思う。
2000年当時の台北、誰にも当てはまる普通の生活風景が活写されている。そして人生の縮図、山あり谷あり、その時々の知恵のチップスが、映画の中にちりばめられています。

姓がジェイなので会社ではN.J.と呼ばれるヤンヤンの父さん。この父さんを軸に映画は進む。
写真左端から、妻ミンミンと ばあちゃん(妻の母)、長女ティンティン(中学生)、長男ヤンヤン(小学生)、そして父さんの5人家族は、高級マンションに住んでいる。
N.J.は、幼なじみとIT系の会社を立ち上げて副社長だ、従業員は30名位か。運営資金は、ある資産家が投資している。
今、会社は赤字に転落し資金難。N.J.は自分の資産を穴埋めに使った。役員会で決めたことは、今後はコンテンツに方向転換し、日本のゲームプランナー大田(イッセー尾形)と提携する。これに賛同した資産家は新たに資金を出してくれた。
さて、妻・ミンミンの弟・アディの私生活、実はこれが混乱の大もとなんだ。
N.J.が住む同じマンションに、アディの彼女ユンユンが住んでいて、アディと同棲。この関係は長い。だからN.J.一家とは、おじさん/おばさんの親戚付き合いだ。ユンユンは個人投資家として小金を持っている。それに引き換えアディは下手な個人投資で損した。ユンユンとN.J.から借金しているが返せない。
うーん、そんな中、アディは若いシャオイェンと浮気をしていた。そしてまさかの妊娠。アディは周囲の驚きをかき分け強引に、出来ちゃった結婚を決行する。映画の冒頭はこの結婚式で始まる。
ばあちゃんは、息子アディの嫁はユンユンだと思っていた。式が終わり披露宴の準備を待つうちに、ばあちゃんは家に帰りたいと言い出した。体調が優れないらしい。今朝ティンティンに「急に歳をとった気がする」と言った。ティンティンは付き添って帰宅し、また式場に戻ってくる。
ばあちゃんは、家にあったごみ袋をマンションの収集所に捨てに行った、その時、脳溢血で倒れてしまう。通りがかった人が通報し救急車で病院に担ぎ込まれた。病院からその連絡が披露宴会場に届き、一同病院へ。
捨てに行ったごみ袋は、結婚式に出かける朝に、ティンティンがベランダに置き忘れたものだった。しっかり者のティンティンがなぜ?置き忘れたか。それは、ベランダから隣に引っ越してきたばかりの隣人が見え、気をとられ、つい忘れてしまった・・・。
結婚式のその日に引っ越してきた隣人は、母娘のふたり。母親はキャリアで行動的な感じで、娘・リーリーはチェロ演奏家を目指している。まもなくリーリーとティンティンは親しくなった。リーリーに彼氏がいる。ごみ袋を忘れた時、ティンティンは道を歩く、このふたりをベランダから見下ろしていた。
母親も彼氏がいて、ある日大けんか大泣き、隣にもよく聞こえた。翌朝、目を腫らしてサングラスをした母親とエレベータ前で会った。後ろ向いてエレベータを待っている。ジロジロ見るんじゃないと父さんはヤンヤンにささやく。
ヤンヤンはクラスでも小柄。凝り性で行動派、考えて、とにかくやってみる、その内容は他人にはなかなか理解しにくい。クラスの担任からは、相当に目をつけられている要注意人物・悪がき。とにかく学校でも帰ってからも精力的に遊んでいる。今はカメラで、撮ろうとしているものは・・・。ある女の子は、そんなヤンヤンが大好き。父さんは自分に似ていると言ってる。
ばあちゃんは意識が戻らないまま病院から帰宅した。在宅療養として、話しかけてと医師から言われる。ミンミンもアディも、父さんもティンティンもベッドサイドで話す。独り言のように。このシーンは、それぞれの人物を描写する素敵な場面。ティンティンはごみ袋のことを言う。おばあちゃんに告白しないと一生引き摺ると。
そして新たな問題が発覚する。今度は妻・ミンミンだ。「毎日話すことが変わらない私は、毎日何をやっているんだろうか。妻として家事をしオフィスで事務をやり・・・」泣きながら父さんに告白する。父さんが言えたことは、「明日から看護師に新聞を読んでもらおう」 その後ミンミンは山にこもった。以前から入信していた道教系新興派の導師のもとへ。 ばあちゃんはまだ意識が戻らず、母もいない台所を父さんがカバーする。
その父さんN.J.は式場のロビーで20数年会ってない初恋の人シェリーと遭遇する。彼女は、キャリアを重ねたらしくシカゴ在住、日本、台湾を行き来している。そんな彼女から、もう一度人生をやり直そうと言われる。そののちシェリーとN.J.は東京で熱海で逢瀬がかなう。
ここに至るは、日本のゲームプランナー大田(イッセー尾形)との提携話が発端。次回のミーティングは東京になりN.J.は単身で出張。偶然にシェリーも東京出張。ふたりで宿泊するホテルを決めた。しばしお互い、歳を忘れるいい時間を過ごした。
一方、大田と契約交渉が進むうちに、大田とN.J.は仕事を越えて気が合った。音楽の事、人生の事、なんでもない事。
アディ夫妻に赤ちゃんが生まれた。出産祝いパーティが催される。そこへユンユンが現れ、アディの妻は激怒。パーティは散々な結果で終わり、ひとり新居に帰ったアディは、バスルームで一酸化中毒で倒れる。後から帰宅した新妻が発見。一命を取り留めた。新婚夫婦の危機は去ったようだ。
ティンティンはその後、リーリーと別れた彼氏と付き合い始めた。このことが発端でのちにリーリーに運命が訪れる。
ミンミンはその後、山から帰ってきた。おばあちゃんの葬式。また、N.J.一家、アディ夫妻、そして関係者が集まるのであった。
人生、長い人も短い人も、その身の上に毎日いろんな事が起きている。明日も何かが起きる。そして何とかやり過ごす。
家族一人ひとりの話、その親類・友人・隣人の話、ヤンヤンの父さんのビジネス話、父さんの昔の恋人との再会などなどエピソード満載ですが、しっかりした脚本のもと、継ぎはぎ感をまったく感じません。滑らかに次々に人々の人生の節目を垣間見ることになります。人物描写が優れていて、それぞれが映画の中でいきいきと振舞います。いい映画だな。

監督:エドワード・ヤン|台湾、日本|2000年|173分|
英題:Yi Yi: A One and a Two|
脚本:エドワード・ヤン|撮影:ヤン・ウェイハン|
出演:ウー・ニェンチェン (N.J.)|エイレン・チン (Min-Min)|イッセー尾形 (Ota)|ケリー・リー (Ting-Ting)|ジョナサン・チャン (Yang-Yang)


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2000年当時の台北、誰にも当てはまる普通の生活風景が活写されている。そして人生の縮図、山あり谷あり、その時々の知恵のチップスが、映画の中にちりばめられています。

姓がジェイなので会社ではN.J.と呼ばれるヤンヤンの父さん。この父さんを軸に映画は進む。
写真左端から、妻ミンミンと ばあちゃん(妻の母)、長女ティンティン(中学生)、長男ヤンヤン(小学生)、そして父さんの5人家族は、高級マンションに住んでいる。

今、会社は赤字に転落し資金難。N.J.は自分の資産を穴埋めに使った。役員会で決めたことは、今後はコンテンツに方向転換し、日本のゲームプランナー大田(イッセー尾形)と提携する。これに賛同した資産家は新たに資金を出してくれた。

N.J.が住む同じマンションに、アディの彼女ユンユンが住んでいて、アディと同棲。この関係は長い。だからN.J.一家とは、おじさん/おばさんの親戚付き合いだ。ユンユンは個人投資家として小金を持っている。それに引き換えアディは下手な個人投資で損した。ユンユンとN.J.から借金しているが返せない。
うーん、そんな中、アディは若いシャオイェンと浮気をしていた。そしてまさかの妊娠。アディは周囲の驚きをかき分け強引に、出来ちゃった結婚を決行する。映画の冒頭はこの結婚式で始まる。

ばあちゃんは、家にあったごみ袋をマンションの収集所に捨てに行った、その時、脳溢血で倒れてしまう。通りがかった人が通報し救急車で病院に担ぎ込まれた。病院からその連絡が披露宴会場に届き、一同病院へ。
捨てに行ったごみ袋は、結婚式に出かける朝に、ティンティンがベランダに置き忘れたものだった。しっかり者のティンティンがなぜ?置き忘れたか。それは、ベランダから隣に引っ越してきたばかりの隣人が見え、気をとられ、つい忘れてしまった・・・。



ばあちゃんは意識が戻らないまま病院から帰宅した。在宅療養として、話しかけてと医師から言われる。ミンミンもアディも、父さんもティンティンもベッドサイドで話す。独り言のように。このシーンは、それぞれの人物を描写する素敵な場面。ティンティンはごみ袋のことを言う。おばあちゃんに告白しないと一生引き摺ると。



一方、大田と契約交渉が進むうちに、大田とN.J.は仕事を越えて気が合った。音楽の事、人生の事、なんでもない事。
アディ夫妻に赤ちゃんが生まれた。出産祝いパーティが催される。そこへユンユンが現れ、アディの妻は激怒。パーティは散々な結果で終わり、ひとり新居に帰ったアディは、バスルームで一酸化中毒で倒れる。後から帰宅した新妻が発見。一命を取り留めた。新婚夫婦の危機は去ったようだ。
ティンティンはその後、リーリーと別れた彼氏と付き合い始めた。このことが発端でのちにリーリーに運命が訪れる。
ミンミンはその後、山から帰ってきた。おばあちゃんの葬式。また、N.J.一家、アディ夫妻、そして関係者が集まるのであった。
人生、長い人も短い人も、その身の上に毎日いろんな事が起きている。明日も何かが起きる。そして何とかやり過ごす。
家族一人ひとりの話、その親類・友人・隣人の話、ヤンヤンの父さんのビジネス話、父さんの昔の恋人との再会などなどエピソード満載ですが、しっかりした脚本のもと、継ぎはぎ感をまったく感じません。滑らかに次々に人々の人生の節目を垣間見ることになります。人物描写が優れていて、それぞれが映画の中でいきいきと振舞います。いい映画だな。

監督:エドワード・ヤン|台湾、日本|2000年|173分|
英題:Yi Yi: A One and a Two|
脚本:エドワード・ヤン|撮影:ヤン・ウェイハン|
出演:ウー・ニェンチェン (N.J.)|エイレン・チン (Min-Min)|イッセー尾形 (Ota)|ケリー・リー (Ting-Ting)|ジョナサン・チャン (Yang-Yang)




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